偉人になりたきゃクソ人間になれっ「スティーブ・ジョブズ」2013年/映画

 僕が初めて自分の携帯を手に入れたのがiPhoneだった。

 それ以来ずっとiPhone一筋である。


 何故にそれまでガラケーさえ持たずにいたのか?その疑問には答え難い。いやそうでもないか。

 ようは頻繁に連絡を取るような人間関係が存在しなかったからだ。

 ぶっちゃけ友達すくねー!である。



 仕事で必要な時は会社の電話を使っていたし、年に何度か会う程度の友人付き合いしかしていないから、携帯電話の無い生活でまったく困らなかったのだが、徐々にネットの利便性が高まるにつれて”持ち歩ける”ネット環境が欲しくて仕方なくなって来たところにiPhone3Gが日本上陸。直ぐさま飛びついた。

 これだけの代物だから、きっと品薄になっているに違いないと考え、半ばお持ち帰りは無理だろうと店舗に脚を運んだものの、あっさりゲットで肩透かしでありました。まだまだスマホという物が世の中に浸透していない時代だったんですよね。たった6年間でこれだけスマホが広まるとは....



 元々僕はApple好きというわけではありませんでした。iPodよりもバイオレットカラーのHDDウォークマンを真っ先に買った男です。

 ただ、日本でも大変話題になったスケルトンなiMacは欲しかったですね。まだ就職前くらいの時期でしたし、就職してお金が出来ても良く知らないメーカーよりも、これまたデザインが好きなソニーのVAIOをチョイスしてました。コンポもMDウォークマンもソニーだったし、結構ソニーっ子でしたねあの頃。

 やはりiPhoneにべったりな生活になったから、より親和性のあるMacを使うように自然となって、新製品は欠かさずチェックするくらいにはAppleを好きになりました。

 けして、スティーブ・ジョブズという人有りきでAppleを選んだのでは無いのです。




 そんな僕がジョブズのここが凄い!ここが気に入らない!と、喚いたところで、誰の心にも届きはしないでしょうが、ジョブズの自伝映画である本作は本当にクソ映画でした。

 どれくらいクソかというと、5000ドルのギャランティを貰ったくせに、山分けと約束した仲間に350ドルしか払わなかったり、医師の鑑定結果で実の娘であると分かっても頑なに子供を認知しようとしなかったり、菜食主義だから風呂に入らなくても大丈夫だと豪語するくらいにクソな映画なんですζ*'ヮ')ζ


 以前Facebookの創業者を元にした「ソーシャル・ネットワーク」という、ジョブズと同じように友情が富や名声で壊れてゆく胸糞悪い映画がありましたが、それとは比べものにならないくらい一本の映画として不完全でした。

 カメラワークも普通だし、ジョブズがLSDでトリップしていたり、インドに悟りを開きに行くシーンのバックで流れる曲は場違いで雰囲気を全然感じない。ソーシャル・ネットワークの監督デヴィッド・フィンチャーがいかに非凡であるかがよく分かった。


 だいたいiPodの発表会から始まり、その後は過去に戻って大学でうだうだやってるところから〜Appleに復帰して次々と冷淡に役員を切り捨てるところまでを足早にしか描いておらず、その後の一番知りたい病魔との戦いが一切無いのがつまらない。

 自分だけでは何も出来ないくせに、恩着せがましく周囲の才能を引き出すのだけはピカイチだったジョブズ。彼の調子付いた若い頃と、病魔が巣くい鋼鉄の意志に穴が開きそうな晩年と、その二つの時代こそ彼の人生の激しさを象徴する対比になりえたと思うのです。



 何もかも中途半端だったせいで、映画として盛り上げよう感が出てる演出は大袈裟で鼻に付くし、ジョブズの名言にも気持ちが高ぶるより、二束三文の自己啓発映像を観てる気分にもなりました。もっと何処を撮りたいのか焦点を絞って欲しかったです。これなら”ヤマザキマリ”さんのコミック版の方がよほど面白かった。しっかりとジョブズと言う人物の本質を捉えているし、ヤマザキマリさんなりのプラスαも創作物としてYES。

 ずばりジョブズとは灯台のような人でした。遠くをゆく船にとってこれほど確かな灯りは無いというのに、足元は一切照らすことが出来ないのですから。間近から見上げる灯台は、ただただ無駄にそびえ立つ巨塔にしか見えないことでしょう。

 納得行くまでこだわり続け、実際に素晴らしい物を形にして来たジョブズですから、多くの人が彼に憧れるのも分かります。

 でも、人類皆総じてジョブズになってしまったら、誰も実質作業に従事しなくなって罵倒し合うだけの世の中になることでしょうなぁ.....




「君自身が君の最大の敵だ」

 他者を追い込むことで、己を追い込み奮い立たせているジョブズが言われたこの一言が一番響いた。

 ベストを尽くしていただけなのに、こんなこと言われたらもう首を括るしか無いよね....



 真面目に作った映画がクソだと面白くもなんともないが、ジョブズのように一時代を作ったクソ野郎はやはり面白い。

 彼が”また”居なくなったせいで、随分と野暮ったくて金金五月蝿い会社にAppleはなった気がします。

 新しい構想を小出しにしてユーザーをヤキモキさせるようなことは絶対ジョブズならしなかったでしょうな。




 死してなおAppleを縛り付けるジョブズ。

 彼の支配から脱却するのはいつになることやら.....

 

この記事へのコメント