この狂気は娯楽にならない....「ゴーン・ガール」デヴィッド・フィンチャー(監督)

 結婚


 それは地獄への扉を開く合言葉だと言われて久しい。


 本当にそうなのかどうか、未婚の僕の経験ではなんとも言えないが、親や兄弟の辿った夫婦生活を長年見て来た結果言えるのは、地獄よりはマシだが、結婚しても良いことなんて増えないのは確かだということ。逆に肩の荷が増えたり、脛に傷が増えるだけとも言えるだろう。


 これだけ少子化が叫ばれるようになった日本でも、いまだ結婚する人はいる。1人の生活が経済的に不安?人肌恋しいだけなのか?罪深い恋愛創作物に憧れ、煽られ、恋愛しなきゃ!結婚しなきゃ!と、無駄に焦っているだけに僕からは見える。子供向けヒーローと恋愛物の素敵なカップルは、世の中を混沌に導く戦犯なのでは無いかとさえ思う。




 何故結婚しなければならないのか?


 結婚したらお互いの気持が永遠に保たれるとでも勘違いしているのか?美味しそうな物が他の誰かに食べられてしまわないように、法的拘束力を持つ唾を付けておきたいだけか?


 フィンチャー監督の「ゴーン・ガール」を観ていたら、否が応でも男女の絆の在り方に悩まずにいられない.....






 5年目の結婚記念日を迎える二人。だけど旦那の方がなんだか憂鬱そう。昼間から妹とやりくりするバーで一杯引っ掛けている彼の口から出る言葉は、夫婦仲が冷えきっていることを物語っていた。


 そんな夫が、近所からの連絡で猫が勝手に家から出ていることを知り帰宅すると、家の中ではなにやら争った後があり、居たはずの妻も消えていて彼は警察を呼ぶ。


 捜査が進めば進むほど自分の妻殺しの証拠が固まってゆく夫。彼は居なくなった妻が残した結婚記念日恒例の宝探しを続け、何故妻が居なくなり、こんな事態になったのかと奔走するのだが......





 あちこちで本作をミステリーだと書いているサイトを見かけましたが、まったくミステリーでは無くスリラーです。控えめなミスリードは序盤ありますが、妻の失踪の顛末も早いうちに見えて来るし、いっそネタバレしてしまっても問題無いくらいです。


 ネタバレせずにハッキリ言えることは、行き過ぎたフェミニズムと、大概の男に当てはまるだらしなさが辛く苦しい映画だと言うこと。男は2時間29分の苦行に堪えるつもりで観に行かねばならない。そして、もしもこの映画を心から爽快な作品だったと感じる女性が身近にいたら、早いうちに別れを告げた方が良いだろう.....






 悪趣味なほど辛辣で生々しい男女の結婚墓場に鎮座し、黙々と墓標に名を刻んでいるデヴィッド・フィンチャーの悟った背中が見えた気がした。


 そんな監督は勿論凄いわけだが、監督の構想を実行してみせたスタッフや役者も凄い。妻を演じた”ロザムンド・パイク”は、なにかしらの賞を獲るだろうし、”ベン・アフレック”は相変わらず見た目だけのクズ男がドハマりだった。原作者である”ギリアン・フリン”による脚本も良いし、聴き続けたら静かに心が侵されそうな音楽の煽りも地味に素晴らしい。



 しかし、重ね重ね言いますが面白い映画ではありません。少しは苦笑出来る程度の息抜きシーンはありますが、悪趣味で自虐的な美学に支配されたい人でも胃が痛くなるシーンの連続です。


 スタッフロールの最後、劇場に響く鼓動の意味を考え出すと、逃れようの無い恐怖に心が包まれることでしょう.....





 男女を破滅させるのは、女のIdentityか?


 はたまた男のShamelessか?.....







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