思い出さない方が幸せなこともある「トランス」/ダニー・ボイル(監督)/2013年/英国/感想

 幻想と現実が入り交じる作品というと、中年のアニメファンなら「うる星やつら ビューティフルドリーマー」を思い浮かべるだろうし、数年前に無くなった”今敏”監督の気が狂いそうになる演出が生々しく蘇ってなんとも言えない気分になるかもしれない。

 ハリウッドの映画なら、比較的記憶に新しい「インセプション」も大いに惑わされる作品でしたよね。CGに嘘くささがあまり無いので、実写でもここまで幻惑的な映像を作ることが出来るようになったのかと思い知らされたものです。




 本作は高価な絵画の競売人をしている主人公がギャンブルの借金に困って、絵画強盗の片棒を担ぐところから始まるんですが、調子に乗って余計なことをしたせいで仲間の強盗に殴られ一部分の記憶を失ってしまいます。 

 しかし主人公が強盗に渡す前に絵をちょろまかしていたことが分かり、拷問までしてなんとか思い出させようと強盗達は考えるわけですが、肝心なところだけ記憶無いため催眠療法を試すこととなります。



 この主人公は正直阿呆な奴なので、可哀想とか全然思わないわけなんですけど、無理矢理記憶を呼び戻されそうになって猜疑心がむくむくと成長してゆく主人公の変貌の仕方がなかなか面白かったです。

 途中から、どうやら主人公はこいつじゃなさそうだと感じ始めるのも不思議な感覚で、今まで悪党でしかなかった強盗の親玉がだんだんめちゃ良い奴に見えて来て、最終的には『やっぱり女は我が侭だ』という結論に着地した頃には、完全に主役が入れ替わっていました。

 映画の全貌は序盤でぼんやりと見えて来るので、そんなに衝撃的な作品でも無いですが、被害者だと思った人間が加害者に変貌するまでの過程が良く出来ていて怖さは少しあります。出来れば言葉での説明部分をもっと省いて映像で感じさせてくれた方が夢か幻か戸惑い観賞後の心地良さが増したかもしれません。

 終わってみれば結構生々しい愛憎劇でしたし.....




 催眠という要素で現実と幻想の境目を怪しくしてゆく映像演出なので、インセプションのヒットを受けて作られた映画だと思っていたのですが、どうやらかなり昔に脚本は書かれていたそうな。現代の撮影技法やCGのおかげで実現の目処が立ったと言うことなのでしょうか?

 とにかく傑作までは行かないけれど、固定概念を崩そうとする試みが面白い映画だったかもしれませんね (= ワ =*)



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