いっしょにたべるごはんはおいしい。「甘々と稲妻 1巻」/雨隠ギド/講談社/感想

 家族のドライな関係が透けて見えて来るような凄惨な事件が起きたばかりだったので、この本は凄く良かった....

つむぎちゃんが可愛くて可愛くて仕方なかったw



 奥さんを亡くしたばかりの”犬塚”は、まだまだ幼い一人娘"つむぎ"の世話に日々奮闘している高校教師。

 掃除したり洗濯したり、ちょっぴり愛娘に手伝ってもらったりしてお父さんは頑張っているのだが、どうしても食事周りが上手くいかない。だから冷凍物やコンビニの弁当など、作っている人の温もりが伝わらない食べ物ばかりを娘も自分もついつい食べてしまう。



 そんな生活も限界だと娘の様子を見て感じた彼は、泣きながら2人分の花見用手作り弁当を1人でたいらげていた少女が紹介してくれた彼女のお母さんがやっていると言う食べ物屋さんに無理矢理押し掛けるのだが、お店を切り盛りする肝心のお母さんがおらず、まったくの素人である少女が意地になってお米を炊き始める。

 先行きが不安だと思いつつ、おとうさんと一緒って意味で御飯食べるの久し振りねと口にする娘にドキリとさせられながら、知識ばかりが先行している少女の料理風景を見ているうちに亡くしてしまった妻を思い出してしまう彼だったが、炊きあがったただの白米をはち切れんばかりの笑みで口にする娘の一言で救われる。


「たべるとこみてて!!」

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 母親が忙しく留守がちな少女は、この親子にこれからも私と一緒にごはんを作って食べませんか?と声を掛けて来ます。始めは教え子とこんなに近い付き合いは良く無いと当然教師であるお父さんは困惑するわけなんですが、娘の喜ぶ顔が見たくて色んな料理に彼等は挑戦してゆくことになって行きます。

 刃物は持てないが母から教わった知識や味見に自信がある少女と、下手なりに一生懸命なお父さん。そして、そんな彼等に笑顔を呼び込む娘の天真爛漫が本当に良いです。「リューシカ・リューシカ」や「よつばと!」のような、大人が忘れがちな大事なことを子供が気付かせてくれる漫画にドキリとする年代に自分も差し掛かっているのだと痛感しますね。少しづつ先生のことを異性として意識し始める少女の存在も大きかったです。

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 父親は離婚で居なくなり、仕事が忙しい母親と過ごす時間がほとんど無くて寂しい日々を送っているという少女と、奥さんを亡くて困っている親娘と、利害関係がたまたま一致しただけではあるけれど、彼等の欲しているものは、とてもシンプルに人間に必要な物を教えてくれていると思いました。

 作ってくれた人の顔を近くで見ながら食べ、食べている人の嬉しそうな顔を作った人が見れると言うのは、原稿用紙何枚もの言葉で取り繕った想いより、ストレートに気持ちを伝えてくれて、大事な絆を育ててくれるんじゃないかと思うのです。




 色んなサインを出していたにも関わらず、一緒に過ごす時間を惜しんで最後には匙を投げ放置した、あの凄惨な事件を起こしてしまった女の子の親が、少しでもこの作品のお父さんくらい子供と良い時間を共有していれば、他所様の家庭を巻き込むことも無かったかもしれません。



 どんなに文化形態が変わろうとも、無関心では豊かな心を育むことは出来ず、人間性はネットでお手軽にDLしてインストールとは行きません。それと同時に、こんな美しい関係を完全に現実に当てはめるのも無茶な話です。

 でも、だからこそこうだったら良いなと思わずにいられないんですけどね......






 案外ちゃんと調理手順を描いているため、グルメ漫画という一面もある本作。心は満腹、胃袋は空腹に満たされること請け合いです(´┓`*)

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