三本目の脚をぶら下げた美しき純真「人魚の王子さま」/和深ゆあな/徳間書店/ゼノンコミックス/2014年/感想

昔から生き物を助けると「恩返し」という、眼に見えないルールが適用される。

にかかっていたを助けると美女に変身して命懸けで機織りをしてくれるし、苛められっ子なネズミをきまぐれで見逃してやると、あとで自分がにかかったところを助けてくれる。路地裏でぼっこぼこにされてたを助けると、ぼったくりBAR”竜宮"に連れ込まれて夢みたいな時間を過ごせたりもする。


ここから導き出されるのは、「お前助けてやったのに、に何も返さないのか?」ではなく、「こいつ助けたらにどんながあるだろう?」でもなく、「無欲で誰かや何かを助けると、思いも寄らない幸運が待ち受けているかもしれないから善行に勤しみなさい」ということで、眼の前にニンジンを吊るし馬をコントロールするような馬鹿な真似を、子供にも施そうという大人のいやらしい思惑が垣間見える。



んなことは実はどーでもいいのだけど、”和深ゆあな”さんの新刊は、そんな無欲とも強欲とも言えない理由で助けた生き物に振り回されることになる、冴えない主人公の特殊な恋愛事情が面白い作品だった。

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勤めていた会社が潰れ、再就職もままならず、なけなしの金で買った宝くじも何処かへ飛んでいってしまった男が、何故か海でもなく湖でもなく公園の池で人魚に遭遇。これは一攫千金のチャンスとばかりに意気が上がる主人公だったが、傷だらけになっている人魚を思わず助けてしまう。

「人間になってがしたいんだ」と口にする美しい人魚だったが、次にあった時は更に酷い有様で、助けてくれたお礼だと言いながら、五円玉の山を残して主人公の前で力尽きて消える....


何をやってもどーせ駄目だと、半ば諦めムードな人生を送る自分とは正反対だった人魚の願いを叶えさせてやりたかったと、本気で主人公が思ったその瞬間、お前のつまらない人生1年分でその人魚を生き返らせてやろうと言う神様が現れる。

普通ならそんな妖しい人信じちゃいけない気がするけれど、ちょっぴり下心があった主人公はうっかり神様に俺のつまらない人生が役に立つならそれで言いと願い、人魚の命をまた助けてしまいます。


ところが、まさかの粗悪品を売りつける通販会社級のポカを神様やらかします。

何故か美女だった人魚をの人間として再生したのです........
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まあそこからはドタバタ話に突入ですよ。人間界のことをちゃんと知らない人魚に振り回され眼を離せないし、しかも美女だった時を知っているから、男の姿でも主人公ドキドキしちゃって今直ぐにでも道を踏み外しそうになってしまうw お酒を飲むと時々美女な人魚の姿に戻るから、尚更主人公可哀想ですww

そんな倒錯した要素だけではなく、人魚の純真さから色んなことを主人公が感じとってゆく展開も面白い。人魚が友達になった幼い女の子の恋心に自分の経験を重ねたり、才能が無くても楽しそうに絵を描く人魚に嫉妬したりと、突飛な恋愛だけではなく現代人が普通に抱える悩みを描いているから、自然体で主人公の心を救ってしまう人魚の行動ひとつひとつが、僕達読者にもちゃんと響いて来て、なんだかほっこりします。 小さい子供がいる家庭も同じですよね。子供の邪気の無い感じ方にハッとさせられるものです。


和深ゆあな”さんはメジャーデビューコミックである「空夢のうた」で知り、その後数冊読んだものの、作画とストーリーが自分好みとは違う方向へ向っていったので、しばらく手に取っていなかったのですが、とうとう青年誌にも進出したんですね。男性作家はあまり女性誌へ向わないけれど、女性作家は普通に男性誌に参入して来て、しかもちゃんと面白いのが凄い。

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※地上が汚染され、地下で生活をすることを余儀なくされている時代で、元殺戮兵器だったロボットがいつか空を取戻したいと旅に出るまでの物語。装丁がめちゃくちゃ良かった。


絵柄の問題はあるでしょうけど、男性作家が女性誌に参入するようなことも増えて欲しいですよね。ペンネームや絵柄を変えて描いている人はいるんでしょうけど、あえてそこは男性誌で描いているそのままの絵で女性向け漫画を描いてもらいたい。




面白いと思うんだけどなぁ〜美少女描くのが上手い男性作家が描くBLとか♡'`,、('∀`) '`,、

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