闘う60代スターの肖像「THE GREY 凍える太陽」/ジョー・カーナハン(監督)/リーアム・ニーソン(主演)/トニー・スコット&リドリー・スコット(製作)/2012年/米国/映画/感想

 4月になって暖かさを感じる日が北海道でも増えて来たなか、極寒の地で身も心も凍り付く哀れな男の映画を観ました。

 



 最愛の人と悲しい別れを迎えたばかりの主人公オットウェイは、大自然に囲まれている地下資源採掘場で、作業員を野生動物から護る仕事をしている。要するにハンターである。

 最愛の人になにもしてやれず、馬鹿騒ぎするだけの連中を護る為にただただ命を奪っている自分の生き様に絶望した彼はライフルを咥え死のうとするが、オオカミの声で我に帰る... 


生きる意味を見失ったまま、故郷に帰る採掘場の作業員達と飛行機に乗ったオットウェイ。しかしその飛行機がトラブルに見舞われ気付けば雪原に1人倒れていた。生き残った連中と協力してなんとか生き残る道を模索するが、飛行機の落下地点はオオカミの縄張りであったために次々と仲間が襲われてしまう....





 「特攻野郎Aチーム THE MOVIEで組んでいた、監督”ジョー・カーナハン”、主演リーアム・ニーソン、製作トニー&リドリー・スコットの4人が再び関わっている本作、脚本も兼ねている監督の好みもあるのでしょうけど、非常にスコット兄弟が好みそうな主人公の映画だと感じました。

 1番オオカミの習性に詳しいオットウェイは仲間達を鼓舞してなんとかオオカミの縄張りから脱出しようとするが、結局次々と仲間が餌食にされてしまうという展開を見ていると、生きる理由を失った男が生きる理由を持った連中を道連れに死に向って突き進んでいるように見えなくも無い。自己満足の為に周りを引き摺り込む人ってかなり迷惑じゃないですか?

 ただね、オットウェイは決してそんな道連れ精神の迷惑男なだけではありませんでした。死者1人1人の生きた証として身分証や家族の写真が入った財布を回収したりする感傷的な男だった。ただそれだけなのです。

 自分と違って、生きたいと心底願っていた連中が目の前で次々と命を落としてゆく様を心に焼き付けたオットウェイは、身も心もすり減らしながら最後に全力で生きる意思を持ってオオカミと戦います。哀しみに囚われ、父や彼女と過ごした大事な時間まで無駄にしそうだった1人の男が、大自然の厳しさやオオカミとの戦いで誇りある生き方を取戻し終わるのがかなり良かった。


 ただ、非常に男の陶酔話ではあるので、女性にははぁ?で済まされる可能性大ですねw

 あと返り討ちにしたオオカミを丸焼きにして虚勢を張り自分達の恐怖感を和らげようとするシーンなども、女性や動物愛護団体などに叩かれそうなくらい際どいものがありました。弱肉強食が世の理なので、決して面白半分に描かれたシーンでは無いと僕は思いますがね。


 一つどうしても残念で仕方無かったのが、オオカミのボスがモロにCGで、しかも表情が豊か過ぎるためにリアリティが若干損なわれてしまった点です。まさか本物を使うわけにもいかないでしょうけど、オオカミのリーダーは大事な役どころだったので、もう少し気を使って欲しかったかな?と。



 リーアム・ニーソンやスコット兄弟が関わっているのにイマイチ日本では盛り上がらなかった理由が観終わった今なら少し分かる気がします。ホラーやパニック映画として観るならそれなりに見れるけれど、基本は主人公オットウェイの心の葛藤を描いた映画なので非常に暗くて気が滅入るんです。回想シーンと現実が切り替わる瞬間の演出が面白いのと、60歳でこんな激しい映画に出たリーアムが最後の最後で報われる感じで終わるのがせめてもの救いなのかもしれない.....


 主人公が父親の残した詩「もう一度闘って、最強の敵を倒せたら、その日に死んで悔いはない。その日に死んで悔いはない」を胸に精一杯生き抜こうとする姿は、男という生き物のトコトン馬鹿で愚かで自己満な本質を表しているなと、何度目か分らない再確認をしました。

 そして、そんな馬鹿な男共が僕は大好きだということも.....





 公式HP(英語) http://www.thegreythemovie.com





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