親の遺した夢の続きを子が紡ぐ難しさ「ラクソーとニムの家ねずみ(原題:Racso and the Rats of Nimh)」/ジェイン・レズリー・コンリー(Jane Leslie Conly)作/越智道雄(訳/1986年/児童文学/感想

 とある研究機関により人間と同等か、それ以上の知性を身に付けてしまった家ねずみ達が活躍するお話「フリスビーおばさんとニムの家ねずみ」の続編をサクッと読んでみました。

時に児童書籍も良いね。



 前作で理想の生き方を追い求め慣れ親しんだ近代文明を捨てて、自分達で一から文化を作り出す生活を選び取ったニムの家ねずみ達でしたが、その理想的な土地に人間の手が入り、ダムを作る計画が進行中であることを彼等は知って、今度は逃げずに戦うことを決断します。

 馴染みのねずみや小動物がまたも活躍する内容なので、前作が好きなら是非にとオススメしたい作品ですが、前作の作者”ロバート・C・オブライエン”さんの遺稿を元に娘さんが書いた本なので、正直一冊の本としてはまとまりに欠けます。あちこちチグハグな部分はあるし、蛇足に感じる点も多々ありました。

 ただでさえお話を一冊にまとめる作業と言うのは難しいことなのに、親子ととはいえ他者の原稿を元に作品を仕上げると言うのは本当に難しいことなんだなと、去年読んだ”伊藤計劃”さんの原稿を”円城 塔”さんが引き継いで完成させた「屍者の帝国」を読んだ時みたいに感じてしまいました。

 なるべく父親のテイストを模倣しようとしている節があるものの、男性から女性に代わったことで、どんどん違うものになってゆき、冒険譚以外にラブロマンスがあったり、ハリウッド的な娯楽性や、アメリカらしいミリタリー精神まで封入され、終盤はもはや別物になっていました。

 前作は社会派な一面を上手くファンタジーに転化出来ていましたが、残念ながら娘さんにそこまでの実力は無く、続編としては読めるけど一冊の児童書としては微妙でした。序盤、前作で病気がちだった”チモシー(ティモシー)”が、死んだと思われていたあの家ねずみの息子”ラクソー”とニムの家ねずみ達のコロニーに向かうまでは結構好きでしたが....



 とはいえ、終盤不覚にも安っぽいヒーロー話にちょっぴり泣いてしまったりもしましたし、ラクソーと言う魅力的なキャラが良く立った作品ではありました。

 更に「R-T、マーガレットとニムの家ねずみ(「R-T, Margaret, and the Rats of Nimh」)なる三作目を娘さんが書いているそうなので、ここまで来たら読みたいわけですが、残念ながら和訳本がどうにも見つからないので諦めました。

 やっぱ日本人には英語力必要だって痛感しますねぇ......_/乙(、ン、)_




 関連過去記事

  『身体の大きさは、魂の大きさに比例しない「フリスビーおばさんとニムの家ねずみ」/ロバート・C・オブライエン”Robert C. O'Brien”(作者)/越智道雄(翻訳)/1971年/児童文学/感想』

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