好敵手と書いてライバルと読めっ!『ラッシュ/プライドと友情』/ロン・ハワード(監督)/クリス・ヘムズワース/ダニエル・ブリュール/映画/感想

 誰よりも速く 誰よりも強く 誰よりも美しく

 それがF1で闘う者達の合い言葉。

 熱くなったが最後。家族や恋人も顧みず、オーナーもスポンサーもファンだって知った事ではなく、ただひたすらライバルと鎬を削り、前へ前へとペダルを踏み込む。


 僕は、そんな阿呆共が好きだった。



 F1と出会ったのは1990年頃。

 10年振りの日本グランプリが復活した87年から数年が経っていたあの頃、日本人初のフル参戦ドライバー”中嶋悟”さんや、あの”アイルトン・セナ”などの名物ドライバー人気もあって、既にF1は日本で絶大な人気を誇るモータースポーツに成長しており、まだ10歳そこらだった僕も、ミーハーな周りの影響を受けてろくにルールも知らないままF1を観るようになっていました。

 全戦見るようになった91年以降、チート気味なウィリアムズのマシンを駆る”ナイジェル・マンセル”とセナの死闘や、あくまでも第4のチームであったベネトンを常勝に導いた鉄人”シューマッハ”が歴戦の猛者達と繰広げたレースはいまだに記憶に残っています。好敵手に恵まれたドライバー達の醜くも美しい意地と意地とのぶつかり合いは最高に熱かった...

 
 しかし、いつからだろう?セナが亡くなった頃からだろうか?F1はドライバーよりもマシンがサーキットを走るようになった気がするのです。

 速いマシンに乗れば誰でも勝てる。

 初めてそう感じたのはウィリアムズのアクティブサスが完全にハマり出した92年かもしれません。どんどんコンピューターによる制御が加速し、ドライバーへの負担は減る一方になり、今ではクルージングマシンと言って過言では無いマシンになってしまったように思います。

 確かにマシン性能の向上で速くて安全な人は死なない競技へとF1は成長したけれど、コースとマシンの状況を研ぎすませた五感で感じ取り、機械や理論では到達出来ない限界を突破するドライバーなどもう居ません。計算以上の結果は出ないし、出せない。出そうとすればコース外に飛び出してハイお終い。完全にサーキット上での戦いよりサーキット外での戦いが物を言う時代になってしまったのです。

 去年も予算の底が見えないレッドブルとベッテルパッケージが圧勝。シューマッハ時代が終わって群雄割拠の時代がやって来た矢先のベッテル王国に尚更見る気失せました。

 あの胸がすくようなライバル達の戦いは何処に行ってしまったのか?....


 
 前置きが長くなりましたが、そんな古き良き時代の好敵手達に痺れたあの時代を想い出せる映画が現在上映中の『ラッシュ/プライドと友情』なんです。




 僕が産まれる少し前のF1で伝説を作った”ニキ・ラウダ”と”ジェームス・ハント”のライバル関係がド熱い内容になってまして、ニキ・ラウダ本人が素晴らしいと認めるほど複雑な2人の友情を描いています。

 マシンのセットアップもろくに出来ないが一発の速さが光るチャラいハントと、無駄に命を賭ける気はサラサラ無い用意周到男ラウダはまさに水と油。当時、年に1人や2人死ぬのが当たり前だったF1で、こんな2人がチャンピオンシップを争うことになったことが、のちの大事故へと繋がってゆき、一層2人のライバル関係に深みを与えてゆくのが本当に凄かったです。

 凄いと言えば当時のF1マシンを再現した映像と音が素晴らし過ぎました。

 劇場の大画面に蘇る当時のF1マシンの独特(伝説の6輪マシンも出てました)で艶やかな美しいフォルム。美しさ=速さF1マシンはいつの時代もそうあるべきだと、語っているようにも思えました(2014年のF1マシンを眺めつつ...)

 ダイナミックなエンジン音も劇場で再現されると痺れます。メカニカルな部分もCGで格好良く見せてくれるので、当時のF1を愛していた人ならば、僕以上に感動することでしょう。スピード感溢れるレースシーンの数々にアドレナリンも急上昇してました↑

 

 ラウダとハントの物語であるため、実際の映像を使っていたり、実際の映像を忠実に再現した映像などもあって、ドキュメンタリー要素もあるように思いますが、あくまでも娯楽映画として楽しめます。最近マイティソーで大人気の”クリス・ヘムズワース”が色男ハントを演じていますから、こんな男臭い映画でも女性が楽しめる作品になっているので、カップルで観るのもありでしょうね。

 
 この作品観るまで知りませんでしたけど、ラウダとハントの関係って、セナとプロストとの関係に似てたんですね。いつの時代も、直感で速いドライバーと、周到さで勝つドライバーとは相容れない存在なのだとつくづく思いました。

 互いに無い物を相手に見つけ、妬ましいと感じる自分と葛藤し、それでも自分が速いとハンドルを握る男達。

 その阿呆な魂は今でもくすむ事無く人々の心で光り輝いているに違い無い...



 ちなみに、僕はラウダのあのシーンで泣きました(´;ω;`)

 



 公式HP http://rush.gaga.ne.jp/

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