半翼を捥がれた天使の哀しい物語「アルモニカ・ディアボリカ」皆川博子/早川書房/2013年/小説/感想

 驚異の80代作家”皆川博子”さんの力作「聞かせていただき光栄です」の続編にあたる本作。今回も18世紀のイギリスにタイムスリップしたかのような感覚を文字で届けて下さいました。当時のイギリスを感じさせるディティールを丁寧に織り込み、実に巧みに美味しい物語へと昇華させてらっしゃるので、イギリス独特な情景や登場人物達の姿が脳裏に浮かんで来るのです。


『18世紀英国。愛弟子エドらを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、暇になった弟子のアルたちは盲目の判事の要請で犯罪防止のための新聞を作っていた。ある日、正体不明の屍体の情報を求める広告依頼が舞い込む。屍体の胸には“ベツレヘムの子よ、よみがえれ!アルモニカ・ディアボリカ”と謎の暗号が。それは、彼らを過去へと繋ぐ恐るべき事件の幕開けだった。』
※「BOOK」データベースより




 前作から5年が経ったと言う設定で、馴染みのメンツもそれぞれ大人になったはずなんですが、バートンズの連中はまだまだ子供なままだし、作品の雰囲気がまったく変わっていなかったのですんなり入っていけました。

 今回メインになるのは盲目の判事”ジョン・フィールディング”の善悪の葛藤でありましたが、天才的な音感の持ち主の硝子職人のエピソードも良かったですし、ミステリー部分もぼちぼちではありましたが、1番の見所は前作でエドと共に恩師の元を離れた”ナイジェル・ハート”の手記でした。

 自分と言う存在がどのようにして出来上がったのかを、産まれ育った精神病院での顛末と共に掛け替えの無い友人エドへ遺したナイジェル。たとえ重苦しい精神病院であっても、彼が愛し愛された人々との想い出に溢れた告白の数々には、自分がエドになったかのように胸が締め付けられました。

 犯した罪の大きさに等しい罰を自分に与えるため、”死者”として生きると皆の前から2人が消えたあの日から、何度も夢見たエドとナイジェルとの再会の日。でもまさか、こんな哀しい再会が待っているとは思いもよりませんでした。皆川さんの残酷な神ぷり半端無いです。

 まあ、そんな残酷な運命を背負う者達だからこそ僕ら読者も思い入れてしまうわけですが.....



 今回、自分の我が侭でナイジェルを追い込んでしまった事実に深く傷ついたエドですが、最後に新たな物語の舞台として相応しい場所へ彼は赴くことになるので、是非次巻はエドを中心にあの大陸で彼が自分を責め抜く重ぉ〜いエピソードを読ませていただきたいところです。まだまだ、このシリーズの登場人物には活躍の余地がありそうな気がしますし。

 ていう、活躍して欲しくて仕方無いっすw

 こう思うの絶対僕だけじゃないよね? (= ワ =*)ニコ♡

IMG_9974.jpg



 ハヤカワオンライン http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/123979.html



 関連過去記事

  『このバイタリティは何処から湧いて来るのだろう....ゴクリ『聞かせていただき光栄です』/皆川博子/2011年/早川書房/小説/感想』

この記事へのコメント