ろくでなしを葬る子守唄「苦い娘(旧題「ピリオド」)」/打海文三/中央公論新社/2005年(1997年)/小説/感想

 今回の”打海文三”作品も、いつもの”アーバン・リサーチ”シリーズなんですが、珍しくウネ子さんが出て来ませんでしたw

最近、打海文三さんのハードボイルドにどっぷりだわ。



 自分が努めている潰れ掛けの印刷所に押し掛けて来て、他の債権者に資産を押さえられる前に書類と社長家族を連れ去ったろくでなしの叔父”萩元勉”を目の前で吹き飛ばされた”永井万里子”は、母の知り合いで叔父と親友だった”真船亨”に叔父の死の真相を突き止めて欲しいと依頼。真船は萩元の足取りを追うと共に、過去と向き合う事になって行きます。


 今回の主人公”真船”は正直気難しい。

 今ままでも確かに気難しく不器用で上手に周りと、特に女性とコミュニケーションが取れない男ばかりではあったけれど、生真面目にさえ感じる真船の頑なさは、女性を束縛するような思考へと繋がっているように思えるし、最後のシーンで”アンジィ”の◯の◯を◯○◯のも、少々押し付けがましかったかもしれない。

 打海さんの書く主人公は、毎度やり過ぎなほど他人に自分の正義を押し付けるところは確かにある。文章的にも主人公の心理を細かく書かないから読者に誤解されるのも当然かもしれない。だが、打海作品、特にハードボイルドであるアーバンシリーズに関しては、同じ価値観を持った者同士だから命のやり取りを平気でしているのだと、僕は認識しています。

 主人公である真船が親友であった男を殺した相手を赦せなかったのも事実だし、逆に心底嫌いなわけでは無いから自ら手を下して不毛な悪循環から解放してやったのも事実だと思いました。人は愛ゆえに赦すことも出来るが、その逆も然りなのであります...


 
 皆一様に孤児のごとく孤独を受け入れている打海キャラ。救いようの無い男女を書かせたら天下一品で、殺された萩元や萩元を殺した男の抱えた闇を読めば読むほど自分が”ろくでなし”の1人になった気分になります。自分のように酷く凡庸な人生を送っていると、ハードボイルドの波瀾万丈な生き方は格好良過ぎて憧れてしまいますね(彼等にとっては辛いだけの事かもしれませんが....)

 あと打海さんが書くラブシーンも大好きでたまりません。今回のヒロイン長井万里子との4ページにも渡る2人の会話で構成されたラブシーンもとても綺麗なやり取りで素敵でした。某サイトのレビューで「登場人物がこぞって寝たがる主人公の魅力が良くわかりません。」と書かれている方がいましたが、それは自分がそんなろくでなしを好きになる生き方をしていないだけだと思いました。

 こんなやり取りを出来る男を誰1人好きにならないなんてこと、絶対にありえませんからゞ(*ゝω・)ノ



 最後に作中何度も話題に上がる曲"Holly Cole"の「Trust in Me」をどーぞ♪





 関連過去記事

 『”小白の栴檀草”の花言葉を君に贈ろう「兇眼」/打海文三/1996年/徳間書店/小説/感想』

http://lainblog.seesaa.net/article/381085786.html

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