むか〜しむかし、たかはたお爺さんが裏山に竹取りへ...「かぐや姫の物語」/高畑勲/ジブリ/2013年/感想

 これまで近年を除き、多くの場合”宮崎駿”さんと”高畑勲”さんが分け合うように交互に劇場長編アニメを作って来たスタジオジブリ。 その唯一の例外が「となりのトトロ」と「火垂るの墓」の二本立てでした。 よくよく考えると、あんなに国宝級のアニメ2作品が同時上映で観れるなんて贅沢の極みだったことでしょう。

 要するに、そんなまさかの再来のように(二本立てでは無いですがw)、7月から公開して未だ各地で上映中の「風立ちぬ」と、14年振りの高畑作品「かぐや姫の物語」が同年上映で映画館に揃い踏みしたことには特別なことだと言うことなんです。 しかも、その2作品の出来が非情に高いのがまた素晴らしい...


 高畑作品は、どちらかと言うと子供向けとしては重い題材が多いため、もしかすると子供達は敬遠している節があるかもしれませんが、今作は非情に微笑ましいシーンも多いので宮崎作品とはまた一味違うジブリを知るには良いかもしれない。





 かぐや姫と言えば日本最古の物語だと言われていますから、日本人なら一度は見聞きしたことがあるはずかと思います。 竹取りのお爺さんが竹林で子供を見つけ、その子を授かってから裕福になったお爺さん達は、あっという間に年頃の娘に成長した竹の子と一緒に京で暮らすことにし、美しく育った竹の子は”かぐや姫”と呼ばれ、5人の名のある方々に見初められることとなるものの、断固としてこれを拒絶。仕舞いには私は月に帰らねばならないと言い出しとんずらこいてしまうという突飛な内容のため、何度もSF寄りな創作作品が派生していますしね。

 高畑さんが創作した新たな「かぐや姫」は、そんな派生作品の中でも正統派に当たります。普通に竹取りのお爺さんが竹林で姫を見つけ、あっという間に育つ美しい姫が男共に無理難題を押し付け、結局月に帰ってしまう流れは変わりません。

 しかし、その結末にいたるまでの過程が非情に素晴らしく肉付けされており、当時の様式美と共に、かぐや姫と友人の子供達の愛らしさや、個性的な周囲の大人達の描き方なども秀逸で、躍動感を水彩画や水墨画のテイストで表現しているのが更に味わい深く夢中にさせられてしまいました。

 人によってはこの高畑さんの手法を手抜きと感じる人もいるかもしれませんが、キャラをハッキリ・クッキリ描くより手間の掛かる作業ですし、あえてかぐや姫の心情を表すためにラフなアニメーションを用いているのだと素直に僕は感じました。予告で流れていた姫が険しい顔付きで疾走するラフなシーンなどは見惚れるほどの仕事っぷりです。同じく水彩画テイストであった「ホーホケキョ となりの山田くん」での経験がようやく花開いたとも言えるのかもしれない。

 
 ただ、終盤かぐや姫が月に帰らねばならないと言い出すのが「アレ?」に思えたのが唯一の心残り。僕がかぐや姫の心情を読み切れなかったと言うことなのか、高畑さんが自然に描き切れなかったということなのか、そもそも原作の欠点だということなのか、初見では正直ピンと来なかったです。

 「姫の犯した罪と罰」「ジブリ史上最高の絶世の美女が誕生」などと、大袈裟なキャッチコピーが並んでいますが、そんな瑣末なことより、もっと素朴で純粋な少女の笑ったり、泣いたり、怒ったりの心模様が美しい映画だと感じたので、終盤の展開がどこか引っ掛かりました。もう少し姫が月の記憶を思い出してしまったと観客に伝わるシーンがあっても良かったかもしれません。 もう一度観たら「あっ!」と、気付くところがあるのやもしれませんが....



 とにかく劇場で観て良かった。高畑さんも宮崎さんと同じく、もう相当な年齢ですから、もしかするとこれが最後かもしれませんし、これだけの作品を眼に焼き付けることが出来て本当に嬉しい。

 そういえば去年亡くなってしまった地井武男さんの演技も素晴らしかったなぁ。声優の配置に余念が無いのも映画に没入出来るポジティブな要素でした。


 子供向けを捨て、無邪気なヒロインを捨てた宮崎駿氏とは反対に、従来の宮崎ヒロインのように天真爛漫な”かぐや姫”の微笑ましい姿と気丈に振る舞う憂鬱の日々を対称的に描き分けた高畑勲さん。この2人はいつまでも交わらないが、それがまた面白く、2人がお互いに嫉妬するのも理解出来る。

 毎年でも2人の個性が劇場でやり合うのを観たくなります。



 かぐや姫の物語は、そんな身勝手な想いが自然と湧き出して、僕の心を掻き乱す映画として刻まれそうです。お二人とも出来るだけ長く御壮健であられますように.....(-人-)
 



 公式HP http://www.kaguyahime-monogatari.jp/index.html

『50億円&8年をかけた『かぐや姫の物語』が人を引き付ける本当の理由』
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20131121/1053637/?ST=trnmobile





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