超絶記憶と雑誌乱立の狭間で「ハイリコ」/箸井地図(漫画)/坂本光陽(原作)/2013年/集英社/グランドジャンプ/感想

 創刊されたと思ったら、直ぐに廃刊になってしまう昨今の雑誌業界。あの「ジャンプ」の名前でさえ今では雑誌を売るための方便でしかなく、ここ2、3年で「◯◯ジャンプ」という雑誌が乱立しています。

 結局長続きしないことが分かっているから、新しい雑誌として興味を引けるうちは続け、駄目ならまた名前を変えて雑誌を出すという、流行り廃りの激しいテレビと同じような仕組みへ変わってしまったわけです。


 無論、知名度の低い漫画家にとっては、受け皿としての雑誌は多い方が良い。ただ目紛しく平積みが装いを変えてゆくのが中年の僕としては疲れると言う話。

 どうせ ”買う→溜まる→捨てる” の流れになるのだし、既に何十年と言う歳月の賜物である本の山が僕の領土を浸食しているなか新たな漫画の開拓をしてしまうと、物資の量を考えずに他国へ侵略を開始するような自殺行為でしかないですし、尚の事雑誌をチェックする必要を感じ無いのです。

 結果、コミック化されて初めてこんな雑誌出てたのか?、と知ることになるのが大半。だから”箸井地図”さんの「ハイリコ」を買って初めて”グランドジャンプ”なる雑誌の存在を知ったのも必然でした。


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 グランドジャンプは一昨年創刊した雑誌で、ヤングジャンプや月刊ジャンプで元々連載していた作品や、その昔週刊ジャンプで連載していた懐かしい漫画家さんの新作なども連載しているようで、ラインナップからは若干年齢層が高めに設定されているような印象でした。

 ハイリコは最初の1話だけ読み切りで本家グランドジャンプで掲載され、増刊号の方で正式な連載を開始したそうで、増刊号は本家より若干絵的に「萌え」を重視した色になっているようです。それでもぶっちゃけ箸井さんの可愛い絵は、もっと子供向けの雑誌が合うような気がしますね。


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 ダラダラと彼女が欲しいと嘆きつつコンビニでバイトしている主人公の前に、超が付くほど記憶力の良い女の子が現れ、細かな犯人に関わる情報を自慢の頭脳から引き出し、次から次へと街に溶込んでいるお尋ね者を捕まえてゆくと言う作品で、その愛らしく眩しい笑顔とは裏腹に、上手く周りの眼を誤魔化しているつもりな犯罪者達に、えげつないほどの事実を突きつけてゆく女の子の姿が恐ろしくもあり、誰が本当のことを言っているのか分らなかった「探偵儀式」での意外性を今作でも感じられて面白いです。

 原作・作画を分業しているせいなのか、意図的なものなのかどうか分かりませんけど、箸井さんの描くキャラは何処か二面性を感じさせ、笑顔で人を刺してもおかしく無い不安感を憶えます。子供の無邪気な残虐性が、そのまま箸井さんの絵には宿っているように感じるのです。


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 ハイリコは、あまり長い連載にはならなそうですけど、次巻への引っ張り方も上手かったので、次も大いに楽しみ。原作を担当した"坂本光陽"さんにも今後注目して行きたいです。


 次の箸井漫画は更にドロドロしたアダルト作品を読んでみたいかなと思いましたが、表層の無垢さと形容し難い不気味さが絶妙に絡み合ってこそ箸井作品なので、どちらに偏るのも駄目なのかもしれませんね。


 とにかく、これからも僕の中では、ジャンル、雑誌を問わず漫画を続けていって欲しいと素直に思える貴重な作家さんの1人なのは間違いありませんゞ(*ゝω・)ノ


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 箸井地図HP http://www.interq.or.jp/ol/chizu/

 坂本光陽Twitter https://mobile.twitter.com/kouyousakamoto9

 グランドジャンプ http://grandjump.shueisha.co.jp

 



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  『人が死なないミステリー再び....「名探偵夢水清志郎事件ノート コミック版」/はやみねかおる(原作)/箸井地図(作画)/星海社/2012年』

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