新刊発売前に間に合った!「タイタニア」/田中芳樹/徳間書店/1988年/小説/感想

 十数年振りに再読したけれど、皆さんはタイタニアを知っているだろうか?

 「銀河英雄伝説」で味を占めた徳間書店が二匹目のドジョウを狙って”田中芳樹”氏にどうしてもとお願いした結果作られたスペースオペラで、傀儡としての王を掲げ、自らは臣下として身を置きながらも、どんな勢力よりも強大な存在として銀河を支配しているタイタニア一族の栄枯盛衰をテーマにし、様々な人々が策謀を廻らしてゆくと言う作品が「タイタニア」でした。


 銀英伝と言えば緻密な歴史と骨太なSF設定とが噛み合った名作でしたから、その影響下で作られたタイタニアにもその売りが大いに反映されており、冒頭から歴史説明が長過ぎてあくびが出ちゃう女の子だもん♡とか悪ふざけを書きたくなるくらい、タイタニアがいかに宇宙で1番影響力のある存在なり得たのかがまず語られるのですが、銀英伝とは逆を行きたい意識が強過ぎたためか、説明が複雑過ぎて惹き込まれるほどの興味を憶えません。

 それに王ではなく王を便利に扱う存在で在り続けようとするタイタニア一族の繁栄と衰退にクローズアップしてしまったため、銀英伝よりスケールダウンしてしまった感じがしてなりませんでした。タイタニア一族の策謀が渦巻く展開は嫌いでは無いけれど、その辺りを楽しむなら荻野目悠樹さんとの作品「野望円舞曲」の方がタイタニアでの反省が活かされていますし、荻野目さんの味付けのおかげで読み易いです。

 銀英伝で言うところのヤン・ウェンリー的なキャラ”ファン・ヒューリック”なる人物も作中なかなか本格的な艦隊戦を出来ずにいる自分に焦れていたが、やはり策謀以上にもっと派手な艦隊戦をタイタニアに望んでいた読者も多かったことでしょう。いつまでもファンヒューリックのゲリラ作戦や政略ばかりで意表を突こうとしているので展開のテンポが悪過ぎました。


 なにかにつけてタイタニアとはそういう存在なのだとしつこく語るのも鼻につきましたし、何から何まで中途半端な印象を拭えない今作ですが、流石に3冊に渡って読んでいると、それぞれの登場人物に思い入れの一つも産まれて来るもので、まさかの第4巻発売でまた彼等に逢えると聞いたときは嬉しかったですね。これからが本番というところで終わっていますから、このままの未完じゃ読者も作家も物語の登場人物だって悔いが残ると言うもの。

 これだけ長い年月放置していたことには、田中さん自身にネガティブな理由が沢山あることでしょうけど、リスクを承知で完結を目指し動き出した氏を僕は讃えたいです。

 たとえ駄作に終わっても、「完」の一文字が書けることに意味はある。

 期待以上に不安がたっぷりですが、覚悟を決めて9月25日に4巻を手にしたいですね

 

 それにしても何故にあの頃の小説は裏表紙に作品内容より作家のドヤ顔を載せたがったのか..... 
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 田中芳樹マネージメントサイト”らいとすたっふ” http://www.wrightstaff.co.jp/
 アニメ版公式サイト http://web.archive.org/web/20080627100154/http://www.tytania.jp/

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