スラムから哀を込めて...「エリジウム」ニール・ブロムカンプ(監督・脚本)/マット・デイモン(主演)/2013年/米国/映画/感想

 Xbox向けに発売され、世界的に人気を博している「HALO」の映画化が頓挫したことにより日の目を見ることになった『第9地区』


 製作予算も観客の期待も存在しなかった今作は、新しい切り口のSF作品として大きな驚きを与えてくれました。


 冒頭唖然としてしまう「なんちゃってドキュメンタリー」で異星人襲来を語りだし、地球で隔離され差別を受けながらも生活している異星人達を管理している男が、否応無しに自らも異星人になってしまうと言う展開がなんとも皮肉で、エイリアン2でパワーローダーを観た時の沸き立つような感覚を取戻させてくれる異星人のロボットや武器のえげつない破壊力の描写や、エビ似の異星人の気色悪いディティールなどを加え語られる本物のような嘘のリアリティがとても面白く、いかに”ニール・ブロムカンプ”監督が嘘の世界に真実を巧みに内包する術を持っているのかが伝わって来る映画でした。




 それから4年。


 製作費が4倍近くに跳ね上がり、観客の期待も前作とは比較にならない大きさになった今、ニール・ブロムカンプ監督が放つ『エリジウム』に観客はどう感じたのだろうか?





 1%の裕福な人々だけが暮らしている地球の衛星上に建設されたコロニー”エリジウム”


 そこにはどんな病気も立ちどころに治してしてしまう医療装置や、身の回りのことを全て代わりにやってくれるロボットがおり、富める人々は悠々自適な生活を送っている。残された99%の人々は、過度な人口増加により汚れきったまるでスラムのような地球で暮らし、富める人々に分け与えられた仕事で食いつなぐ毎日。


 しかも高度なプログラムで運用されているロボット達はナチスもビックリなほど温情なんてものを持ち合わせずに地球の人々を管理しており、少しでも口答えするようなら容赦しない。


 主人公の”マックス”も冗談を言っただけなのに腕を折られ、保護観察の延長をされてしまう(保護監察官もロボット...)


 彼はその後、職場であるロボット製作工場でトラブルに巻き込まれ、「否応無し」に1%の人々が住まうエリジウムを目指すことになります....




 「仕方無く」と言うか別の選択肢が見つからなくて状況に流されてゆく哀れな男と言う主人公設定と、主人公が暮らすスラム化したロサンゼルスのロケーションが第9地区とほぼ同じ雰囲気で、差別される側が差別する側へ牙を剥く展開も同じように甲斐性なしの僕にはグッと来ます。


 ただ今回は予算が無駄にあるため、有名どころの役者が多く配置されてしまい、他作品(「羊たちの沈黙」のジョディ・フォスター、「プリズンブレイク」のウィリアム・フィクナーなど)でキャラ立ちしてしまっている大物の個性が世界観を邪魔したところもあり、特に子供の頃から間違い無く1%側の人である”マット・デイモン”がスラムの人間を演じるのはちょっぴり違和感があったかもしれません。第一候補であった”エミネム”の方が良かったような気がしてしまうのは、肌の色で判断してしまう悪い慣例のせいでしょうか?...


 そういった人選のため、少し哀愁の面で物足りなさを感じるものの、エクソ・スーツ(どう見ても”大◯ーグボール養成ギブス”)を身体に装着してのロボットとの戦闘シーンや、残虐性の高い武器の使用等のマニア心をくすぐる部分は十二分に盛込まれていますし、主人公を執拗に狙う悪役を第9地区でヴィカスを演じた”シャールト・コプリー ”が熱演しているのがもの凄く良いです。彼を見る為の映画だと言っても良いくらい。




 結局、同人誌で活躍したヒトがメジャーに昇格すると、予算配分の為に配役から脚本まで集客に気を配らなくてはいけなくなり、お話的には悪い意味で「普通」の物を作らなければならなくなったという典型的な例になってしまったようにも思いますが、「漢ならこんなシチュエーションで死にたい」ランキングがあれば絶対上位にランキングするようなベタな展開は嫌じゃなかったです。


 男は自己陶酔覚めない夢で御飯が3杯いけちゃう生き物なので、そういった点では今作で監督に見切りを付ける必要はまったくありませんでした。



 ただ、今回の小さな違和感が、製作会社のマネージメントの問題なのか、監督の作家性の翳りなのかが良く分らない点で、些細な不安は残ったかもしれません(´ ・ ω・`)<次回作はどうなる?...









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