2013年09月12日

僕は誰ですか?「ドグラ・マグラ(CGアニメ版)」夢野久作(原作)/奇志戒聖(監督・脚本)/2010年/感想

 本書を読むと一度は気が狂うと言われている”夢野久作”の『ドグラ・マグラ』

 あまりに突飛で難解な作品として、普段本を読まない方も名前くらいは知っているかと思います。


 僕は少しだけ読んだことがありました。”森博嗣”さんが「森博嗣のミステリィ工作室」で影響を受けた作品を100冊上げていた中にドグラ・マグラがあったのです。森先生ほどの方でも身震いせずにいられないミステリーなんてどんな作品なのかと上下巻買ってみたものの、1935年の本だけあって文体が古く読解力の低い僕には読み辛く辟易してしまい途中で投げ出してしまいました。

 しかし、その時ほんの何十ページか触れただけでも異様に張りつめた空気感が伝わって来て思わず背筋がピンとなったのだけは憶えています。

「夢か現か」と心が乱される様々な分野の作品のなかでも、好奇心を凌駕する畏怖を感じる今作は読解力と同時に勇気が必要な気がしますね...

 
 とまあそんな風に半ば逃げ出すように投げ出してしまいましたから、なんだかんだで心残りではあったので、ヘタレの僕でもついて行けるかもしれない映像化されたドグラ・マグラをレンタルしてみることにしたわけです。

 

 そもそも「ドグラ・マグラ」とはどんな話なのかを知らない方に簡単に説明すると、記憶が無い主人公が部屋に閉じ込められた状態で眼を覚ますところから始まり、自分を治療していると語る若林教授とやり取りを繰り返すうちに何が真実で今の自分は誰なのか分からなくなってゆき、救いようの無い迷路にハマり込んでゆくという話。

 人の記憶は脳内ではなく細胞一つ一つに内包されており、何世代も前の人間になる前の記憶さえも記録されているというそれらしい学説に基づき、主人公は今の自分と過去記憶に苛み悪夢のような思考を繰り返すことなるため、本来の自分という存在が酷く曖昧で脆弱に思えてしまい、読み進めると読者である僕達まで自我というものに自信が無くなってゆきます。

 今回観たCG映画はそんな原作とは少し違って、問題が起きた宇宙船へ調査へ向ったら恐ろしい真実が!的なSF作品に変換されており、その宇宙船の唯一の生き残りである男の記憶を呼び覚まそうとする過程で様々な恐ろしい真実が見えて来るといった内容になっていました。

 なんでSFにしちゃったのかと最初はポカーンとしてしまいましたが、これが観始めると意外としっくり来て良いんです。ちゃんと原作の悪夢のような記憶の連鎖が描かれていますし、無機質なCGの乾いた質感が妙にドグラマグラに合っている気がしました。

 正直CGムービー自体は一昔前のものなので褒められた出来ではありませんが、こういったアプローチを考えついただけでも価値がある作品ですね。がっつり原作を読んだ人よりも、僕のように挫折した人にこそ向いた映像化作品かもしれません(ちなみに実写化もかなり昔に行われたようでDVDも出ていますが、高値が付いていてとても買えません。VHS版は3〜4千円くらいで買えます)

もう一度誰か映像化にチャレンジして欲しいですね。"今敏"さんが御存命であれば是非とも映像化をお願いしたかったなぁ.....



 うーん。やっぱりもう一度このトンデモナイ表紙をめくってみようかしら.....ゴクリ

IMG_7936.JPG




 DVDドグラ・マグラ公式サイト http://www.toenta.co.jp/dvd/dogura/

 ドグラ・マグラ(夢野久作)-青空文庫- 
http://www.aozora.gr.jp/cards/000096/card2093.html

https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.onno.AB_dogura_magura
posted by lain at 07:20 | 北海道 ☔ | Comment(0) | アニメ 劇場版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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