劇場版のSPEC振りに”神木隆之介”が目立ってる作品を観た気がした。
まだまだ色んなところで忙しく仕事をしているようだけど、少し気弱で三枚目な役が神木くんは似合うと思うんです。成長してから可愛らしさも若干薄れて来たし、役者としては見た目より演技力が問われる年齢になって来たように思います。でもあの童顔で20歳とか詐欺だよなぁ.....
このライトノベル並に長く、しかも気軽に話し掛けて来るようなタイトル「桐島、部活やめるってよ」は、劇中一度も登場にしない男子バレー部のキャプテン”桐島”の身勝手な退部を発端に周囲の生徒達が心を乱してゆくと言う話で、鼻持ちならない友人に話を合わせていた女の子の本音や、何かに打ち込む勇気が足りない自分を誤摩化している男の子達等の本心が浮き上がって来るのがめちゃくちゃ青春してて面白い。
誰にでもあると思うんですよね、「あいつ(あの人)には敵わない」と言う事実のおかげで弱い自分を赦せてしまうのって。でも敵わないはずの相手が、実は自分と同じ弱い人間だと一旦知ってしまうと、逆恨みだと分っていても裏切られた気持ちでいっぱいになり、自分を赦すのと同じようには相手の事は赦せなかったりする。
正直序盤は、桐島桐島と五月蝿くてだるい映画(生徒達の演技が妙に大人しくてリアルな学園風景に見えるけど眠くなる...)だと感じていたのですが、桐島の部活仲間・帰宅部を決め込む桐島の親友・ブランド品を着こなすように桐島と付き合う女子高生・まったく桐島と繋がりが無いはずの映画部部長等、複数の登場人物の視点で同じ場面や同じ時間軸を繰り返し、感情の変化を見せる手法が新鮮で、尻上がりに僕のモチベーションが上がりました。それぞれの生徒の憤りにリアリティがあるので、観客ごとに感情移入してしまう登場人物が違って来たりもする事でしょう。個人的には、イケメンで運動神経抜群で、野球部に籍を置きながらも野球から逃げている”菊地”の不器用な弱さがぐっと来ました。
1番目立っていたのは神木くんが演じるうだつの上がらない映画部の部長だったけれど、その部長の映画に対する姿勢を知って泣きそうになる”菊池”役の”東出 昌大”くんは要所で等身大な演技を見せてくれたので凄く良かったです。
全体的に個々の個性を抑えた感じの作りで、リアリティのある高校生活を淡々と捉えているような映画ではありますが、終盤神木くん達映画部が反撃に出るシーンのように抽象的なシーンもあるし、本当に居るかどうか分らない”桐島”と言う渦中の男の存在も実はかなりホラーなのかもしれないとか思っちゃいました。
自分の事を棚に上げて桐島を責める連中が、ロメロ映画においての”人間”と同じで加害者なのか被害者なのか分らない気がして怖いです。桐島は人間に蹂躙されるゾンビと同じ存在なのでしょう。神木くん達映画部がゾンビ映画を撮っているのも、その辺りの皮肉が反映されているのやもしれませんね。
いや、とにかく不思議と観ちゃう青春映画でした。
公式HP http://www.kirishima-movie.com/index.html
この記事へのコメント
面白くてつい書いてしまいました。
この映画って一見わかりにくいですよね。
ていうか監督がわざとわかりにくくしてる。
勝手な解釈ですが「桐島」は高校生のはたまた今生きている我々の、理想の姿「完璧な人間」
の象徴であると思います。
「完璧な人間」なんていない。 だから桐島は出てこないし、出る意味が無い。 ファンタジーでいいわけです。
友達同士とはいえ本音をいうことができない。
本当の自分をさらけ出せば「ダサい」と言われて終わってしまう。
ただ「桐島」だけは本物なんだ。 ということなんだと思います。 「桐島」の前では偽ることなく熱くなれる。 でもリアルではそんなことはないわけです。
たぶんここでは桐島以外の人間はゾンビなんでしょう。神木君も自分の中の凶暴性を隠して生きている。 爽やか青春映画のアイロニーになっています。
誰もみんなコンプレックスや嘘を隠して生きている。そのなかで「桐島」が狂言回しとなり
最終的に「何のために生きているのか? 何が自分にとって幸せなのか?」を問いかけている
秀作だなあと思いました。
ものすごく冷めた視点で映画をとっていると思いきや
神木君が最後食ってかる所や人知れず努力している野球部のキャプテン。
そういうところが「うまいなあ」と思いました。
限りなく完璧に近い東出君でさえ
「桐島」の域には届かない。
そのへんいいですよねえ・・・・
駄文失礼しました
lain
しばらくはどんな映画なのか意味不明ですが、いつまでも桐島が現れない事で物語が勝手に踊り出す感じがして、この不思議な面白さは観た人と話したくなりますよねw
かなり自分でハードルを上げてしまった気もしますが、吉田大八さんの次回作も観てみたいものです♪