生と死の住まう森にて「アンチクライスト」ラース・フォン・トリアー(監督)/2009年/デンマーク/映画/感想

 旧国劇跡に新たな映画館が出来た事をブログに書いてたら、なんか映画を見たくなって、TSUTAYAの宅配レンタルで借りて忘れてた「アンチクライスト」をなんとなく観たのですが、多くの人に「女嫌い」が作った意図不明な作品だと言われるのも無理もない、過激で破廉恥なシーンの数々に言葉を失ってしまいました...




 夫婦がセックスをしている間に、寝ていたはずの子供が窓から落ちてしまうという衝撃的なシーンから始まるこの映画、スローでモノクロなこの導入部分だけでもかなり味のある映像作りをしており、その後の本編でも生と死を対比させるかのような脚本と映像が、そこいらの安いホラーより強烈な恐怖で胸を突き刺します。

 失う必要の無い命を失った2人は、特に心の均衡を失っている妻の治療も兼ねて、森の山小屋で生活を始めるのだが、当たり前のように繰り返されてゆく自然の残酷な摂理に囲まれ、精神科医の夫の治療も虚しく妻の精神は蝕まれてゆきます。


 どんどん不安定で攻撃的になって行く妻と、妻の狂気に精神科医としての冷静さを失っていく夫。終盤に近づいて来ると一方的に妻が夫を責め、眼を覆いたくなるような身的暴力を振るうまでになり、激しくインモラルな生々しい性的シーン共々、彼等2人だけのエデンが惨状と化してゆくのが恐ろしくて仕方ありませんでした。よくぞこんな体当たりな役を主演女優の”シャルロット・ゲンズブール”は引き受けたものだと思うし、2人のやりきった感の凄まじさと来たら、本当に半端じゃ無いです…..

 生半可な生々しさでは無いので、サスペンスやホラーを他人事のように一時的な刺激として楽しむのとはワケが違い、観賞後は誰もが胸くそ悪い後味に抵抗を感じる事でしょう。特に女性と子供には絶対オススメしません。それほどに人間の根本を曝け出した作品なのです。
 


 だが、ここまで救いようも無く生き物の生と死を強烈に表現出来るというのは素晴らしいものがありました。
 
 緊張状態にある身体の一部の動きをソフトフォーカスで撮らえた抽象的なカットや、ハイスピードカメラを使ったスロー映像で印象付けるやり方も上手く、不安感を植え付けるような音も含めてとても効果的でした。

 アンチクライストは宗教色が強く出過ぎて辟易してしまいましたが、この監督さんの技法には興味湧いたので他のも観てみたくなりました。きっとこの映画よりは温いんだろうけど(A;´Д`)



 それにしても、デンマーク製のドラマや映画って、なんでこうも変質的で生々しい人間性の溢れた作品が多いんでしょうね?......




 公式HP http://www.antichrist.jp

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