刻を越えて描く事の難しさが痛い...『グスコーブドリの伝記』/杉井ギサブロー(監督)/宮沢賢治(原作)/手塚プロダクション/2012年/映画/アニメ/感想

 若くしてこの世を去るまでに、大地と懸命に生きた自分の分身を文字に残した”宮沢賢治”

 僕の不勉強から彼の非凡さが本物なのかどうかは見極めようがないけれど、多くの人に愛されて来た事を物語るように、その名が上がらない”今日”は無い。


 
 僕のように詳しく無い人は、小説家か何かだと彼の事を分類しているかもしれない。だが彼は”詩人”であり”童話作家”で、周囲に理解されない病気がちな自身の経験がダイレクトに作品に伝わっているため、無力な人間が一方的に残酷なチカラに翻弄される作品が多く、作品世界に触れた後は虚しさばかりが残る事が多い。

 だからどんなに可愛いキャラクターで宮沢賢治作品をアニメ化しても、何処か生々しい重みがあるんですよね....


 なので必然的に扱いの難しい作品性が災いして、実写の映画も少なくアニメ映画でさえ過去に3作しか作られていない。去年公開された『グスコーブドリの伝記』でさえ15年以上ぶりのアニメ映画でした。



 80年代に『銀河鉄道の夜』を”ますむらひろし”さんが独自の介錯で漫画化したものを圧倒的な存在感で描ききった監督”杉井ギサブロー”さんが、もう一度”ますむら”さんの猫キャラで宮沢作品を手掛けた今作でしたが、残念ながら誰の想い通りにもいかなかった様子...

 賛否ある猫キャラへの置き換えもすっかり定着して可愛いいし、幻想的な空間が緻密に描かれていて素晴らしいのは素晴らしいのだけど、CG処理の甘さから背景と登場人物のマッチングが怪しかったり、ほぼ原作に沿った展開ではあっても抽象的な表現に改変しているため、非常にストーリーが伝わり難いものになっていて、観終わった後で何に焦点を当てた作品だったのかがボヤけてしまっていて勿体無い感じがしました。


 それから毎度のことながら、声優が本職ではない芸能人を起用しているせいで、全く主人公のブドリに感情移入出来ない為、ブドリの境遇に哀しむ事が全然出来ません.....

 何故にこうなったのか?......


 ラストに流れる”小田和正”さんの『生まれ来る子供たちのために』と共に、ブドリと妹のネリの姿がプレイバックされるところだけを観ていた方がよほど胸が熱くなりました。ここだけ本編とは空気が違いましたからw
 

 そんなこんなで全体的に間延びしていて”ちぐはぐ”な印象だったグスコーブドリ。

 杉井ギサブローさんが高齢である事も原因の一つかもしれませんが、改めてその時代を生きた人にしか書け無い重みが宮沢作品にはあって、年月を越えて彼の作品を蘇らせる難しさを感じさせる結末だったと思います。

 

 要所要所で目を見張るシーンはあったので、なんとも歯痒い映画でした|ω・`)
 


 公式HP http://wwws.warnerbros.co.jp/budori/


 関係過去記事

  『猫と賢治と河森と...「イーハトーブ幻想〜KENjIの春/河森正治/1996年/アニメ/感想」』

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