目には目を、歯には歯を、笑顔には笑顔を「黄色い星の子供たち」/ローズ・ボシュ(監督)/フランス/2010年/映画/感想

 終わりの見え無い思想のぶつかり合いで産まれた『怒り』を全て周囲に転嫁し、公然と命のやり取りを強要するような人々によって大勢の命が奪われてしまったアルジェリアの人質事件。

 事件を起こした犯人達にも信じる”正義”があるのだろうが、死んだ人々にも同じだけの正義があったはず。

 大いなる志に燃え、全世界を改変する為なら命さえ惜しく無いと信じる正しさと、せいぜい隣近所までしか届かない正義感しか持ち合わせていない平凡な人間の正しさを、規模の大きさだけで比較し価値を測るのは横暴の極みでしかない。たかだか人間風情が、神の代弁者として人を裁き、『聖戦』などと軽々しく口にするのも大概にして欲しいものだ...


 自分に向けられた理不尽な暴力に対し、今度は自分達が相手に『やり返す』と言う犯人達の考えは到底受け入れられるものではありません。それを是とするならば、延々と悪意はループしていつまでも断ち切る事は出来ず、今度は仕返しをした自分自身が罪を償う時が来るだけの事。どんなに屈辱的で許せない出来事も時間を重ね世代を重ね、『他者』の変革ではなく、『自身』の成長を持って糧にすべきではなかろうか?...



 一昨日観た「黄色い星の子供たち」は、今回人質にされた人々と同じく、理不尽な悪意の対象とされたユダヤ人の哀しい物語で、ナチスドイツがフランスを統治下においていた時代を舞台に、その頃大勢暮らしていたユダヤ人達が、ナチス寄りのフランス政権の手によって1万人以上ドイツ軍に引き渡され虐殺された ”ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件”を、生き残った400人ほどの証言を元に作ったフィクション映画です。



 ドイツに蹂躙される前のフランスはユダヤ人に寛容な土地柄だったらしく、フランス政府の変貌っぷりに驚きと失望の大きさは計り知れないものがあったようだ。収容所の辛い様子やナチスの残忍さを描写した作品は今まで沢山作られて来たけれど、近年ナチスドイツに侵攻されたフランスを描いた映画は作られていない為、妙に新鮮さを感じてしまいました。

 それに、今作は表題にもある「子供たち」の無邪気な笑顔や不安感などが表情豊かに撮られており、楽し気な序盤の笑顔が悲痛な表情に曇ってゆく絶望的展開が本当に観てて辛かった。特に運良く施設を脱出出来た少年の怒りと決意が綯い交ぜになった瞳が、残りの子供たちを乗せた列車を見つめるシーンは強烈に胸に残ります...

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 もしもテログループの人々にこの映画を見せる事が出来たとして、彼等は何も感じ無いのだろうか?

 被害者のつもりがいつの間にか自分達が加害者になっていた事に気付き、人の命を奪う算段をする暇があるのならば、大事な家族と笑い合う時間こそ大事にすべきだったと考え直さないのだろうか?....


 
 何不自由無く生活して来た僕達が、何を言っても無駄なのは分っています。

 でも哀しい気持ちを哀しいと言える人間でありたい。

 
 怒りでは無く笑顔が循環する世界にこそ、命を賭ける価値があるはずだと想うから...



 公式HP http://kiiroihoshi-movie.com/pc/
 

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