明日を生きるために今笑える勇気を「最後のプルチネッラ」/小島てるみ/富士見書房/2008年/小説/感想

異なる出版社から発売された『ヘルマフロディテの体温』と対を成す”小島てるみ”さんのデビュー作『最後のプルチネッラ』
物語の舞台となる土地がナポリである事や、両作共に登場する人物がいるので、世界設定としては同じであると考えて良い作品です。メインの物語の中で、違う流れの物語が語られるスタイルにも共通した作家色が出ており、これがデビュー作とは思えないほどに安定した自分の作風を持った方だと再認識しました。


今作の主人公は、ナポリを象徴する大衆喜劇のキャラクター『プルチネッラ』役を目指す2人の少年で、一方は誰もがうらやむ有名役者同士の子供。また一方は下町の大道芸人の息子。相反する環境に身を置いて来た2人が、”黒い道化師”の元でそれぞれの理由を胸に同じ目標に向き合い、時にナポリと言う街に翻弄され哀しい出来事を経験しながら、どんな時でも笑みを絶やさない道化として成長してゆく姿は、最後に爽やかさな風を与えてくれました。

更に、2人の物語と対を成して交互に描かれる、何度死んでも前世の記憶を持ったまま転生する”神の道化”の紀元前から語られる長〜い物語も素晴らしかった。イタリアのナポリと言う場所の全てを、神の道化の転生と共に過去から現在までを様々な人間として経験する感覚がとても面白かったです。人の命をへとも思わなかった”神の道化”が、途方もない転生の果てに「人として人を愛しむ」意味を知り、2人のプルチネッラ候補の物語と繋がってゆくのが気持ち良いほど綺麗。


一体どれだけの情報を小島てるみさんは収集し、このようにまとまりの良い物語として構築したのか、少し考えただけで気が遠くなりそう...巻末に生粋のナポリ人である人物から絶賛の言葉も寄せられています。

『ナポリ』の酸いも甘いも全ての魅力を感じさせてくれ2冊のデビュー作を読み終えた今、次の作品がいつになるのか分らずじまいなのが、焦れったい限りですね。これほどの作品を書ける方が4年間も本を出さないなんて....

フォロワーさんが有名作家の別ペンネームなのでは無いかと言っていましたが、あながちその推論、馬鹿に出来ないかもしれません....(白眼

良い装丁だ♪


(-人-).。oOこれが”最後”の作品になりませんように.....



 
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