意味よりも、意義を見つける事こそ士の道『ブラッド・スクーパ』/森博嗣/中央公論新社/2012年/小説/感想

正式にスカイクロラのような叙情詩的シリーズとして、今後も続く事がほぼ決まった『ヴォイドシェイパ』の続編『ブラッド・スクーパ』を読み終わった。

この装丁は本当に綺麗だ。


今回もただただ眼を奪われる装丁と、無駄を削ぎ落した語感がたまらなく美しい作品だった思います。シリーズ2冊目と言う事で、だいぶ今シリーズの色が出て来た巻になった気がしました。己の命の使い道を、唯一の才能とも言える”剣”を通して見つけようとする主人公”ゼン”の、何処となく天然な所も愛らしくてたまらないw全体的に後ろ暗く、破滅的な内容だった『スカイクロラ』シリーズとは明らかに目指す場所が違うのも、読後に温かさを感じてかなり良いですよね♪

Twitterのフォロワーさんがこんな事をつぶやいていました。

『スカイ・クロラは「なぜ生きるのか」と問い、ヴォイド・シェイパは、「どう生きるのか」と問う。 』

「何故生きるのか?」と問う事は非常に不幸な事で、単純に生きる事の喜びを理解出来ない人の叫びです。対照的に「どう生きるべきか?」と問う事は、まずこの先も生き続けたいと言う意思がある事が前提の質問なのです。実に両シリーズの対比を言い表した言葉だと思います。詩的で命の意味を問う点は共通していますが、この生き方の差は大きい事でしょう。

全てが終わるその時まで、後者の側で在り続ける事が僕も出来たらいいな.....



さて、シリーズ化する事は決まったようですが、このシリーズ後の事も少し考えてしまいました。こうしていわゆる『チャンバラ』を書いた後、生死の意味を考えるようなシチュエーションが他にどんな物があるだろう?

西部劇?戦争物?それとも絶対に森先生が書かなそうな心霊物?

実現しそうなのは戦争物でしょうか?あ、スカイクロラも戦争物かwwwでももっと地べたに這いつくばって泥を噛むような虚しい現実の戦争を描くとしたら、どんな風に書くだろうかと想像するだけでゾクゾクしちゃいますねw”打海文三”さんの『応化戦争記シリーズ』のような細かいディティールは無くとも、詩的な空間は似た感じなるのかな?どんどん読みたくなって来た...


いずれにしても、森先生が書きたいと思わなければ意味は無いんですけど、森先生の言葉選びで書かれた「こういう」物語が読みたいっていう欲求はどうしても溢れて来ますね。『座して待つのみ』 読むだけのファンにはこれしか出来ませんから_/乙(、ン、)_

兎に角、人情だけが取り得とも言えるベタな時代劇と言うジャンルを、本書でしか味わえない活字体験に昇華して下さった事を感謝したいです♪