起き上がる原作の重み『屍鬼』/アミノテツロ/童夢/2010年/アニメ/感想

※ネタバレ感想

 久し振りに”アミノテツロー”改め、”アミノテツロ”監督のアニメを観た気がする『屍鬼』 漫画版をほぼ忠実に映像化した作品としては、なかなか良かったんじゃないですかね?



 あらすじ『人口1300人の小さな村、外場村。外部からは1本の国道しか繋がっておらず、周囲から隔離され、土葬の習慣も未だ残っている。そんなある日、山入地区で3人の村人の死体が発見された。村で唯一の医者・尾崎敏夫は、このことに不信感を持つが、村人達の判断で事件性は無いとされ、通常の死として扱われた。しかし、その後も村人が次々と死んでいく...』
byWiKi


 
 元々”小野不由美”さんの原作を最初に僕は読んだので、漫画版に関してはアンチ派だったのですが、このアニメ版を観てから少しその想いも軟化しました。

 漫画版を描いていたのは、少しクセのある作画をする”藤崎竜”さんでしたから、「屍鬼」のコミカライズもかなり小説を読んだ人間には衝撃的なデザインでした。しかし、アニメとして動き出すと微妙にアクの強い藤崎竜さんの作風が緩和されて受け入れ易くなったのかもしれません。はたまた、原作を読んだ時期からだいぶ時間が経って記憶が薄れたからなのか、

藤竜屍鬼結構イケルじゃん

 と、上から目線ですw

 実際観終わってみると、原作(小説)の雰囲気がどことなく出ているように感じました。吸血せずに居られない日陰の存在「屍鬼」の儚いジレンマも痛いほど伝わりましたしね。

 それから原作以上に村人達の出番が多かったのも良かったです。お前は何してんだ!の室井さんのむかつき具合や、”お前はまあまあ良くやったよ”の尾崎の旦那達を筆頭に、みんな良い味出していました♪大川さんなんて原形を留めて無いし屍鬼より怖い((´д`)) ぶるぶる・・・

 大川さんのキャラ改変は、”藤崎”流のキャラ解釈がとても分り易く変えられている一例です。特に面白いチャレンジだったのが、原作では死ぬはずの”夏野”君が起き上がった事でしょう。あれだけ早い段階で屍鬼に気付き孤軍奮闘していた夏野君が、唯一の理解者とも言える”徹”ちゃんにやられる展開は本当にショックで辛かった。ですから彼が最後まで物語に関わって来る事に違和感より嬉しさが勝るほどに個人的には嬉しい違いだったのです。普通に原作で途中まで夏野君が主役そのものでしたし、僕のように思い入れがある人も多いのではないでしょうか?


 と、小説では味わえないなかなかの良さがアニメ版にはあったのですが、いかんせん屍鬼狩りのシーンがあまりにも人間を悪者にし過ぎなのがちょっとどうかと....村人のおばさん達が屍鬼の死体を片付けながら世間話したりするようなシーンが本当に必要だったのか?他にも返り血に不快さを見せずに飲食するシーンなど、そこまで”人間”を貶めるように描く必要は無かったと思います。

 原作はあくまでもお互い生き残るためしかなくやっている事のように思えました。勿論正気の沙汰では無いところもありましたが、一方的な蹂躙だったとは僕は思いません。

 自然な欲求を叶えたかった屍鬼。それを本能的な拒否反応をした人間。

 ただそれぞれの一方通行な想いが招いた虚しく切ない物語でした.....


 かなり観れるアニメではありましたが、やはり小野不由美さんの原作を知らなければもっと自然に楽しめた事でしょう。

 とりあえず、小説だろうが漫画だろうがアニメだろうが最後に美味しいところを持っていってしまうずるい室井さんに乾杯.....

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