愛は世界を救えない。
人は何かを愛するが故に世界を壊す。至極当然のように自分が望まない世界を壊す。
そこには生き物の根底に潜む究極の愛「自己愛」しか無い。
結局「愛」が救えるのは自分自身の想いだけだ。
想いを遂げる、遂げないに関係無く、人は自分への愛から行動する。
自己犠牲でさえ自己満足だ。
だから、誰かを愛したいと幾ら望んでも、その愛を対象は望んでいないかもしれない。
この映画は、そんな個々の想いがすれ違った結果産まれた哀しい物語...
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時は1950年。長きに渡った日本による占領時代も終わり、いつかの日本でも当たり前だった、貧しい営みの中でも家族がいれば幸せを感じられた頃の韓国へ北朝鮮が侵攻を開始。そのせいで病気がちな弟が軍に徴兵された事を知った”ジンテ”は、連れ戻そうとするが失敗。自らも戦場へ駆り出される事になってしまう。
なんとかして弟を除隊させたいジンテは、自らが手柄を立てて功績を上げればなんとかなると考え、自らの命を顧みない戦い方に身を投じてしまう。
しかし、弟の瞳に映る兄の姿は、出世欲に魅せられ同胞を戦友を家族を蔑ろにしているようにしか見えなかった。どんどん軍に染まり大事なものを見失ってゆく兄との距離を感じ始めてしまう。
そして、兄弟のすれ違った想いは、取り返しの付かない哀しみへと終着する....
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愛情は一方的な物。
それが噛み合った時だけ現れる幻なのだ。
「あの時こうしていれば」
誰もがそう後悔する。人生はすれ違いの繰り返しだ。
でもそれが人間。だからこそ愛おしい...
この映画は、言われているほど戦争をリアルに描いた物では無いと思います。確かに戦場の凄惨な姿は描かれているのですが、メインは兄弟愛なので、あまり戦争自体の価値を感じません。そして必要以上に残酷描写を見せるのも、少し消化不良な感が拭えない。いまいちスピード感を感じ無い白兵戦ばかりの戦闘シーンも残念でした。
なのでこの映画は戦争映画として見ない方がいいです。戦争と言うシチュエーションに翻弄された兄弟の姿だけを味わう映画です。泥臭く血染めが似合う”チャン・ドンゴン”の漢っぷりと、時折影を落とす”ウォンビン”の綺麗な瞳をじっくり堪能して下さいw
愛は世界を救えない。
けれど、誰か一人くらいは救えるかもしれない.......
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