子供は欲しいが、夫は要らない肉欲否定な女性が、戦争で怪我をした瀕死の男を精子目的でレイプし妊娠。その男の名前から取って、子供に”ガープ”と名付けた。
ガープ少年は、そんな偏った生き方をする母に振り回されながらも成長し、自分の家庭を持つようになるのですが、様々な困難にぶち当たってゆく事になります。
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主人公のガープは、顔も見た事が無い亡き父の事を夢想し、パイロットのようなヘッドギアを使用して競技を行うレスリングを始めます。そのうち人間として素直な欲求を求めるようになり、好きになった女性の為に小説家になるのですが、その素直な生き方が実に心地良い。
自伝を書いて、作家志望のガープよりさきに有名人になってしまった母親とのやり取りや、小説家になる動機となった女性との馴れ初め等は実に微笑ましく、子供達と楽しく暮らしている物語前半は、観ているこっちまで幸せな笑みを浮かべていました♪
しかし、徐々に狂い始める”幸せ”と言う名の歯車....後半に進むにつれて、哀しい現実が押し寄せて来ます。
映画の原作は、1978年のアメリカを舞台にしており、まだまだ男女の差別が存在した時代で、女性が自らの意思で主張する事を男達は快く思っていませんでした。なので、この作品にはその女性差別の残る世界に触発された内容が描かれています。
私生児を産んだ母親は、男性によって傷つけられた女性達を救うマリアのように扱われ、ガープは当時では珍しい家事をする男として描かれています。これは男性である原作者の”ジョン・アーヴィング”氏が、偏見の無い公平な見方の出来る人物だったと言う事でしょう。
アーヴィング氏は、ガープに自分を投影して書いたかのような経歴を持つ方で、同じように父親の顔を知らずに育ったそうです。レスリングを始め、その後小説家になった事も重なります。実体験に基づくストーリー構成は、やはり説得力がありますね。
こうして書くと、ただのフェミニスト作品のように思われるかもしれませんが、まったくそんな事は無く、女性の主張の”正しさ”と”危うさ”を、私生児であるガープの生き方を通して感じる映画だと思います。彼の幼少期からの絡み合う人間関係も実に見所がありました。
そして何より、ロビン・ウィリアムズの人懐っこい笑顔が頭の片隅から離れない良い映画でしたよ....♡
OPとEDを飾るビートルズの「When I'm Sixty Four」も印象的でした♪
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