唯一の理解者であった奥さんを亡くした、強面で頑固で頭でっかちな老いぼれ男 ”ウォルト・コワルスキー”
家族からも敬遠されるほどの江戸っ子っぷりを見せる彼には、愛犬と愛車の「グラントリノ」しかもう残されていなかった....
彼の住む町はアジア人が多く、愛国心の強い元軍人である彼には住み難い場所。隣人は中国系の”モン族”で、彼はその隣人を”イエロー”と呼び、悪態を付いたりツバを吐いて敵意を隠そうともしなかった。 それでも彼は、その町に住み続ける。まるで何かを忘れないようにするかのように...
そんなある日、隣に住む一家の頼りない息子”タオ”が、ギャングの従兄弟に無理矢理促され、ウォルトのグラントリノを盗もうとするのだが、ウォルトに見つかり失敗してしまう。それでもしつこくタオに車を盗ませようとする従兄弟達とタオの家族がバタバタしてるところへ、銃を持ったウォルト登場!ここから彼とタオ一家との繋がりが深くなって行きます....
徐々に隣人との友情を深め、遠縁な家族以上に親密さをタオ達に感じるようになるウォルト。上手くいかなかった本当の家族との時間をやり直すかのように、黄色い隣人の息子と娘に彼なりの愛情を注いでゆき、最後には彼等の為に出来る事を命の限り、やり通そうとするまでに....
その姿勢はとても格好良かった。過去の暴力によって救えなかった自らの魂を、暴力を使わずに救った彼の魂は本当に綺麗で高潔....御歳(グラントリノ公開時)78歳だったクリント・イーストウッドだからこそ演じる事が出来た役どころだと言えるでしょう。人生の深みがとても出ていました。
イーストウッド自身、沢山の暴力表現によって支えられた役者人生でした。それを振り返り、彼なりに出した暴力の連鎖への答えがグラントリノなんですね、きっと。この映画を最後に役者を引退したのも頷けます...
実は、「許されざる者」「パーフェクトワールド」以降のイーストウッド監督作品を観ていません。評判はいつも良く、きっと良い映画なんだろうとは思っていたものの、評判だけが先行しているような気がして、ワザと観ないようにしていました。でも今回観てみて、その考えは180度変わりました。いままで観て来なかった彼の監督作品を洗いざらい観たい気分ですw
喰わず嫌いはダメだよなぁ...ましてや、「パーフェクトワールド」は大好きだったじゃないか.....迂闊だった_/乙(、ン、)_
老兵は死なず!彼の魂が燃え尽きるまで、存分に映画を作り続けて欲しい....
この記事へのコメント