常野の物語は、僕らが”しまう” 「蒲公英草紙 常野物語/恩田 陸/集英社/2005年/小説/感想」

 常人とはかけ離れた能力を持つがゆえに苦しみを抱えた者達がいた。


 人の記憶や感情を”しまう”事が出来る者。

 謎の存在に”裏返されない”ように戦い続ける者。

 どんなに遠くの事でも見聞きする事が出来る者。

 とてつもない時間を生き続ける者。


 人は彼等を”常野”と読んだ.....

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 常野の物語が綴られた初めての本「光の帝国」はオムニバス形式の短編でした。登場人物のリンクはあるものの、一つ一つ違う能力に翻弄される者達を描いていました。今回の二冊目「蒲公英草紙」では、深く一つの物語を掘り下げられ、前作でもう少しこの人達を見ていたかったと思う僕ら読み手にとって嬉しい内容になっています。

 主人公は自宅の近くにある立派なお屋敷へ憧れを持つ女の子。彼女が自身の記憶を辿りながら過去を語るスタイルで物語は進みます。彼女の憧れるその邸宅には、病気がちな同世代の女の子がおりまして、その子の為に一緒に遊んで欲しいとその子の主治医である父親からある時言われます。女の子はその病気がちな女の子と遊ぶと言う理由からお屋敷に関わっていく事で、沢山の出会いを経験してゆくのですが、その人々がまたなんとも個性的で魅力に溢れていました。

 いつも意地悪ばかりする男の子や、役に立つか分らないような発明ばかりしている老人、気まぐれに絵を描くちゃらんぽらんな男、有名な仏師だったがある事が理由に自信を喪失した者、前回の冒頭エピソードでも活躍した”しまう”人々もまた登場します。

 彼等との、まるで夏休みの想い出のように凝縮された経験の記憶は優しく描かれ、その想い出を完成させる一つの哀しい出来事が更に追い打ちをかけるように僕に襲いかかりました。そのせいでラスト付近はとにかく泣いてしまった....ベタと言えばベタな展開なのですが、まとめかたがとても僕にはしっくり来るのです。

 前作の時にも書きましたが、恩田さんの文体はとても僕の波長に合っていると思います。言い回しの不愉快さも無いし、すんなり文字が心に入って来ます。僕じゃなくてもかなり読み易い事でしょう♪


 常野の物語はあと一冊残っています。2004年から2005年のかけて雑誌に連載していた物をまとめた「エンドゲーム」これをまたちまちまと読んで行こうと思っています。

 三冊あるシリーズはどれも間隔があいて連載していました。そろそろ新しい”常野物語”が語られても良い時期じゃないですかね恩田さん?期待しながら「エンドゲーム」読んじゃいますから♡(*´艸`*)

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