生きる事を難しくしているのは誰?「告白/町田康/中央公論社/2005年/小説」

写真-245.JPG

 久々に凄い物を見た!これが素直な気持ち。鋭い洞察力と圧倒的な文章力を兼ね備えた者で無ければ書けない作品と言えます。

 
 以前に、フォロワーさんの「告白」を読んだと言うつぶやきに対して、”湊かなえ”さんの「告白」と勘違いして反応してしまった事から知ったのが”町田康”さんの「告白」でした。

 大変に恥ずかしい思いをした分、どんな作品なのか気になっていました。なにせフォロワーさんが言うには、湊かなえさんの「告白」より面白いと言うのですから....

 半信半疑ながらもネットで調べてみると、実話に基づいた作品でしかもかなり評判が良く、これは是非読まねばと思い至ったわけですが、なんとページ数は600を軽く越えており、それだけでも読むのどうしよう...なんて思ったりもしましたwww


 江戸時代末期の安政4年に産まれた”城戸熊太郎”は、早くに産みの母を亡くし、それを不憫に思った父と後妻に、ことあるごと褒められて育った。そうして甘やかされた彼が後に起こした事件が「河内十人斬り」

 熊太郎がいかに人を殺すまでに至ったのかが、幼少の頃からこと細かに作中では描かれます。熊太郎の思考の流れを上手く例えた文章は説得力を持ち、自分自身にも重なる部分を熊太郎に見出してしまって、かなりナイーブな気持ちにもなってしまいました....

 しかし、ダメダメな熊太郎に作者自身が自分の言葉で「あかんではないか」と、つっこんだりする場面がある事や、登場人物達の口調が関西弁である事が、重くなりがちな展開を上手く和ませてくれました。この辺はかなり町田さん上手いです♪


 作者が思わず「あかん」と、つっこむほどに熊太郎はダメダメ男で、頭は悪く無いのに思うように言葉にならず誤解を招き、とても要領が悪く辛抱強さも無い...しかもひねくれ者だから人の望む事なんて素直に聞いたりしないで悪ぶってしまう.....でも心の奥底では自分も普通に皆と同じ事が出来たらなぁ〜なんて思っているから憎めない奴なんですw

 そうしてそんな生き方をしているうちに、少しづつ後戻り出来ない場所まで辿り着いてしまうわけですが、それもこれも、彼の純粋さ故では無いかと思うわけで...いつまでも子供なままの幼稚な考えと、彼の要領の悪さから来る不運と、周りから貼られたレッテルによって、どんどん引くに引けなくなり、更に周りの人とは違う方向を向いて歩いていってしまうのがあまりにも哀しかった...

 
 自らの愚かさと、社会の愚かさの狭間に苦しみ、翻弄され自滅してしまった男”城戸熊太郎”....彼の半生を描くのに600ページは短いくらいだったかもしれない。それほどあっと言う間の読み心地だった....

 熊太郎の考えや行動から、現代の若者達の理由の見えない犯罪の背景も見えて来る内容は必見です!これほどのディティールで本を書けたらさぞかし気持ち良いだろうな♪


 それにしても、人生とは、まっこと流れ星のごとく一瞬の輝きであるものよのぉ..熊やん.....(>へ<。)

この記事へのコメント