不器用な僕達は、知らず知らずのうちに”人”を傷つけて生きている....「悪人」/吉田修一/小説

 僕らは、毎日のようにテレビやネットの情報を見聞きして生活している。しかし、その情報の確かさには限界がある。どれだけ信用出来そうなソースであっても、誰かの主観が入ってしまうからだ。それによって更に情報は伝達される時にどんどん姿を変えてしまう....僕らが信じるモノはそんな危うさの上に存在しているんだ。

 テレビで流れる事件事故。その本当の姿も知らず、テレビ局が脚色した内容に僕らは一喜一憂する。この本は、そんな危うい情報を鵜呑みにしてもいいのか?と言うテーマも含まれている気がしましたね。被害者の両親。加害者の家族。彼等を責める我々こそ何者なのかと....

 ニュースは何故事実だけを報道しないのだろう?「◯△公園で女性が鈍器で殺されました。」この一言で充分なのに、偉そうなパーソナリティや、大卒のキャスターが自分の感情を口に出し犯人を罵倒し非難する。そしてそのテレビの向こう側の存在達に影響を受けたお茶の間が、憤りに満ちる....なぜそんなに視聴者に不信感や恐怖を植え付けようとメディアはするのだろう?

 ちなみにこの物語の中で、世間から悪いと言われるのは一人では無い。


 女を殺した男。
 
 男を傷つけた女。

 女を蹴り落とした男。

 男を自主させなかった女。


 幾人もの人間の自分勝手な行動が不幸を大きくしてしまった。でも、こんな事件でも起きない限り、彼等は本当に大事なものに気づかなかったのかもしれません...人は傷を負って初めて知る不器用な生き物ですから。
 女の子を殺してしまった”祐一”も、”光代”や家族への愛情表現が下手過ぎて可哀想だった。きっと女性は自己満足だと言うでしょうけど、僕の中に彼を責める気持ちが湧いてこないのは僕が男だから、ただそれだけなのでしょうか......


 原作は映画版と違い、第三者からの証言から事件の姿を描いているので、分りやすい部分と分り難い部分があります。なので映画と小説どちらも見る事によってだいぶ補完する事が僕は出来ました。映画版で最後の最後までわかりニクかった祐一の気持ちがとても理解出来た。それだけでも原作を読んだ甲斐があったと思います。 
 映画版の方が演出上良いと思える部分も多々あるので、原作だけで映画はまだの方も観てもいいかと思いますよ〜♪


 やはり色々と考えさせられる作品でしたね....映画観て内容はだいたい知ってるから、泣かないだろうと思ってたんだけど、バスの運転手さんが祐一のばあちゃんにかけた言葉で泣いてしまったwまだまだ修行が足りない僕でした(;¬∀¬)ハハハ…

 

 公式ページ http://publications.asahi.com/akunin/

この記事へのコメント