うつのみこ日誌 (完) 「宇宙皇子」藤川桂介/角川書店/感想

長期に渡る作品と云うのは、どんなものでも作り手のモチベーションに変化が出るものだが、それは受け取る我々も同じで、『宇宙皇子』全48巻を足掛け25年ほど費やし読み終え到来したのは、時の流れとは本当に残酷だと云うことだった。

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表紙担当の”いのまたむつみ”さんもお疲れ様でした.....



「宇宙皇子」とは、宇宙戦艦ヤマトや銀河鉄道999などで脚本を手掛けた”藤川桂介”さんが執筆した歴史伝奇ファンタジーで、壬申の乱が起きた時代の日本を舞台に、神の子でありながら農民の子として地上に生を受け孤児となった宇宙皇子(うつのみこ)が途方もない年月を超えて神籍に至るまでを描いた作品だった。

生まれつき角を持つ彼は金剛山の鬼と呼ばれる修験者達の仲間に迎えられ、鬼の指導者”役小角”のもとで修行し農民を助ける務めを果たすようになり、その過程で彼の生みの親の死の原因となった戦を生んだ朝廷に憤りを募らせ、様々な歴史的人物達と衝突や親交を深めつつ権力者達に抗い続けると云う内容で、霊能力や人外が登場するファンタジーと実在する歴史を融合させた内容が当時は実に新鮮だった。まだラノベと云う括りが無かったジャンルの草分け的な存在であったのだ。

宇宙皇子が連載をスタートした時代はバブル期真っ盛り。だから本作は急激に変化する社会構造への反動が反映されているようなところがある。むちゃくちゃなことを師である小角にやらされても試練なのだと我慢する辺りは昭和の体育会系の匂いがぷんぷん漂っているし、その割に朝廷で埒が明かないなら神だと言わんばかりに天上から地獄まで訪れ、直にルールと云うルールに対し”何故?”を叩きつける血気盛んなところも、今じゃ野党の茶番くらいでしか見られなくなった。今読むと本当に価値観のズレを感じて仕方ない。


女性の扱いに関しても、内助の功と云う言葉が普通に使われていた時代の観念でなされているため、現代女性が読んだら「はぁ?」とブチギレそうな描写もままある。当時は女性のファンが多かった作品だが、今の世代に読ませたら完全に男女比が変わってしまうのではなかろうか?それとも相変わらず男同士の熱い描写に腐れ心を刺激されるのだろうか?まあどちらでも構わないのだけど、要はその時代に合わせて書かれたものは、その時代のうちに消化すべきなのだなと感じたと云うこと。勿論普遍的な部分はいつの時代になっても響くものはあると思うけれど、宇宙皇子に関しては天上編までしかお勧めする気ならない。その後は同じような展開の繰り返しになるし、脚本家である藤川桂介さんの癖がそのまま出ている文章は、セリフ描写が過度なうえ、同じやりとりを何度も書くから堂々巡り感が巻を追うごとに酷くなっていく。主人公同様に試練と信じながらでもないと読み続けるモチベーションは保てなくなってしまうのだ。

毎巻発売日に買って読み続けた人なら、また違う感じ方なのかもしれないものの、何度も1巻から読み直し天上編以降を積むと云う行為を続けた自分としては、気が遠くなる道のりとなった。正直読み終えた時に到来したのは安堵の溜め息で、感嘆のそれではなかった。兎に角結末まで読んだこと自体に満足していた。そんな苦読は今まで経験したこともない。最初は夢中になって読み進めたシリーズである。まさかこれほどしんどいことになろうとは当初露程も思っていなかった。漫画でも長期連載の作品が幾つもあるけれど、常に最新話をチェックしているような熱心な読者は本当に忍耐強いのではなかろうか?...




そういえば高校の頃からハマった超人ロックもここ10年ちゃんと読んでいないような気がする。あれは途中からサブタイトル表記でシリーズ展開しているため、何処まで買ったか、何処まで読んだか、何処から読んだ方が良いか分からなくなってしまうのが悩ましい。聖悠紀さんはパーキンソン病だと聞くし、ちゃんと完結するのだろうか?.....

後からまとめて読むのも良いが、今やっている作品を今読む方が良い場合もある。

そんな取り留めのないことを愚考してしまう宇宙皇子読了でありました。






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posted by lain at 07:13北海道 ☔小説