人、土地、時代が代わっても”人狼”は人狼だった「人狼(韓国版2018年)」キム・ジウン(監督)/Netflix/感想

辻谷耕史さんが亡くなったニュースのショックで、すっかり忘れてしまいそうになっていた韓国版「人狼」。

もう観てから数日経ってしまったし、いっそ書かなくとも良さそうなものだが、これが存外良い出来だったから、このまま忘れ去ってしまわないようにしたい気持ちの方が上回った。





『人狼』と聞くと、某パーティゲームを思い浮かべる人の方が多いかと思うが、その元になった「Mafia」というゲームをアメリカの会社が「Are You a Werewolf?(汝は人狼なりや?)」と名付けて再構築して発売する前に、”押井守”のライフワークであるケルベロス・サーガのアニメ映画『人狼 JIN-ROH』はこの世に生を受けていた。






”負けた”という点以外、異なる道を辿った戦後の日本を舞台に、丁度学生運動や世界情勢が不穏であった頃と似た時代のお話で、過激派を取り締まるため警察以上自衛隊以下の組織が必要だと組織された”特機隊”が、その強さが仇となって徐々に国家から要らない存在とされていくという内容。

確かに特機隊は軍隊でも使わないくらいの強度を持ち合わせたプロテクターで全身を包み機関銃を乱射する連中で、犯人を逮捕するなんていう甘っちょろい考えは一切しない。流石にそれはやり過ぎだろうというのも分かる話ではある。でも、自分たちで作ったにも関わらず、目の前の脅威と実際に対峙している者達に”お前達はもう要らない”というのはあまりにも御無体ではないか?....そんな風に思ったが最後、覆せぬ時流と頑固に戦う連中に自然と肩入れしている自分が出来上がっていた。


まあ、要するに、このケルベロス・サーガが本当に好きなんですね、俺は。押井守初の実写映画「紅い眼鏡」に始まり、藤原カムイによるコミカライズに沖浦さんが監督を務めたアニメ版人狼まで、その愛は揺るがなかった。

だから、韓国の実写版「人狼」には当然一抹の不安はあった。それでなくとも日本のアニメを実写化して成功した作品など思い出せないくらい僅かなわけで、押井さんが監督するわけでも演出を指導するわけでもない実写化を疑わない方がおかしいくらいだと思うが、今回に限っていえば、そんな心配は杞憂でしかなかった。ケルベロス・サーガの象徴である”プロテクトギア”姿も、日本の実写化でよくあるコスプレ感とは無縁であったし、世界観も近未来の韓国が舞台でもなんら違和感がなく(むしろ韓国にこそぴったりな設定かもしれない)、アクションシーンも実に重量感溢れるもので、まだまだ日本はこの分野で韓国の足下にも及ばないなと感じました。





やっていることは韓国映画で間違い無いのに、ちゃんと押井守の愛したケルベロス・サーガになっているのが不思議でした。一応のハッピーエンドへ改編されていても、何故か原作と同じだけの質量で哀しい気分が降って来ました。

主演の男女は、それほど華やかな役者では無かったものの、吹き替えに”細谷佳正”と”坂本真綾”が配役され、真綾得意の朗読シーンも良く、特に主人公の訓練を務めていた虎の穴の所長(演:チョン・ウソン CV:三木眞一郎 )の渋さが本当に格好良くて痺れた。人狼としての道を主人公に身体で教える漢気もそうだし、アニメ版とは違う結末を主人公に許した懐の深さにも惚れそうだった。

IMG_9480.jpg



こんな実写化ならどんどんやって欲しい。

これを日本でやれないのは、心底残念でしかない............

”ハリウッド製”という冠に拘るくらいなら、本当に作りたがっている人たちにこそ、やって貰いたいものだ.......


posted by lain at 22:12北海道 ☔映画