探し物が見つけられそうな風景「はてなデパート」谷 和野/小学館/感想

この世界では、現実でも虚構でも何処かしらでドラマが起きている。

人が産まれたり

死んだり

いつも以上の力を発揮して金メダルを手にしたり

思いがけない愛の告白をされたり

人間が居るからドラマになるのか?状況(シチュエーション)が在るからドラマになるのか?きっとその両方が必要で、きっとも切れないどころか、切ってはいけない関係なんだろう。

本作もそういった、人があって状況が在り、状況があって人が居る物語だった。

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とあるデパートで繰り広げられる、少し不思議な優しい世界のオムニバスで、親からはぐれウトウトしてしまい、気づけばデパートが閉店して閉じ込められてしまった少女が夜のデパートの不思議な力で大人の姿になる話や、マネキンが自分を着飾ってくれるデザイナーの男性と淡いひとときを過ごす話、そしてそのデパートの支配人にまつわる物語まで、ちょっぴり切なくほんのり温かい5編(全6話)の構成。どれも懐かしの海外ドラマや映画を思い出させる大好きなエピソードばかりで素直に愉しめた。"技のデパート"という異名を持つ力士がいたが、まさにデパートとは色とりどりの商品があり、それを求めて様々な人が集まる多彩な場所で、ドラマが生まれるのに申し分ない。全体を繋ぐ存在として、何処にでも現れる支配人を登場させているのも上手だった。

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締め括りも実に綺麗で「なにか欲しい人があなたのデパートに今日も来ますよ!」という最後のページのセリフには感慨深い物を感じてしまった。なにか面白い漫画は無いか?素敵な世界が待っていないか?そんな風に思っている人達が、自分の漫画と出逢い、少しでも読んで良かったと思って貰えたなら本望だ。という谷 和野さんの気持ちが篭っていたからだろう。

最初に、何処かしらでドラマが起きていると書いたけれど、自分の人生がドラマチックに展開することなど、まずありえない。せいぜい死ぬまでに片手で指折り数えるくらいしか、ドラマを実感する瞬間は訪れないはず。だからこそ僕らは虚構の物語を求め、造りたがる。普通に生きているだけで満足出来ないなんて、つくづく人間は難儀な生き物だ。





環境がそうさせるのか?

僕らの血が邪魔するのか?

そんな無意味な問いを繰り返し、僕らは勝手に喜怒哀楽を積み重ねて生きてゆく。


もう暫くは、きっと...
posted by lain at 07:23北海道 ☔Comment(0)漫画