虚構に添い寝する現実「HOMELAND シーズン5」FOX/感想

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 一昨日、シン・ゴジラは3.11(東日本大震災)を東京とゴジラに置き換えた作品だとする記事を見掛け、確かにそう言われれば陣地を超えた天災同然のゴジラが撒き散らすのは放射線だし、後手後手に回って国民や現場に被害をもたらしたのは政治家だったなと思った。しかし、おそらく自然と似通ってしまっただけなのだろう。ゴジラの撒き散らす放射線に関係する対処を考えた時、真っ先に見本となるのが3.11なのだから。



 近年、現実がフィクションを追い越してしまったとよく見聞きする。大規模なテロや、殺傷事件が頻繁に起こるからだ。日本でエアガン市場が成長したのも、現実に銃を撃てる機会がまず無かったからで、もしも銃が携帯可能な社会なら、ここまでエアガンが売れることは無かったかもしれない。要するに、冗談を言っている場合では無くなってしまうのだ。

 それでも物語を紡ぎたい。そう考えた時、兎に角ディティールがモノを言う。今回のゴジラも、政府がどう動き、自衛隊がどう戦うか、というのを実に緻密にやった結果、作中もっとも虚構な存在であるゴジラをリアルに感じることが出来た。日常が日常だけに、そんじゃそこらの嘘では現実を吹き飛ばせないアメリカにしても、「HOMELAND」のように真実より真実らしく感じる重めの作品にこそ魅力を感じる。





 つい最近シーズン5が終わったばかりのHOMELAND。帰還兵がスパイとして本国へ戻って来て、テロの片棒を担ぐことになるという衝撃の内容で幕開けした本作は、常に現実の厳しさを描き続けている。笑えるシーンなどほぼ皆無だ。CIAのギスギスした感じや仕事の進め方、更にはその罪の重さまで表現しているから、見終わった時誰が悪いのか分からなくなって溜息が止まらない。シーズン5では、慈善事業団体と機密の関係や各国諜報機関の共闘と反目、そして心揺れるテロリストに至るまで繋ぎ合わせ、主人公であるキャリーと友人達の感情を際立たせていた。

 勿論ドラマなのだから、綺麗事もご都合も無いわけではないが、あまりに救いが無い展開に打ち切りを望む声まで上がっているのだから、脚本と役者の質の高さは言うまでも無い。シーズン6の製作も決定していているから、本国以外での反応も悪く無いのだろう。願わくば、テロの温床になっているような地域の人達に見て貰いたい作品だ。何処でどう暮らしていても、人間は人間なんだと分かって貰えそうな気がする。



 アメリカのことを文化で他国を占領する国だと言うのも分からないでも無い。だが、彼らの文化に少しでも親近感を覚えるからこそ、恐怖し、反抗しようとしているのもあるだろう。文化も神も人の数だけ居て良いじゃないか。アッラーでもキリストでもゴジラでも。唯一無二の絶対で無ければならないだなんて狭量なだけだ。

 みんな仲良く。なんてのはありえないが、もっと今より争いの少ない社会が構築出来たとして、一体その時はどんな物語に人々は真実味を感じることになるのだろう?........







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