僕は、もうずっと長いこと食事は三食とも独りで食べている。誰かの目線を気にせず食べられる気軽さと、片手間に何かをしながら済ませられるのが楽だからだ。
しかし、そうすると家族の顔を見る機会が格段に減ってしまうから、たまたま面と向かって会話をすると、”あれ?こんな顔をしていたのか?”と、親の草臥れた様子や、姪っ子達の自分に対する余所余所しい態度に気づいたりして、冷凍状態だった頭が少し融け出し複雑な気分になったりする。家族が急に.....と、後から驚くことになる人たちは、僕のように家族とのコミュニケーションを極力避けている人達なんじゃなかろうか?誰かと囲む食卓だと、独りきりではありえない様々な相乗効果が期待出来て、脳にも良い刺激となるから心の病やボケている暇さえなさそうに思える。まだ幼い子供がいる家庭なら、極力一緒に食べてあげた方が心身共に健やかなお子さんに育つに違い無い。
アニメ版「甘々と稲妻」で、独りで食べる味気なさを上手に伝えられない”つむぎ”や、それになかなか気づいてあげられない父親を見ていたら尚更そんな取り留めの無いことを考えてしまった....
原作を読んだ時もそうだったが、兎に角”つむぎ”が可愛らしい。子供らしい素直な表情で気持ちを雄弁に語っているのがたまらない。お父さんは大好きだけど、味気ないコンビニ弁当や独りでテレビを見ながらの食事は好きじゃ無い....そんなモヤモヤを土鍋で炊き上げたばかりの白米を頬張り笑顔で吹き飛ばすつむぎは愛おしいばかりだ。
妻を失い仕事にかまけて大事なことを見失いそうだった男が、知識だけ豊富でまともに料理をしたことが無い女子高生と”ままごと”を通じて大切な物を取り戻して行くようなところも良いし、その女子高生の控えめな恋心の可愛らしさも大好きだ。美味しい人間関係も提供してくれる贅沢な料理アニメである。
炊き立てのお米に興奮気味な小鳥ちゃん。なんだか危なっかしい性格だw
テンポや音楽の使い方も良いが、つむぎの何気ない仕草の撮り方が良いと思った(上の写真はお父さんへ上手に気持ちを伝えられない時のつむぎが脚でもじもじしてるところ)
いつものハーレムアニメへの出演と違い、やらしい雰囲気を極力抑え、落ち着きの中に空虚さを感じる中村悠一くんの演技はある意味新鮮で早く結婚しろと言いたくなったし、柔らかく包み込むような声でありながら芯がしっかりしている早見沙織嬢は予想通り女子高生”飯田小鳥”にピッタリだった。つむぎにしても「ばらかもん」に出ていた控えめな少女を演じていた子役の子が良い味を出していて、冒頭の辿々しい「おとうさん!おはようー!」は耳にも心にも残った。実に羨ましい絆であります....
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「食べるとこ見てて!」
つむぎはそう言った。叶うことなら、全ての子供達につむぎの味わった安心感を手にして欲しいと思った。