少女少年の相互依存様式美「ドーリィ♪カノン 10巻(完)」やぶうち優/小学館/感想

 僕は最終回が苦手だ。思い通りの結末にならなくてモヤモヤすることもあるし、考えていたままの終焉でも質の違う悲しみが訪れるから。しかしまあ、だからと言っていつまでも終わらないのは、もっと哀しいけれど....


 大好きな少女少年シリーズの血を継ぐ「ドーリィ♪カノン」が終わった。全10巻と言うボリュームの割にはあっという間のことだった。終わってみると、内気な少女がカラオケ店で理想の声に恋して、その声の持ち主を自分色(オリジナルの楽曲や女装を強いる)に染め上げて行くという、ある種の嗜好に偏った人達の願望丸出しの夢のような話だった。初めは美少年を美少女としてプロデュースすることを楽しんでいるだけだった少女が、大好きな歌と向き合い自らも人前で歌うようになるという段階の踏み方もたまらないし、おもちゃにされていた少年が自分の身体の変化と少女への想いに葛藤するのも少女少年らしさ全開で甘酸っぱく最高に良い。今までの少女少年シリーズは当然好きだが、本作のより欲張りな選択をする少女と少年のエゴの突き通し方や分かり合えている感じも大好物だ。

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 少女漫画の伝統そのものである大きく輝く瞳で哀しみ、喜び、強さ、脆さ、等々の感情をコロコロと豊かに表現出来る漫画家さんだとつくづく思わされた。この先10年、20年とやぶうち優さんが”ベタ”を究め続けていったら、今のままでも十分なのに、もっともっと物凄い完成度の少女少年がいつか読めてしまうかもしれない。

 そう来たか!と、少し驚く終盤も綺麗な流れですんなり読めたから、あえて何も言う必要は無いのだけど、褒めてばかりなのも癪なので、たった一つだけ不満を言わせて貰えば、あまりにも男の子が普段から女の子過ぎたことだろうか?最初の頃の少女少年は、見た目も中身もまさしく男の子という雰囲気だったから、女の子の格好をした時のギャップに萌えることが出来た。あれから長い年月が経ち、年々男の女性化が進行して僕の考える”男の子”の定義がそのまま当て嵌まらない面もあるけれど、残念ながらギャップ萌えに関してのパンチは弱かったと思う。

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彼がこの経験を活かし立派に人生を拗らせ、身も心も女性になりたくなって苦悩するアダルトな後日談にも興味がある。誰か同人誌を作ってくれ(他人頼み)



 とは言え、そんな弱点を弱点と思わせないだけの熱量があった。可愛らしいキャラクターと衣装の数々、懐かしのTVドラマが脳裏に蘇る展開、カラオケやボカロというアイテムを上手く活かしていたのだって流石だった。折角やぶうち優さん初の10巻突破作品でもあるのだから、過去の少女少年シリーズを新装版で出せば良かったのに小学館さん。ドーリィ♪カノンで少女少年シリーズの存在を知った若い世代にアピールする意味でも悪く無い話に思える。電子書籍版があるから、わざわざ紙にする必要性も無いという考えなのだろうか?


 なるべくKindleで漫画を買おうと決めた僕が言えた義理ではないが、なんだか紙媒体の寂しい現状が透けて見えたような気がした....






posted by lain at 11:17北海道 ☔Comment(0)漫画