さよなら銀河警察...

地球上すべての人間を対象にすると、1秒間に1〜2人死者が出ているというのだから、人が死ぬことなど太陽が東から昇り西に沈んだり、日曜夜6時から『ちびまる子ちゃん』が放送しているのと同じくらい至極自然なことなのかもしれないけれど、幾つになっても死に慣れることなんて出来そうも無い。それどころか年々他人事には思えなくなって来てさえいる。ほんの少しでも身体の衰えを感じ始めると弱気の虫が疼くものらしい.....


昨日の午後3時〜4時頃、”水谷優子”さんが乳癌により17日に亡くなったというニュースがTwitterを駆け巡った。享年51歳。主演らしい主演にはそれほど縁が無いが、脇をガッチリ固める名優で少し抜けた可愛らしいキャラが僕の中では印象深いものの、しっかり者も演じられる大人の女性で生理的にも大好きな声の方だった。

声優デビューの「Zガンダム(サラ)」や、「ちびまる子ちゃん(お姉ちゃん)」 「ふしぎの海のナディア(マリー)」 「テッカマンブレード(ミユキ)」など、様々なアニメでお世話になっていた水谷ボイスではあるものの、当人をちゃんと意識するようになったのは「天地無用!魎皇鬼」の”美星”役だった。天然で全然使えないが実は優秀なギャラクシーポリスだという美星はまさに水谷さんの声にぴったりなキャラで、阿重霞や魎呼のアクの強さに辟易した時つまみ食いしたくなるポジションだった。底抜けの可愛らしさでロリ心を擽るのが砂沙美ちゃんなら、隙だらけのドジで間抜けではあるものの、何処か母性を感じるのが美星だったかもしれない。ロリとマザコンは表裏一体だから、僕と同じようにこの二人を愛していた天地ファンも多いことだろう。




帰宅後思わず天地無用のドラマCDを聴いたり、まだちゃんと観ていない愛・天地無用を観たりしていたら、変わらない水谷さんの声が聴こえる度顔が綻んでしまったが、”あかほりさとる”氏と一緒にやっていたラジオ「一生ポリケロ」最後の出演分を音泉の過去ログで聴き終えた頃には、寂しさで胸が一杯になっていた。

一つまた一つとお耳のオアシスが枯れて行く。逃れられない自然界の掟とはいえ辛い。そのうち昔のアニメを振り返るなんて辛くて耐えられなくなるかもしれない。あの人もこの人も良い声の持ち主だったと過去形で語らなければならないのだから......




ゆっくりお休み下さい。水谷優子さん.......


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posted by lain at 07:09北海道 ☔Comment(0)雑記

"作らざる者語るべからず"そんなこと分かっちゃいるけれど.....「ハーモニー」伊藤計劃(原作)/なかむらたかし、マイケル・アリアス(監督)/STUDIO 4℃(制作)/感想

世の中には”中身”を無視した生理的嫌悪というやつで、出合頭から受け付けないという事がままあったりして、悪くすると見た目だけで「さようなら」と言いたくなる出会いもある。長いこと観るのを先延ばしにして来た「ハーモニー」も、そんな第一印象の悪い作品になってしまった。






亡き”伊藤計劃”氏の残した一連の長編をアニメ映画化するプロジェクトの一環として作られた本作は、よほどフジテレビ内部に伊藤計劃ファンがいるのか実に豪華なスタッフが集まりプロモーションも大掛かりであった為、当初から注目を集めていた。幾ら文章ならではの味わいがあるとは言え、これだけの原作とスタッフを使うのだから間違いないはずだと、僕も一抹の不安など片隅に追いやり楽しみにしていた。ところが、出来上がった映像を見て、「あれ?これが俺のハーモニーなのか?....」と、素直に思ってしまったのだ.....

”redjuice”氏の絵を再現し切れていないCGキャラののっぺりした質感もそうだし、人間をWatchMeと呼ばれるナノマシンで管理している未来とは言え、僕のイメージした世界とは掛け離れた都市のデザインがやけに大袈裟で2030年代という舞台として受け入れ難かった。構成にしても尺の問題で端折られ、管理社会から外れた埃っぽい戦場の退廃的な描写や、トァンとミァハに次ぐ3人目の少女キアンを掘り下げる部分が原作と比べて物足りなかった。

声に関してはなかなか良かったように思う。主人公である”トァン”を演じる沢城みゆきは相変わらず可愛らしさとドライな雰囲気が入り混じった声で良かったし、周囲を囲むキャストも榊原良子さんや大塚明夫さん、三木眞一郎、洲崎綾など個人的に俺得過ぎた。ただ、ハーモニーで一番大事なキャラであるミァハの声がどうもミスキャストだった気がしてならない。小説の映像化には付き物な話ではあるけれど、上田麗奈の声質は僕のイメージするミァハではまったく無かった。沢城みゆきがミァハであったなら、こんな違和感を感じなかったかもしれない。もっとセリフに重力を感じたかった。何処となく風情が似ているパトレイバーの劇場版第2作目が成立したのだって、竹中直人さんや根津甚八さんの渋い声があってこそだった。無益と分かって居ても、「もし押井守が撮っていたら」と考えてしまう自分が愚かしい。





こんなことならいっそドラマCDの方が良かったと思うほど、僕の思い描くハーモニーでは無かったけれど、所々良い作画が見れた(多脚車両の動きや、残虐描写の質感など)し、”なかむらたかし”監督作品らしい不安感を煽る音の扱いも上手く、個々の仕事は良く出来ていたからこそ、”ハーモニー”(調和)であるはずなのに”ディソナンス”(不協和音)に終わったことが残念でならない。

後からあーでもないこーでも無いと言うのは僕の悪い癖だが、そもそも治りそうに無い病を抱えた伊藤計劃氏の鬱々とした感情が根底で静かに燃えている作品の映像化自体無茶だったというのもある気がした。1人の脳から滔々と溢れ出た、百合であって百合で無く、露悪趣味な一面が有りつつも全体的に詩的な味わいというやつを完全に映像で再現するだなんて、作者本人にも無理に違いない。


もし伊藤計劃さんがまだ生きていてハーモニーのアニメ化を見たとしたら、制作陣にクレームの一つも入れるだろうか?それとも自作の粗を見つけて嘆くだろうか?

いや、そもそも伊藤計劃さんは死して完成した作家でもあるし、こんな劇場アニメの計画も存在しなかったかもしれない。伊藤計劃さんをより多くの人に知って貰えただけでも意義はあったことでしょう。本当にまだまだ作品を輩出して欲しい作家さんでした....








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posted by lain at 07:22北海道 ☔Comment(0)アニメ

焼け野原に残った心「野火」塚本晋也(監督)/BD/感想

もしかするとアメリカの大統領になってしまうかもしれない男が、在日米軍の在り方についてケチを付けるなど、いよいよアメリカの手から離れご近所の国との付き合い方や自前の軍隊による自衛への道を模索しなければならない時が来ている日本ですが、闇雲に法整備を行い武器や自衛意識を育てても悪戯に命を粗末にするだけであるし、まずは戦争を起こさないために何をすれば良いのか?と、本心から思えるような"体験"が戦場を知らない僕らには必要な気がする。

ただ一言に”体験”と言っても、実際に戦争状況を作り出すのでは元も子も無い。もしかしたら将来的には本物の戦争でしか埋める事が出来なくなっているかもしれないが、幸か不幸か我々は被爆国という経歴と、本当の経験では無い物をさも本当の経験のように受け止めることが出来る豊富な想像力を持ち合わせている。実際に誰かの命を奪わずとも、人殺しと呼ばれるリスクを想像することで無用な経験を回避出来るように、戦争だって起こす前にちゃんと考える事が出来れば避けられるはずなのだ。

ところが、昨今そうした戦争に対する嫌悪感を煽るようなオカズがまるで足りていない。映画やアニメ、書籍に至るまでいつの間にか自分だけは綺麗なままという都合の良い陶酔を売りにした物で溢れていた。しかもそれらが軒並み大ヒットしていたりするからやり切れない。最早誰も苦い薬を飲みたく無いかのようである。口当たりの優しい嘘に逃避し、口先だけ好戦的な人も居れば、虎の威を借る狐と揶揄される事に腹を立て、自国の実力を過剰に見積もり"緑の人達"に今こそ給料分の働きをさせようと躍起になっている人も居る。なんだか今の日本は誰彼構わず戦いたくて仕方ないように感じて落ち着かない。



 内臓から嗚咽が溢れ出て来るような後味の悪さを植え付けてくれる”塚本晋也”版「野火」の鑑賞をいっそ国民に義務付けて欲しいくらい戦争が風化して行くのが怖い。けして塚本晋也監督の熱意に絆されただけでは無く、僕の実感として戦争の痛みがこのまま麻痺してしまうのは絶対駄目だと思うのだ。

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肺を患い戦場をたらい回しにされる主人公

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罪深い人間達も、自然の一部だと感じるカットが実に多い


 
 「野火」の主人公は地獄のような場所から敵国の温情により生き残るが、甘っちょろい陶酔さえ許され無い心傷も残ってしまう。苦しみ、悲しみ、怒り、様々な想いが入り混じった渇望が彼を襲い、一言の言い訳も語りも無く自らを苛む”儀式”で映画は終わる。涙を一切赦さない物凄い映画だった。この映画を観て数ヶ月は他の映画を劇場で観る気にならなかった。

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生に振り回される人・人・人...





 個人主義が台頭し、自分を褒めてくれる人ばかりを求める今の時代では、こうしたストイックな内容はしんどいだけで見たくも無いと言われてしまうに違い無いが、一見に思える物ほど自分の為になることが多いのも世の常だ。同じ様な風景ばかりを眺めず、様々な人達の想いに触れてみて欲しい。それから戦争という物の扱いについて考えても遅くは無いことだろう。



約1時間に渡り塚本晋也監督が製作の裏側を語るBD特典のドキュメンタリーに至るまで隅々鑑賞して、改めて人が人を殺す状況にだけはしてはならないと思った。

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posted by lain at 07:28北海道 ☔Comment(0)映画