銀の銃弾が二人をわかつまで「月刊flowers(フラワーズ) 2016年 07 月号」萩尾望都/感想

 『40年ぶりに続編登場!』

そんな見出しを付けさせる事が出来るだけで凄い話だが、本当に凄いのはまだこれだけ描けるという事だ。素晴らしい。

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僕は初め萩尾さんの絵が苦手だった。少女漫画は子供の頃から読んでいたし、中学の頃には”高河ゆん”さんの「源氏」で腐れと言う物がこの世にはあって案外良い物だと知ってもいたから、別段障害となる要素は無かった気もするが、何故か受け付けなかった。

ところが状況は一変する。きっかけは「11人いる!」のアニメ版で、宇宙船という閉鎖空間で繰り広げられるあっと驚く展開と中性的なフロルの魅力にハマった(ED曲を歌っている方が男性と知って後に物凄く驚いた)のを足掛かりに、”BSマンガ夜話”で取り上げられた「残酷な神が支配する」を読んでみたらどっぷり浸ることになって主人公であるジェルミ同様に心が病みそうになったりもした。そして、当然の流れで「トーマの心臓」「ポーの一族」も読まないわけにはいかなくなっていた。

作中の淀みなく流れる空気が、その時々によって感情豊かにテンポを変え襲い掛かる様は実に詩的で美しく、まさしくウットリさせられた.....

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そんな風に好きに"なった"萩尾望都さんの傑作である「ポーの一族」がまた読めると言うのは大変幸せな事。最近の萩尾さんの作品を読んでいないファンからすると、絵柄や間の取り方に違和感を感じてしまう面もあるようですが、以前のようには行かなくとも、今だから描けるポーになっているんじゃないかと僕は感じた。永遠の刻を生きるバンパネラ<吸血鬼>を扱ったポーなればこその復活劇であるし、今回は第二次大戦期の話になるとのことですが、いつか現代にエドガーが現れる瞬間も見てみたいとも思えた。

ポー復活はあまりの反響っぷりで、Amazonでは少女コミック雑誌売り上げNo.1で転売屋が値を吊り上げてもいるけれど、まだ書店に行けば手に入る可能性もあるので、一目エドガーとアランに逢いたいという方はお急ぎを。



まんまと転売屋というバンパネラの餌食にならないよう祈っています.....





posted by lain at 07:24北海道 ☔Comment(0)漫画

滅亡しなかった世界の遺児より、愛を求めて....『奇蹟の輝き(What Dreams May Come)』ヴィンセント・ウォード(監督)/ロビン・ウィリアムズ(主演)/1998年/感想

子供の頃、日がな一日”死”について考え、瞼を泣き腫らしていたことがある。

思い返せば、あれが初めて自身の死について自覚した時だった。


何故そこまで考えてしまったのかもよく覚えている。当時大好きだった学研の「ひみつシリーズ」(様々な分野を漫画で教えてくれる児童書)で”ノストラダムスの大予言”(1999年7の月に人類が滅亡するとしたもの)について書かれていたのを読んで、すっかりその気になってしまったのだ。


あと10年と少ししか残っていないだなんてあんまりだ!

 どうせ死ぬなら生きる意味なんてあるのだろうか? 

 そもそもなんで僕が死ななきゃならないんだ!


などと、止め処もなく落ち込んでいた。どうにかして予言が外れ無いものかと、ノストラダムスについて書かれた本を幾つか読んだ結果、どうやらこれは一部の人間が都合良く勝手に解釈しただけの物だと思えるようになったものの、内心は引き摺りつつ夢も希望も無い思春期を過ごしてしまい、今ではすっかり空っぽの人間になってしまった。逆に滅亡していた方が幸せだったのでは無いか?と考えることもある...





それにしても何故人は死を恐れるのか?誰も彼もが当たり前のように死んでいくのだから、自分だってそれが当たり前であるのに、その事実を受け容れるのは容易なことではない。そもそも受け容れられる瞬間が訪れるかどうかも一度死んでみるまで分からない。よく臨死体験について語っている人もいるが、結局死んでいない人の話だから真偽は定かでは無いし、やはりエネルギーの供給元である肉体を失えば、脳という器に篭った精神も失われると考えるのが普通なのだろう。僕は一度全身麻酔をかけられたことがあったが、その時は完全に無の状況になっていて臨死体験どころか夢すら見なかった。ただ麻酔から覚醒した瞬間が生まれたばかりの時の記憶(生まれた瞬間の記憶が自分にはある気がしている)に似ていたから、もしかすると死とはこういうものなのかもしれないなとは思った。

どうせなら楽園のような死後の世界が広がっていて欲しいけれど、どうやらそうも行かないようだし、年々言う事を聞かなくなってゆく身体に現実を思い知らされながら、この先どう生きて行こうか考えずにいられないことがつまらない。

せめて、この映画の主人公のように、絶望の中にあっても互いを思い遣れるパートナーがいれば良いのだろうが、そんなロマンスにもてんで縁が無い.....






ありえないような一目惚れをした男がそのまま結婚し、最愛の妻と少々気難しい思春期の子供達とで幸せな家庭を築くものの、事故で子供を二人共亡くしてしまう。なんとか立ち直るものの今度は自分が事故で死ぬ事になり、一人残してしまった妻の辛そうな姿に別れ告げ死後の世界へと彼は誘われて行く。

そこは自分の思い描いた楽園そのもので、思い通りに変えられる世界。男は美しい風景に全てを忘れそうになる。しかし其処へ妻が自殺し、"ここ"では無い地獄へ送られた事を知らされ、妻を救うべく男は地獄へと赴くことになる....


とても1998年に製作された映画とは思えないくらい違和感のないCGで、油彩画をそのまま動かしているような天国の風景が本当に美しかった。男が旅することになる地獄にしても、アメリカらしい物の残骸が印象深かい。丹波哲郎もこれくらい美しい「大霊界」を撮れていれば楽に成仏出来ただろうに.....

天国で娘と息子に再会し、過去の思い出が蘇って感情が爆発するシーンだけでも胸が熱くなるが、最後の最後に愛し合う二人が出逢いからやり直す所が最高に感動的だった。悪く聴こえるかもしれないが、道中の不幸のばら撒き方も上手い作品とも言える。つくづく柔和な表情に隠れた闇を感じるロビン・ウィリアムズにはこういう作品がピタッと収まるなぁと思った。彼も他界してしまったが、本作のような天国で一片の曇りも無い笑顔を浮かべ過ごせていたら幸いだ。いつか彼が自由に描いた天国へお邪魔してみたいものである。


それまでは生あることを喜べる生き方をしたいものだ.....






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posted by lain at 06:59北海道 ☔Comment(0)映画

オバマがドラクエで錦織セットポイント

昨日の日本は何かと熱い日だったろう。

昼間は日本の出戻り首相が消費税の増税を延期するというブレ具合を見せれば、G7で来日中だったバラク・オバマ大統領は自身がアメリカの大統領として最後にどうしても残したい足跡を広島に残し、夜になればケチな都知事や運転が下手な元AKBのことを吹き飛ばす勢いで錦織圭がヒリヒリするような死闘を演じていた。もう敗退が決まっていたトゥーロン国際大会のサッカーU23日本代表の試合まで観ていた人は、まだ今朝は夢の中かもしれない。




そんな濃厚な1日だった5月27日は、ドラゴンクエストの1作目が発売になった日でもあり、30周年という節目だったそうだ。ナンバリング作品としてはまだ10作しか無いものの、派生作品やリメイクがその倍以上作られ、様々な場所でドラクエのゲームや関連商品を見掛けるまでになったのだから30年の歴史は伊達ではない。

ただ残念なことに僕は正直ドラクエを語れるほど遊んでいない。初めて遊んだⅢは友達と一緒にクリアし、クリア後の特典で勇者を外した遊び人(女)四人でパーティを組んで全員賢者にするべく旅を続けたが、レベルが上がれば上がるほどおふざけが過ぎる遊び人に困り果てて放置した。唯一まともにハマって何度かクリアしたのがⅣで、章ごとに主人公が変わり、最終章で全員が集まり戦うという流れが当時のRPGとしては本当に新鮮で、モンスターと仲良くなったり、まさかの店番を愛妻弁当片手に続けなければならなかったり、何処か同情したくなるラスボスに至るまでとても楽しめた。

この流れならば、その後のⅤやⅥにもハマるはずなのに、先立つ物云々のこともあってⅤを友人に借りて中盤過ぎまで遊んだ後(そろそろ返せと言われ泣く泣く返却したのも良い思い出)はまったくドラクエには触れることが無くなってしまった。毎週読まずにいられなかったジャンプを断った時のようにドラクエとすっぱりサヨナラしたのである。

今思えば勿体無いことをした気もする。あの時代の自分が遊んでこそ凄さや面白さを感じるというのがあるからだ。Ⅲにハマって1作目と2作目をファミコンで遊んだ時のことを思い出すと、今更プレイするのも躊躇われる。ゲームバランスやUIもそうだが、パスワードでバックアップを取る方式が非常に辛かった......(レトロゲームをある程度快適に遊ぶ機器がある現在なら話は違うが、今更感は拭えない)






全てのナンバリング作品を遊んでいる人もいれば、僕のようにピンポイントでハマった人も多いに違いないドラクエ。どう楽しむのも自由だし、遊ばないのも自由だ。今現在の僕は必要としていないが、いつかまたやりたくなるその時まで、傲ることなくシリーズが続いていて欲しい。

RPGが当たり前のようにお茶の間で遊べるようになったのも、ドラクエやその生みの親である堀井雄二さんの創作意欲を刺激したウィザードリィとウルティマの存在のお陰。僕らの"今"は多くの"昔"に支えられているのだと、染み染み思う記念日でありました。
posted by lain at 07:25北海道 ☔Comment(0)ゲーム