息継ぎも忘れて潜ってしまいたい....「深淵を歩くもの」小中千昭/徳間書店/感想

徳間が”デュアル文庫”を立ち上げたあの頃、2、3点気になる作品の一つだった本作。lainの小中千昭さんだと分かっていても、何故か買わずにスルーして「野望円舞曲」だけを手に取っていました。まだ”田中芳樹”氏の本ばかりの偏った読書をしていたせいかもしれない。その数年後買おう思った時には微妙に価格が高騰してなかなか手に入らなかった....

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 ”伊藤郁子”さんのイラストが可愛らしい表紙には、タイトルより大きく小中千昭と書かれてある。何処かでド派手に連載して来た長編では無く、細々と続けて来た短編であるし、脚本家としてはメジャーであっても、小説家としての知名度が低い小中さんを象徴した装丁なのだろう。

 「魔法使いTai!」で親しくなって伊藤さんに表紙を依頼したのでは無いかと思うが、内容は実に古典的なホラーでドロドロ。「稀人」の元ネタになった「部屋で飼っている女」は勿論のこと、病んだ主人公ばかりの短編一つ一つがあとひと手間加えるだけで映画化出来そうだった。 

ただ、これぞ小中千昭の本業といった趣きなので、淡白だがコンパクトによく纏まっている今のままでも下手に長編で書くよりホラーの見せ方が直に伝わって良いとも思う。小中ワールドは、あまり踏み込むと本当に精神を病んでしまいそうになるので、もうちょっとこの先を覗きたいくらいの距離感も悪く無いのかもしれない。

それにしても、巻末の”あとがき”までホラーな内容だったのには思わず顔がにやけてしまった。









 活字でしか刺激出来ないツボというのが僕らの身体にはあると思う。だが小中千昭作品から漂う得体も知れない感覚を活字だけで終わらせるのは本当に勿体無い。意味不明と言われても、小中さんのイメージ通りにアニメや実写で表現出来たなら、それこそ百人百通りの感想が生まれる作品に仕上がるはずだ。

 僕自身、いつまでもlainの亡霊に取り憑かれているから、こんなことを書いているだけなのかもしれないが、セリフや説明の多さに食傷気味になる最近の作品に触れていれば、自然と感覚だけが頼りの深淵を歩きたくなるというものである......










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posted by lain at 07:16北海道 ☔Comment(0)小説