思春期の生臭い黄金比「変身! 2巻」横山旬/感想

※ネタバレも含む






いつもお昼休みの合間に小説を読んでいるのだけど、昨日はうっかり本を忘れてしまった。

こういう時こそ電子書籍だなと思った僕は、すっかり失念していた"横山旬"さんの「変身!」の2巻を読むことにした。


お婆さんと2人暮らしのとある少年が、どんなものにも変身できてしまうと言う、タイトルそのままの漫画なのだが、少年の変身に対する拘りがとても細かく描かれている為、ぐいぐい引き込まれる。例えばカラスに変身するにしても、知識だけではうまく理解できないから、本物のカラスに弟子入りし、鶏と言うのは飛ぶのではなく浮かんでいるものなのだと本質を見極めるまでに至り、身も心もカラスになって残飯から屍肉までご馳走に見えて来るまで成り切ろうとするのだ。


自意識がぶっ飛んでしまうけれど無機物にだって変身出来るし、構造を事細かに理解すれば複雑な装置にもなれるのだから、こんな凄い才能があったら天狗になってしまいそうなものだけど、そこはそれ、思春期の少年らしい詰めの甘さがある主人公のため、毎度騒動を引き起こし大いに笑わせてくれる。唯一変身後の彼を彼だと認識出来るヒロインの尻に敷かれているのも相変わらずな2巻だった。駄目駄目な旦那と、懐の広い肝っ玉女房の夫婦漫才を読んでいるような節もある。

興味本位で色気ムンムンの女性に変身しても肝心な場所は見たこと無いから不完全だったり、気落ちして帰宅したらうっかりサグラダファミリアに変身してしまうし、どんどん彼の変身能力が周囲にバレそうになって来た所で、人外や怪しい組織の臭いがして来る辺りの新展開も見逃せない。



人間として心身共に1番変化する時期である思春期は、まさに変身の季節であります。苦いことも甘いことも全部が糧になる。僕には縁が無かったエッチな青春にも有りつけた主人公にはちょっぴり嫉妬してしまうけれど。

ポジティブな人は何度でも青春は取り戻せると言うかもしれないが、僕はそう思えない。取り戻せない一瞬一瞬だからこそ失ってから恋い焦がれたり、大事な想い出として残り続けるのだと思うからだ。悔いは残すより残さない方が良いに違い無い。でも、最初から全て思い通りに行くなら誰も苦労はしないのであります。



僕は後悔し通しの人生ですが、それはそれで味わい深い物もある。思春期で変身出来た人、出来なかった人、違いはあれど正解は無い。生きるってそういう事で良いんじゃないでしょうかね?







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posted by lain at 09:23北海道 ☔Comment(0)漫画

プリキュアからプリキュアへ伝説は続く....「Go!プリンセスプリキュア」東映アニメーション/感想

僕は夢も希望も無い中年であります。それなりに長い人生を振り返っても、夢と呼べるような代物も持ち合わせたことだって無い。

だから最初に主人公が”プリンセス”になりたい少女であると知らされて、なんだそのぼんやりした夢は....と、今回のプリキュアは見るのを止めようとさえ思っていた。お嬢様学校でお高くとまる連中も微妙に鼻についてしまったし。

ところが、自分とは全然住む世界の違う、才能溢れる少女達に臆することなく、色んなことに挑戦して磨かれて行く”春野はるか”や、恵まれた境遇にあっても努力を惜しまない”海藤みなみ”と”天ノ川 きらら”の一途さに触れているうちに、そんなゲスい考えは消え去り、実に女の子らしい夢に溢れた良いプリキュアだと思うようになっていました。

なにより、終盤になっていきなり壮大な愛を語りだすようなプリキュアと違い、最後まで自分と仲間達の夢の為に絶望と向かい合っていたのが素晴らしかった。大の大人でさえ到達出来ない大きな愛を子供が享受するなんて無理な話だし、至極個人的な行動原理に基づいて戦うプリンセスプリキュアは本当に自然に受け容れられる存在だったと思います。

最終回、「夢も絶望も、その両方が私を育ててくれた」と口にするフローラの晴れやかな表情はとても素敵だった。最後に立ちはだかったクローズも、きっと優し過ぎるが故に絶望を深めてしまったのだろうと思わせる良い引き際でグッと来る。常に綺麗な作画であったけれど、終盤の数話の作画は劇場版さながらであったから感動もひとしおで、最後の最後で異世界物のお約束のお別れが待っていた時には泣けました.....

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 そんな近年稀に見る良い出来のプリキュアが終わり、始まったのが『魔法つかいプリキュア』

 タイトルに漢字が入るのは初めてだし、元々変身物だから魔法を使っているようなものなのに、あえて今魔法使いをテーマにした理由が知りたい。

 昨年ブレイクした高橋李依と堀江由衣がタッグを組んで今の所進んでいるけれど、高橋の元気さと、ほっちゃんの安定感のギャップがちょっと目立った1話だったように思う。歳のせいかもしれないが、世界観に入り難い唐突な導入であったし、変身後の姿が大きなお友達に媚びたデザインなのも、プリンセスプリキュアに比べ不安が残る。"キュアップ・ラパパ〜♪"と言う呪文で視聴者を上手く魅了出来るのだろうか?



 一つだけ確かなことは、今回もマスコットが一番可愛いと言うことだろう🐻

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posted by lain at 06:57北海道 ☔Comment(0)アニメ

呑気な人類の背を押す神の手「魔法の色を知っているか?」森博嗣(著)/講談社/感想

※ネタバレ感想文





 出不精のくせに、「オデッセイ」のようなSF映画が上映されれば、自分に鞭を打ってでも観に行くくらいSFが大好きな僕ですが、科学は昔から苦手であります。大まかな概要は理解出来ても、何がどうしてそうなるのか?という詳細や、一つ一つの分野の繋がりを理解する事がほとんど出来ない。というかする気にならない。


 だがそんな僕でも、今回の森さんの人間は不完全故に子を成すことが出来たとする斬新な設定には驚かされた。純粋な細胞を移植することが出来るようになって、不具合が修正されたから子供を作ることが出来なくなったと言うのだから...



 元々生物は種の保存を目的とした繁殖を繰り返し、地球と言う環境下に順応する為変化し続けて来た。人間も世代を重ねる度、どんどん寿命を延ばし、世界的な平均値は1千年前と比べて約3倍にも及ぶ。身体的変化もあるだろうけれど、おそらくは安定した社会構築と医療の進歩が大きな理由に違い無い。実際、治安の安定しない土地や、医療の整わない後進国ではガクンと寿命が落ち込んでいる。話が逸れたが、要するに言いたいのは、生まれて死ぬのが一番自然な生命の在り方だと、僕を含めた大勢が信じて来たものを全てひっくり返す学説であったということ。


 いつか死ぬのだから何かを成したい。子を残したい。そう感じるからこそ、僕らは必死に足掻いていると言うのに、100年も200年も生きられるようになったとしたら、子を成すかどうか以前に、生き続けること自体に意味を見いだせるのだろうか?死を受け入れるには長い時間が必要であるし、出来れば永遠に生きていたいなんて考える人も多いでしょうが、生と死こそ生物の行動原理を支える最大の友人なのでは無いかと思えてなりません。


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 とは言いつつも何処か腑に落ちてしまうこの突飛な設定。僕はなんとなく、森博嗣さんなりの少子化に対する答えなのでは無いかと思っています。結婚すること。子供を作ること。それらはすべて各々の考え方があるから尊重すべきではあるけれど、家庭を持ったり子供が出来るというのは、それはそれで得難い体験なのですよ、と言う人生の先輩からの有難い言葉に感じてしまうのだ。


 身体だけではなく、いつまでも普遍と思われた愛の形までどんどん変貌しているのを実感する今、この先100年、200年と経った時、この世界がどうなっているかなんて、分かったものじゃないなとしみじみ思います。

 一つの独立したSFとしても面白いし、S&Mシリーズと百年シリーズを繋ぐ(真賀田四季以外定かでは無い)物語として読むにも最高の同シリーズ。真賀田四季の目的の謎や、軽口の主人公と無口な護衛の静かなやり取りも森博嗣さんらしさがあって本当にお気に入りの一つになりそうだ。



 それはそうと、本の間に挟まっていたチラシにアニメ版「すべてがFになる」のBOXを購入したら、アニメを担当した神戸守監督と森博嗣さんのメールのやり取りが存分に楽しめるらしい話にも興味が湧いてしまった。


 BOX、買おうかな?......













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 『手にした途端腐りだす美の正体「彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?」森博嗣(著)/講談社/感想
posted by lain at 22:24北海道 ☔小説