誰がユダを殺したのか?「花とアリス殺人事件」道満晴明(漫画)/岩井俊二(原作)/小学館

 これもある種の”アリスシンドローム”なんじゃ無いかと思うほど、表紙に”アリス”と入っている作品にはつい目が行ってしまうもので、実際に中身を確かめたら「なーんだ」と、がっかりすることも日常茶飯事。

 あの岩井俊二さんが初めて手掛けた長編アニメ「花とアリス殺人事件」にも当然目が向いたものの、いくら実写畑で名監督だからと言って、アニメでそこまで手腕を振るえるのだろうか?と懐疑的に考えていた。元々、観よう観ようと思いつつ、「スワロウテイル」と「リリイ・シュシュのすべて」しか岩井俊二さんの映画を観ていないから、尚更そう感じるのかもしれない。だから、そのうち機会があればと、今度もなるはずだったのだ。

 ところが、そんな折に書店の新刊コーナーで、しばし燻っている(2、3週間背表紙陳列されていた)のがどうしても気になってしまい、久しぶりの道満晴明ついでだと花とアリス殺人事件のコミカライズを手にとってしまったのが運の尽き、これは原作であるアニメ版を見ずには居られないぞと思ってしまった....


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 物語は、とある学校の、とある女生徒がクラスメイトから必要以上に避けられている風景から始まる。彼女の筆記用具が床に転がれば、その先に居た生徒達は机ごと逃げ惑い、体育で組み分けがあれば、どんな人数での組み合わせだろうと女生徒は独りきり。

 まるで理由が分からない女生徒は、自分が座ることになった席に、昨年まで座っていた少年が殺されたこと、そしてそれ以来、その席に座った者は死んだ少年に呪われると言う噂があることを知る。
 女生徒は、そんな呪い話を逆手に取り、なんとか呪いの席から逃れるのだが、そこに間の悪い転校生がやって来て、まんまと呪いの席に収まり、極め付けは引っ越して来た家が殺された少年が住んでいた家だったというオマケ付きである。

 だがそんな事態にまったく動じない二人目の呪われし少女。殺された少年の幼馴染で、事件後不登校になっているお向かいの少女と、彼を殺した犯人探しを始めることに....


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 わりと自由なコミカライズ!などと帯に書かれている通り、原作であるアニメ映画を観ていなくとも、これは絶対”道満晴明”氏の悪ノリだと思う部分が多々あって、奔放な登場人物達がどいつもこいつも魅力的でした。

 最初にハブられることになる少女”陸奥睦美”が、同じ境遇に陥った"有栖川徹子"と打ち解けるシーンや、殺された少年”湯田”の幼馴染で不登校中の”荒井花”の家に有栖川が入り込んだ時の異次元表現が心理描写としてとても上手く機能していて面白いし、厨二で百合な要素も見逃せない。殺人がどうのと言っているくせに、肩の力が絶妙に抜けた馬鹿馬鹿しさで事件の真相に近付いて行き、実は湯田が......だったというように、2重3重にドラマが構成されているのがまた良かった。


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ちょいちょい挟まれるギャグの匙加減が最高
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このだらしない座り方、なんか好き






 もう兎に角、あまりにも一冊の漫画としてまとまっているので、一体原作とどれだけ違うのか想像出来ないのがむず痒くて仕方ない。本命がいながらも、複数の少女達に婚姻届を渡した湯田の真意や、呪いがきっかけで繋がった少女達のその後も気になるし、原作映画も観たいが、時系列的に本作の続きを描いている実写前作「花とアリス」も観たくなった。

 明後日の12月6日日本映画専門チャンネルでは「花とアリス殺人事件」がちょうど放送されるため、気持ちが途切れることなく鑑賞出来そうで嬉しい限りだ。










posted by lain at 07:00北海道 ☔Comment(0)漫画