僕らは自分達”人間”のことを、どれだけ知っているだろう?
哺乳類で、二足歩行で、戦争が大好きで大嫌いで、癌細胞みたいに宿主を殺すまで増殖を止めない生き物だ
熱心に授業を聴いていない生徒でも、普通に生きていればこれくらいの認識に辿り着いているだろうか?
でも、そんなことは何千年も前から分かり切っていることであって、今更どうということもないし、第一、面白くない。
どうせなら真偽もさだかじゃない、人間の知られざる姿とやら触れてみたいものである。
その方がよほど浪漫があって生きるのが愉しくなるというものだ....
後見人だと名乗り出た弁護士に、亡き母の財産相続の条件であると言われ、怪しげな超心理学研究所に勤めだした主人公の"雨宮瀑"の前で、自分に瓜二つな男が飛び降り自殺。その男が双子と判明したうえ、男と自分の頭の中には脳が無いと知らされる....
久しぶりに星野さんの漫画を手に取ったが、超心理学研究所が調査する怪事件と、主人公自身の正体を巡り謎が謎を呼んで行く展開が実に不気味で面白かった。
科学で立証するのがなかなかに難しい超常現象を検知して見せる機器の存在や理論にぐいぐい惹きつけられる。実際に研究されている人間の脳と量子の関わり合いを題材にしているからこその吸引力かもしれない。
"人間の心が現実を変える"
"人間の意識はエネルギーの塊だ"
精神論として、そういうのはあるだろうと感じていても、それらを科学的に分析しようとは思わない辺り、僕は普通の人間だと思った。言われてみれば、自分達に知覚出来ないからといって、絶対に無いと言い切れない話ではある。
ただ、こんな事まで科学で具体的に証明出来るようになって行くのは、凄いことだし面白いものの、それこそ謎に思えるグレーな世界が存在していないと、いつかサイエンス・フィクションが死に絶え、こんなに面白い漫画も読めなくなりそうだと考えてもしまう。
まあ、あと何百年何千年経とうとも、人間と宇宙の謎が全て明るみに出るなんてことは無いに違いないけれど、自分が科学で丸裸にされる時代がもしも来たら、自殺者の数が今の比では無いことになりそうで怖い話だ...