今ではすっかりやさぐれてしまった僕にも、可愛い(?)子供時代はあって、空を飛んだり、かめはめ波撃ったり、水を被ったら女の子になったり出来る、架空の世界の人間と同じようなことが実際に出来るんじゃないかと心の何処かで考えていたものです。
自分とは違う何かに変わる、すなわち”変身”に酷く憧れていた僕は、ただ妄想しているだけでは叶う物など何も無いと言うことを自覚するのが遅すぎました。
そんな僕だから、自分から変身する為に必要なことを熱心に勉強する本作の主人公は非常に眩しかった。
ど直球なタイトルに古風さまで感じる表紙が目を惹く
夜な夜な河原で熱心に変身の練習をしていた”東島ヒデ”は、同じクラスの”矢羽田マリ”にその現場を目撃され、秘密にしてもらう代わり何にでも変身してみせると約束してしまい、あれになれこれになれとマリのオモチャにされてしまう。
まんざらでも無いヒデくん
このマリという少女がまた性悪で、約束したくせに速攻でバラすし、我が儘放題でヒデを振り回すんですけど、いざとなると本当に真剣にヒデを想っているのが伝わるから、ヒデもついつい気を許していくんですよね。この飴と鞭のバランスは最高過ぎます。あえてヒロインを崩して不細工にする辺りも愉快だ。
クラスで虐められているヒデの悟り方がかっこいい....
こんなに可愛い笑顔を見せるくせに
この仕打ち
幼少期から思春期へと進み二人の関係がハッキリと男と女になっていく過程を見てるのもとても楽しいし、しっかりと変身までのプロセスやその後を描いていることが一番本作の魅力かもしれません。質量は上手く増やせないとか、無機物に変身するのは難しいとか、極端に構造の違う物に変身すると元に戻りにくいだとか、あまりに生き物を研究し過ぎて、変身した生き物そのものに頭の中身がなってしまったりするのも面白い。SF小説好きにはたまらない内容ではなかろうか?
彼のうんちくを聞いていたら自分も変身出来るような気になってくる
中途半端に人体に戻るとキモい
バッタに変身したヒデの童貞は......
とにかく変身は大変そうだ。
でも、だからこそのワクワクもぎっしり詰まっていそうでもある。
この本を読んで、自分も変身する為に勉強するぞ!って、妄想で終わらない夢を子供達が見れたら素敵ですね。