科学に切り刻まれ、人間は何処へ行く?「レインマン」星野之宣/小学館/感想

僕らは自分達”人間”のことを、どれだけ知っているだろう?

哺乳類で、二足歩行で、戦争が大好きで大嫌いで、癌細胞みたいに宿主を殺すまで増殖を止めない生き物だ

熱心に授業を聴いていない生徒でも、普通に生きていればこれくらいの認識に辿り着いているだろうか?


でも、そんなことは何千年も前から分かり切っていることであって、今更どうということもないし、第一、面白くない。

どうせなら真偽もさだかじゃない、人間の知られざる姿とやら触れてみたいものである。

その方がよほど浪漫があって生きるのが愉しくなるというものだ....



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 後見人だと名乗り出た弁護士に、亡き母の財産相続の条件であると言われ、怪しげな超心理学研究所に勤めだした主人公の"雨宮瀑"の前で、自分に瓜二つな男が飛び降り自殺。その男が双子と判明したうえ、男と自分の頭の中には脳が無いと知らされる....




久しぶりに星野さんの漫画を手に取ったが、超心理学研究所が調査する怪事件と、主人公自身の正体を巡り謎が謎を呼んで行く展開が実に不気味で面白かった。

科学で立証するのがなかなかに難しい超常現象を検知して見せる機器の存在や理論にぐいぐい惹きつけられる。実際に研究されている人間の脳と量子の関わり合いを題材にしているからこその吸引力かもしれない。

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"人間の心が現実を変える"

"人間の意識はエネルギーの塊だ"


精神論として、そういうのはあるだろうと感じていても、それらを科学的に分析しようとは思わない辺り、僕は普通の人間だと思った。言われてみれば、自分達に知覚出来ないからといって、絶対に無いと言い切れない話ではある。

ただ、こんな事まで科学で具体的に証明出来るようになって行くのは、凄いことだし面白いものの、それこそ謎に思えるグレーな世界が存在していないと、いつかサイエンス・フィクションが死に絶え、こんなに面白い漫画も読めなくなりそうだと考えてもしまう。

まあ、あと何百年何千年経とうとも、人間と宇宙の謎が全て明るみに出るなんてことは無いに違いないけれど、自分が科学で丸裸にされる時代がもしも来たら、自殺者の数が今の比では無いことになりそうで怖い話だ...









posted by lain at 07:04北海道 ☔Comment(0)漫画

異形に萌ゆる霜月の朝「シドニアの騎士 15巻(完)」弐瓶勉/講談社

後にも先にも、こんな生々しい造形なのに萌えてしまう漫画は出て来ないのではなかろうか?などと、軽々しく口にしても過言では無い”シドニアの騎士”が終わった、実に寂しくも嬉しい気分である。

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「BLAME!」を本屋で見つけた時の衝撃が完全に和らいだ時期に、風の噂で存在を知った「シドニアの騎士」

いつの間に新連載を始めていたんだとチェックしてみれば、まさかのラブコメまで搭載したロボット物で本当に驚いた。絵柄も相当見易くリファインされていたから、これまでの弐瓶勉さんによるガチガチのSF臭が好きだった人は、この時点で相当脱落したに違い無い。僕も当然戸惑いはした。主人公が一言も話さずクールに旅をする「BLAME!」や、未知のウィルスの脅威に晒される人類の闘いを描いた「バイオメガ」のようなハードSFに惚れ込んだ口だからだ。

だが僕の場合、弐瓶勉さんのギャグと萌えがいかに美味であるかということは、シドニアにも登場する人語を話す熊や、殺伐とした世界に生まれた愛らしい幼女”フニペーロ”が登場するバイオメガで知っていたから、氏の新しいチャレンジに直ぐ順応して夢中になった。幾ら戦場以外では間抜けでモテモテな男が主人公で、一癖も二癖もあるヒロインが大勢出て来ようとも、ハードな世界感はしっかりとこれまでの弐瓶勉ワールドを踏襲していたし、むしろ萌えのおかげで、これまでの作品では出せなかった喪失感をシドニアでは描けていたのでは無いだろうか?


どうでも良いが、今回こうして可愛らしいキャラを沢山登場させたこと、本人は相当照れ臭いかったんじゃないかと思う。好きな人が出来るまで性別が定まらない子や、良い雰囲気になった途端退場の憂き目にあった王道ヒロイン、戦う為大量に造られたクローン少女達、怒ると怖い姿に変形するロボ子などなど、巻を追うごとに普通とは無縁の女の子が増えていったし、ギャグでキャラをわざと壊したり、人間では無いヒロイン”つむぎ”が一番可愛く描かれているのを見ていると、作者の捻れた変愛っぷりが痛いほど伝わって来た。何故にシドニアが面白いのかと考えた時、この変な愛情表現こそ隠し味なのでは?と思えてくる。


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愛らしさと対照的な物もしっかり描いているから、相乗効果でどちらも魅力的に感じてしまう。
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この変化をNoと言う人がいるのは仕方無いけれど、僕は上手く手を抜き、あざとさを効果的に発揮して描くようになった弐瓶さんの今のスタイルも好きだ。変わらない者に先は無いし、俺にだってロボや萌えは出来る!と証明してみせて弐瓶勉は漢だと思う。

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※描き込みは多いが、昔ほど無駄に線が入っていない。



つい先頃、55話を以って最終回を迎えてしまったWebラジオに続き、単行本も最終巻を迎えたけれど、果たしてアニメは3期の放送、もしくは劇場版で完結まで行ってくれるのか、ちょっぴり心配しつつ余韻に耽る朝である。




にしても、この濾過液保存容器何に使おうか?

黄色い液体でも入れて飲めば正解なのか?.....ゴクリ

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posted by lain at 06:51北海道 ☔Comment(0)漫画

いやいや、僕も負けてませんよ「俺は性格が悪い。」四宮しの/茜新社/BL/感想

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背が小さくて服もキャラもゆるめ。
リア充どもからイジメられる犬塚は、特に反抗しないけども気分はよくないので、
ひっそり心のなかで毒吐く日々。
そんな内弁慶の犬塚と仲良くしてくれる森田は、変にイジってこないので日々を
穏やかに過ごしていた。
しかし、ある日ちょっとした悩みを話したことをきっかけに、森田の実はアレな
性格を垣間見ることになり…。

裏表紙あらすじより



何かにつけて捻くれている、どんより眼の主人公"犬塚"が、自分に都合の良い友達のはずのメガネのイケメンオタク"森田"に好かれていることを身をもって尻、まんまとノンケの道から転げ落ち、おホモ達が出来てから広がった人脈も、総じてホモばかりと言う展開に『類友にもほどがあるだろ!』と、うっかり突っ込んで♂しまいたくなる漫画でした。

最初に主人公がホルモンバランスを崩して胸が膨らんでいるという設定があるため、脳内も若干女性化しているかもしれないと考えられなくも無いが、いかんせん簡単にホモの魔の手に堕ちる主人公を見ていると、どうしても作者の女としてのコンプレックスが反映されているような気がしてならない。

"犬塚"の小さな胸の膨らみを揉んで「女子にキョーミないよ」と口にする森田のセリフが、僕には「胸の大きい子にキョーミないよ」と見えて来るのは、穿った物の見方なのだろうか?

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他にも森田達を取り巻く人々である自分がホモである事を恥じて酒に溺れた経験のある先輩と、その先輩を健気に支えるぶっきら棒な青年のやり取りにしても、まるで駄目駄目な生活習慣を送る自分の世話を見てくれるイケメンとのイチャコラ生活を想像して描かれた物では無いか?と思えてしまう。自分はグズで駄目駄目で大嫌いで、でも、そんな自分を好きだと言ってくれる人がいたら、自分を少しは好きになれるような気がする←そういった想いから生まれた男達に見えてしまうのだ。



ある意味、このタイトルは逃げなのではなかろうか?自分の性格が悪いと自分で分かっているのだから問題ないでしょ?もしもこんな私の懐に入り込んで傷ついたとしても、それはあなたの責任よ!と突き放しているようでもある。しかも、こんな自分でも良いと言ってくれる優しい人募集中という都合の良い話だ。逆に甘やかしたい人の妄想だったとしても、それはそれで救い難い....


しかし、そんな都合のいい話だからこそ、登場人物達のことが気になってしまう作品でもある。何を隠そう僕も駄目な人間だからだろう。僕の場合、優しくしてくれるのは女性の方が嬉しいのだが、彼等の捻くれた愛情話は、異性であれ同性あれ、普通に共感出来る話であるし、ここでこうされたら、こう言われたら、を、ここぞとばかり出せている辺り、女性漫画家らしい上手さが光っている。

性描写が巻末まで弱いのも男としては読み易かったし、主人公の見てくれが女の子女の子してないのも良かった気がする。

もう少しだけ、痴情の醜さを言い表す為の"性格が悪い。"ではなく、より自然な同性愛の中で浮き彫りとなる人としての弱さを表す"性格が悪い。"であったなら、ジャケ買い読者である僕の満足度は格段に上がったかもしれません。




きっとこの本の主人公より、僕の方が性格悪いですねζ*'ヮ')ζ







四宮しの公式HP spilla
posted by lain at 07:08北海道 ☔Comment(0)漫画