うつのみこ日誌 壱

 楽しく休みを満喫していても、何かの拍子に思い出してしまう宿題のように心残りだった”藤川桂介”さんの「宇宙皇子」を今度こそ本腰を入れて読むことに決めた。


 あれはそう、僕が中学生の頃だったろうか?二人いる姉のうち、上の姉の本棚で見つけたのが最初の出会いだった気がする。

 ユニコーンのような角を生やした青年の精悍な出で立ちが光るイラスト(当時は”いのまたむつみ”さんとかまったく知らない)に、どんな本なんだろう?とぼんやりと惹かれていた。


 それから1、2年が経ち、その姉が大学進学を決めて家を出て行くこととなり、その際「バリバリ伝説」と一緒に「宇宙皇子」も譲り受け、当時読書に目覚めたばかりだったからとても夢中になった。

 宇宙皇子は、角の生えている少年が周りに迫害されながらも己の出生の意味を探しつつ、人間社会の構造や天上世界の在り方にまで意味を問い続けるという壮大な内容で、ヒロイックファンタジーでありながら遠大な遠回しとでも言うべき社会派作品でもありました。物語の背景となる政治的に不安定な飛鳥時代に宇宙皇子が介入してゆく展開はとてもドラマチックだったなぁ...

 まだまだ見る物全てが新鮮に映る時期でもあったから、宇宙皇子は本当に楽しかった。時折朝廷の人達が誰が誰だか分からなくなってしまうこともあったけれど(飛鳥時代の偉い人達は名前が似ていたり、近親との複雑な夫婦・親子関係があるから相関関係が頭の中だけで整理し難い)ちょっとした歴史の勉強にもなった。案外この作品で歴女になった人もいるのかもしれない。




 以前は第3期”妖夢編”の序盤まで読んで何故か積んでいたけれど、今度こそ最後まで読みきりたい。

 ただ、全52巻と言う物量は果てしない。

 漫画でさえ大変な量なのに、小説でこの量はなかなかのものだ。



 去年30冊前後しか小説を読めていないことを考えると、今年中は無理かな?(・_・;

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宇宙皇子 地上編 復刊! http://spn-works.com/utsunomiko/
posted by lain at 07:01北海道 ☔Comment(0)小説

ハードボイルドというより、ソフトボイルドかもかも「暗闇・キッス・それだけで」森博嗣(著)/集英社

 僕は本を読む人間としては非常に偏っていて、更にその量も少ない。

 だから「これがハードボイルド!」と、いう定義は僕の中で一つしかありません。

 そう、亡き”打海文三”ティストです。



 具体的に打海文三さんの文の何処がハードボイルドなのか?と聞かれたら、直ぐには上手く言えないけれど、少なくとも余計なことはにしない、女子供相手でも時に冷淡になれる、格好つけたがる自分の愚かさを痛いほど理解してるような、救い難い、でも放っておけない魅力が満載な男達が主人公であるところは間違いなくハードボイルドだった思う。

 それに対して森博嗣さんだが、今回ハードボイルド作品「ゾラ・一撃・さようなら」の続編として刊行した「暗闇・キッス・それだけで」は、ハードボイルドと歌いながらもいつもの森博嗣節に収まったような気がする。




”大学在籍中にコンピュータのインタプリタを作製、休学してソフトウェア会社を創 業、1980年代にコンピュータ業界で不動の地位を築いた、IT史上の伝説的存在ウィ リアム・ベック。会長職を譲り、第一線から退いたウィリアムは現在、財団による 慈善事業に専念している。探偵兼ライターの頸城悦夫は、葉山書房の編集者兼女優 の水谷優衣から、ウィリアムの自伝を書く仕事を依頼され、日本の避暑地にある彼 の豪華な別荘に一週間、滞在することになった。そこにはウィリアムだけでなく、 その家族や知人、従業員などが滞在していた。
ところが、頸城が別荘に着いた後、思いもかけない事件が発生する。警察による 捜査が始まるが、なかなか手がかりをつかむことができない。そんな中、さらなる 悲劇が……。取材のために訪れた頸城は、ウィリアムの自伝執筆の傍ら、この不可 思議な殺人事件にも関わることになる。果たして、事件は解決できるのか。
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 何処か軽薄でマイペース、でもちょっぴり内に闇を抱えた主人公”頸城悦夫”より、スカイ・クロラの”カンナミ・ユーヒチ”の方がハードボイルドな奴に思えて来る。

 基本的に視野が狭いのがハードボイルド作品の主人公な気がします。コレしか生き方が無いと、別の選択肢に気づか無いのか気付きたく無いのか、一つだけ譲れ無い物の為に命を懸けようとするような男のことです。悦夫は残念ながら、かなり柔軟な男。これは森博嗣さん自身がそういう方だからと言うのが大きいのかもしれない。

 ただ、これはこれでハードボイルドなのかもしれないと思わなくもない。主人公の性格だけではなく、ストーリーの全体像を見るとぼんやりとそう思えて来ます。僕が知らないだけで、色んなハードボイルドが世の中にはあるでしょうしね。あまり「これだ」と決めてかかって本書を手に取らなければ、十分に森博嗣ワールドを楽しめる内容だと思います。




 兎に角今回の続編は間が開き過ぎたのが痛かった気がします。

 前作が7年前じゃ、ストーリーどころか登場人物でさえうろ覚えです。

 次はもっと早く出してくれるそうなので期待していましょう( =3=)v


暗闇キッス(*//ω//)




posted by lain at 06:31北海道 ☔小説

ヒッチコックの人となりを知りたいのならば、ドキュメントより彼の作品を直に観るが吉「ヒッチコック」サーシャ・ガヴァシ(監督)/アンソニー・ホプキンス(主演)

 ヒッチコックっていうと、自分の作品へ記号を振るみたいに自ら出演する監督として有名ですが、大人になってから彼の作品を観直したことが無いので、ほぼ内容はうろ覚え。

 だからこの映画「サイコ」の製作の裏側を描いとされる作品の随所に盛り込まれた小ネタに全然気付きませんでした。





 サイコ自体は映画好きの父親が観ているのを横で一緒に観ていたような気がする。バスルームでの惨殺シーンもよく覚えています。全体像はボヤけて思い出せないけれど....

 既に映画人として絶大な人気を誇っていたヒッチコックらしい悩み(作品の方向性、体調管理、奥さんとの擦れ違い)を抱えていた時期に、如何にして人間の異常な渇望を描いた「サイコ」を作ったのか?そこに着目しつつヒッチコック自身のことを映画にした本作。随所から一筋縄でいかない人物であることが伝わって来ます。覗き穴から衣装部屋の役者の様子を見ていたり、演技が下手なスタントに代わって自分が惨殺シーンを演じてみせたり、自分は女優に入れ込みまくっているくせに奥さんが他の男と共同で執筆しようとするのを嫌がる嫉妬深さを発揮したりするのだ。

 何かを成し遂げる人物。特に創作活動で名を上げる人たちの執着はあらゆる面に表れるものです。異常さを内に秘めた人物を演じさせたら流石の存在感である”アンソニー・ホプキンス”をヒッチコック役に抜擢したのは正解だったかもしれません。顔はお世辞にも似ていないですけどね。

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 この映画を観て改めて思ったのは、どんな偉人もたった一人で成し遂げられるものではないと言うこと。映画を撮ろうと思えば、役者もスタッフも機材も資産も必要になる。実際に起きた恐ろしい事件を元にした小説が原作と言うことで、出資もままならず(トイレで水を流すシーンでさえ不興を被る時代である)悪戦苦闘するヒッチコックが映画作りで心底必要としたのは、脚本家であり自分の作品の良き理解者である妻”アルマ・レヴィル”さんだったに違いない。

 ヒッチコック自身が正しい判断が出来なくなった時、妻としても映画人としても助言をくれる良きパートナーとしてこの映画では大活躍のアルマ。サイコとヒッチコックの裏の顔を描いた映画であるのと同時に、監督ばかりに注目が集まる業界の中で、彼女のような存在がどれだけ重要であるかを撮った作品でもありました。過激なシーンの取り扱いについて倫理委員会とやり合おうとしているヒッチコックに落ち着けと声を掛けたり、私財を抵当に入れてまで撮り始めたサイコが思うように行かず落胆している彼に鞭を入れたりする妻アルマを「第一容疑者」の”ヘレン・ミレン”が彼女らしく演っていたように思います。





 まだまだ保守的な社会であった当時のアメリカで、どれだけヒッチコックが異才であったことでしょう。逆境も自作品の特徴の一つになっているし、自作品のアピールの仕方も上手い。常に新しいこと、誰の手垢も付いていない発明をしたくて仕方ない人だったのでしょうね。自分を傍観者であるだけに留まらず、物語へ介入させたがる入れ込みようからも、彼の映画馬鹿っぷりが痛いほど伝わります。一歩間違えて映画に関わらない生き方をしていたら、エド・ゲインのような人生を送っていたのかもしれませんね。

 結末は知ってるけど、無性にサイコが観たくなる映画でありました。


posted by lain at 07:22北海道 ☔Comment(0)映画