犬好きには悪い奴は居ないって、ばっちゃんが言ってた「銀河英雄伝説 外伝|オーベルシュタイン編」舞台

数多の英雄が煌びやかに瞬いては散っていった銀河英雄伝説。

その中でも、泣きに泣いて惜しんだのはヤン・ウェンリーの死に他ならないが、昨日1月14日が誕生日であったジークフリード・キルヒアイスの死も、それに負けない衝撃的な出来事でした。



銀河英雄伝説は兎に角登場人物が死ぬ。戦争や政争について描いているのだから当然ではあるが、ファンが思い入れを感じている主役級の人物まで次々と死んで逝くから衝撃が大きいのだ。僕の影響でアニメの銀英伝を観るようになった友人などは、あまりにも主要人物に人死にが出るため、こいつはどんな死に方をするのだろうか?と、悪趣味に楽しんでいるような節さえあった。

ただし、ただテコ入れで奇をてらい殺しているわけでは無かったと思います。それなりの背景があって死に辿り着いていた気がします。その死を認めたくない、認めない!とファンが感じるのも、作者である田中芳樹氏が、ちゃんとファンに惜しいと思って貰えるだけのキャラ作りに余念が無かった証拠と言うものでしょう。

キルヒアイスにしても、皇帝に姉を奪われることとなるラインハルトと出会い、彼と共に彼女を奪還すべく打倒皇帝を胸に刻んでラインハルトと深い友情を育んで行く過程を嫌と言うほど見せられたがために、二人の友情にヒビが入った途端に訪れた悲劇にファンは慄いたわけです...




そんなキルヒアイスの死に、深く関わっていたのがパウル・フォン・オーベルシュタインでした。

先天性の障害で両目が義眼と言う彼は、自分の遺伝子を劣悪とみなす現体制を打ち砕いてくれそうなラインハルトの陣営へ政争のプロとして自らを売り込み、登用後は遺憾無くその冷徹な手腕を敵味方関係無く発揮した。

しかし、冷徹であるがゆえに人の心を軽視したオーベルシュタインは、No.2不要論をラインハルトに実践させ、式典にて常にラインハルトの傍で銃の携行を許されていたキルヒアイスの特権的立場の剥奪を行い、結果キルヒアイスは暗殺者との揉み合いで命を落とすことになってしまった。

これがただ単に凶弾に倒れただけの話であれば、これほどキルヒアイスの死を惜しいと思わなかったことでしょう。オーベルシュタインの進言により貴族連中の凶行を完全には防ごうとしなかったラインハルトとキルヒアイスとの間にギクシャクした空気が生まれて間も無く起きたことだからこそ、その死が重くのしかかることとなったのです。





その後も大勢の命を天秤にかけてラインハルトを覇王へと誘っていったオーベルシュタイン。やることはえげつないが、時折人間らしさを見せるから実に魅力的な人物でありました。見知らぬ犬を、自分の飼い犬だと勘違いされた時も、実際にその犬を飼うようになる辺り、無愛想な男の愛らしさが垣間見えて良いエピソードだった。

足掛け4年10作品に及ぶ舞台版銀英伝で、オーベルシュタインを主人公にした完全オリジナルストーリーがあるのですが、オーベルシュタインが何故その犬を可愛がるようになったかを、彼と彼の腹違いの兄(オリジナル要素)との愛憎劇で語る内容でなかなか面白かった。

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兄と一緒の時だけ柔らかい笑顔を見せるオーベルシュタイン

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オーベルシュタイン家の裏稼業を引き受けている兄

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貴水博之は普通に絵になる男だ

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赤毛の坊やもちょびっと出演





少しオーベルシュタインのイメージと違うようなウェットさもあるけれど、それについても上手く補足出来ていて、秀逸な銀英伝の同人誌を読んでいるような感じを受けました。

相変わらず貴水博之さんのオーベルシュタインは味があるし、舞台版は原作のセリフのイメージをしっかり踏襲しているから大きな違和感が無いのも良い。

演出面でも、過去話に切り替わる時、オーベルシュタインの両親が肖像画から登場したり、犬を伴って歩き去るオーベルシュタインの後ろ姿をスクリーンに投影しフェードアウトさせたりと凝っていて上手かった。

少しでも気になったなら、どうかDVDをチェックして頂きたい。銀英伝ファンなら必ず楽しめると思います♪

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どうやら今年も新たな公演が行われるようだし、まだまだ銀河英雄伝説は伝説のまま終わる気配は無さそうで喜ばしい限りだ。
そろそろ海外に進出して、全話ドラマ化してもらいたいですw





最後に、おなじみのアフタートークでオーベルシュタインの名台詞「そうか、私の犬に見えるか」を田中芳樹氏に向けて口にする貴水の図( = 3 =)
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posted by lain at 07:20北海道 ☔Comment(0)舞台

作り物でも戦争は辛い....「バリアント ハート ザ グレイト ウォー Valiant Hearts: The Great War」PS4/PS3

 僕にとっての世界大戦とは、日本が敗戦した戦争=第二次世界大戦のことになるが、きっとヨーロッパでは第一次世界大戦も含め大きな括りで記憶されているに違いない。



 近代化の大きな波が軍事面でも高まっていた1914年。こんがらがった国家関係に火が付いた戦争は否が応でも泥沼の様相を呈し、その後の第二次大戦までは行かなくとも、大勢の未亡人を作ることに成功。しかも戦後処理が中途半端だったために、第二次大戦の呼び水になった感も拭えない。ある意味、日本の運命を決めたのは第一次世界大戦だったのだ。



 最近の歴史の授業がどうなっているか知らないけれど、僕が子供の頃は兎に角第二次世界大戦のことばかり教師は話していた。核を2度も落とされ、国民のことを思いやって天皇陛下が勇気ある決断をなされた大戦であり、調子に乗りすぎたところはあるが、良い側面も沢山あった。そんな内容の話をしていたような気がする。僕には夢を叶え損なって、うだつが上がらないサラリーマンをしている中年オヤジの盛りに盛った似非美談にしか思えなかった。

 正直、歴史というか戦争の細かな時系列に僕は興味が無い。どこどこの国がこういう目的でこの国に攻め込み、この国が攻め込まれたからあっちの国はこっちの国に加勢しただのとか、ほんとどうでも良いのだ。戦争という極限状態を生み出した者達の精神状態や、それに翻弄された人々の営みにこそ僕は興味が有る。集団より個が気になるのだ。


 そういう点で言うと、Ubisoftの「バリアント ハート ザ グレイト ウォー」は最高にのめり込める作品だったと思います。



 娘婿であるカールがドイツに強制送還され、自身もフランス軍に徴兵されてしまって義理の息子を相手に戦う羽目になる男エミールが、戦場で出会った友人達と困難に立ち向かい、数奇な運命に翻弄される物語なのですが、ゲームらしい演出と素朴なタッチの絵が醸し出す物悲しさの取り合わせが良いうえ、雰囲気を抜群に盛り上げる音楽が駄目押しになり、最後の最後はボロボロ泣けてしまった....

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 基本は横スクロールで、途中から仲間になる犬を使ったパズル要素等を解いて進めるゲームなのだけど、音ゲーっぽくタイミングを合わせる場面もあれば、QTEや縦スクロールのカーチェイスゲームになることもある。様々な遊び心地が楽しめるから飽きずにプレイ出来るし、自力で攻略を発見した時の手応えも良いゲームです。もしもパズル要素で行き詰まっても、一定時間ごとにヒントを見ることが出来るのも親切だ。

 デモシーン以外はセリフらしいセリフも無いし、ほとんどジェスチャーで物事を伝えて来るゲームなので、ローカライズの配信が無いXbox勢は海外版を買うのも有りだと思います。



 家族を想い続ける中年兵士エミール

 私怨で戦い続けるアメリカ人志願兵フレディ

 妻子の待つ家へと命を賭して、ひた進むカール

 父親の帰りを待てず、看護師として戦地へ赴くアンナ

 そして、そんな彼らと共にあることを選んだ軍用犬ウォルトの物語.....

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 チャプターごとに簡単にまとめた史実を閲覧出来るので、歴史を改めて知るにも役に立つし、色んな側面から戦争の虚しさを体験させてくれる素晴らしい一本でした。

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posted by lain at 07:05北海道 ☔Comment(0)ゲーム

昔は良かっただなんて、言いたく無かったのに....「F1グランプリ/栄光の男たち」ドキュメンタリー/映画/1975年

F1
 あと二月もすれば開幕を迎えるF1グランプリですが、正直ここ数年あまり興味がありません。

 馴染みのドライバーが次々と引退し、マシンも人も様変わりしてしまった今、興味があるのは日本人ドライバーが乗るか乗らないかだけになってしまいました。

 そんなわずかな僕の希望を背負っている小林可夢偉にしても、今季のシートは絶望的で、来季のシートを狙って活動しているそうだ....



 歳を取っただなんて言われたく無いですけど、セナが居た頃の映像を見たり、僕がF1に興味を持つ以前に最速を争っていたニキ・ラウダとジェームス・ハントの映画「ラッシュ/プライドと友情」を観てる方が幸せを感じます。けして懐古主義ではありませんけどね(多分w)

 なんというか、人間が走らせてる感じがしないんですよ今のF1は。精密に電子制御されたマシンに乗り、スポンサーやチームのオーダーに応える形で仕事をしている。ただそれだけのドライバーが多すぎます。お金とか地位とか、そんな物は糞食らえなんですよ。ただ全身全霊で誰よりも速くチェッカー受けるためだけに生きてるぐらいの輩じゃないと熱くさせられません。

 人間の感性が入り込む余地の無い雁字搦めなグランプリでは、マシンやドライバーだけではなく、観戦してる僕らの楽しみ方まで縛られてしまっているのではなかろうか?




 1975年のF1ドキュメンタリー映画である「F1グランプリ/栄光の男たち」を観ると、それを顕著に感じました。命懸けであるが故に高揚しつつも、無為に生死を天秤にかけていることに葛藤しているドライバー達の姿からは憂いさえ漂っている。

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昔のおねぇさん達はちょっとケバいw
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2輪からの転向も珍しく無かったようだ。
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ギャランドゥアピール半端ないっ



 アップダウンでサスがふわっと浮き沈みするところや、カーブで大きくロールした状態でテールをスライドさせつつ曲がるところなんか見てると、マシンの躍動感をとても感じるし、コンピューターじゃなくてドライバーの技量がモノを言ってて痺れます。空力についてもまだまだ理解していない時代だから、バリバリ接近戦が出来ていたと言うし、それはそれは大層見応えがあったに違いない!

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 貴重な当時の映像と共に、F1の魅力と非情さが詰まっていたこの映画、副音声にオーディオコメンタリーが入っていて、フジのF1番組でお馴染みの今宮さんと森脇さんが当時のF1についてアレコレ話してくれてるのがまた面白かった。ぶっちゃけ僕が生まれる前で知らないドライバーばかりだから、今宮さん達の補足が無いとちんぷんかんぷんだったと思います。

 そんな中でも知ってる顔が出て来るとにやにやしましたがw

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右、フランク・ウィリアムズ。禿げてるけど若い凛々しいw
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40年以上前だけど、高度に練られた戦略を持ってて、本当に凄いドライバーだと関心してしまいましたジャッキー。




 荒削りで可能性に満ちあふれていた古き良き時代のF1。全てが個性的だからお客さんも実に楽しそう。行儀は悪いが、心底楽しんでいる顔顔顔で客席は埋め尽くされている。混沌、無秩序、それこそが無限に可能性を感じさせてくれる状態だったのです。

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 無論、秩序が無いところには安寧は訪れない。この時代はF1の長い歴史の中で、一番死亡事故の多い年代だ。先ほどのギャランドゥな青年も、非業と言うべき死に方を迎える。フランソワ・セベールと言う名のその若者に、後を託して引退しようと思っていたジャッキー・スチュワートの心情を思うと、居た堪れない気持ちでいっぱいになります....



 最速を目指すからにはアクシデントは絶対起きる。

 ただ自家用車の事故と同じで、起こしたくて起こす人は居ない....

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 マシンが大破しただけなら「金」でなんとか出来る。けれど人間の命は買い戻すことなど不可能だ。


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 命が散る中でも勝者が生まれるF1。

 流石にこの炎上事故後は批判が殺到したそうですが、これほど過酷であったからこそ胸を打つ存在足りえたのは間違いない。

 まさか70年代に戻れとは言えませんが、政治的なことばかりに夢中になって、純粋に速さを求めることをおざなりにするのだけは止めて欲しい。

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 アロンソやシューマッハが暴れん坊だった若き日って、実はあんまり好きじゃなかったけれど、今思えば立派に最速を目指すF1ドライバーしてたんだなって思いました。

 アロンソ、あの頃を思い出そうぜ。小さくまとまるなよ、そんなのつまんない.....
posted by lain at 00:18北海道 ☔Comment(0)映画