身体が心を凌駕する季節「水色の部屋 上巻」ゴトウユキコ(著)

 異性を好きになるってどういうことなんだろう?


 優しい?楽しい?性格が先がなの?


 いいや違うよね?


 目が見えないならいざ知らず、出逢った瞬間惹かれるのはまず見た目だ。身体以外にまず惹かれたのだと心底言える人が居たならば、国を挙げて保護すべきです。



 第一、身体が先で、心が後じゃダメなんでしょうか?....



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 幼い頃、母親がレイプされているのを目の当たりにした主人公は、母親へ性的な欲求を持つようになり、それ以来周囲に溶けこむことも出来ずお節介な幼なじみだけが話し相手の悶々とした高校生活を送っていた。


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 そんなある日、幼なじみの女の子のアドレスを教えて欲しいと人気者のイケメン同級生が彼に話し掛けて来た。弱々しい独占欲を押し殺しアドレスを教えてしまう主人公。幼なじみも彼氏が出来たと大喜びだったのだが、そのイケメン同級生は幼なじみの女の子を早速ホテルに連れ込んだり、ブルセラ紛いのバイトをさせたり、言葉の暴力で詰りながらの性交渉を迫るトンデモ高校生だったのだ。


 幼なじみがそんな目に遭っていることや、今度は母親が狙われていることさえ知らない主人公。彼は、心の奥底に植え付けられた過去と邂逅することとなる....


 不完全な大人達の呪縛から逃れられない子供達が、心が追いつかない勢いで成長する身体の衝動に任せて、人を傷つけ自らも傷ついてしまう様を、ありありと描かれているゴトウユキコさんは凄い漫画家だ。それを可能にする太田出版の懐の広さにも眼を見張る物があります。

 母親がレイプされてるのを見て、嫌悪するのと同時に欲情してしまう主人公と、読者である僕らがリンクするような構成で描き、罪悪感を分け合う共犯性を生み出している辺り本当に上手い。ぐにょぐにょと定まらない愛嬌のある独特のタッチゆえ、逆に心の闇と不安感が生々しく伝わって来る。そしてなんと言っても女体の肉感、艶っぽさが抜群だから、実に深みにハマれます。


 汚す者、汚される者。その狭間で揺らぐ者。青春という狂気が選ぶ道は、一体どの未来に通じているのか?結末が実に待ち遠しい。





 身体が先走ってしまう若者達。彼らの「好き」は、とても危うく見ていられない。


 けれど僕らは知っている。心より先に「好き」を語る身体の素直さを。


 そんな僕らに彼等を止める術はあるのだろうか?....


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 ゴトウユキコTwitter https://twitter.com/gotouyukiko

posted by lain at 20:52北海道 ☔Comment(0)漫画

「じっくり」が「しっくり」来ないゲームになってしまった....「アサシン クリード リベレーション」Ubisoft

歴史的建造物に模された建物をじっくりその手で、その脚で登り切り、眼下に広がる美しい景色を堪能したら、およそ助からないような高さからのダイブで締める。それこそがアサシンクリードの喜びだった。

屋根から屋根へ飛び回る”ヤマカシ”と呼ばれるスタイリッシュな人々を”アサシン”に見立て、当時の最先端ハードXbox360とPS3にゲームとして落とし込んだUbisoft。アサシンクリードはGTAシリーズでやっとオープンワールドの魅力に目覚め始めていた日本人の心を掴むのに充分な世界観とリアルなゲーム性を有していました。大勢の人々で賑わう街並みを歩くだけで楽しいゲームは初めてだったかもしれない。




しかしそれも過去の栄光になってしまった。1から2へと移った後は、目立ったゲームシステムの変更も無いまま(ストラテジー要素を含んだミニゲームや、弟子を育成する楽しみなど色んな遊びを提供してくれているけれど、一つ一つが洗練されていないから飽きが来るし、広大な街での移動がMAPから行えないのは今時のゲームとしては辛い。ついでに街人達のセリフもバリエーションが少なく聴き慣れすぎて鬱陶しい....)本作リベレーションを含むエツィオ・サーガを三連投。リアル志向なモーションゆえの焦れったさを、一気に押し付け続けたことで、正直ファンは疲れてしまった....
2011年に発売されたリベレーションから、既に3、4、ユニティ、スピンオフのレディ リバティまで出ているというのはいかがなものだろうか?

もっとしっかり作り込んだ続編こそファンは待っている気がする。待たされるのは2年でも3年でも構わないのだ。こうして欲しい、ああして欲しいというファンの気持ちが反映されないままアサシンクリードを出し続けると、大事なフランチャイズが痩せ細って行きそうで勿体無いです。

三作を経て、「あの歳で」と言われまくる初老となったエツィオや、80を越えてもなお教団と世界を憂いていたアルタイルともお別れを告げた本作。今までのアサシンクリードと決別する指標になっていて欲しいものです。ついでにデズモンドの物語も終わらせれば良かったのにね....




リンゴの力の謎解きが、怪しい展開になりつつあるのが引っかかりますが、翻訳の微妙さを見逃しても良い程度に壮大なドラマを堪能出来る底力はまだアサシンクリードにはありました。

格安でブラックフラッグが手に入ったのもあるし、さっさとⅢもクリアしてⅣやりたいです。Ⅳの冒頭をプレイした感じだと、今までの紳士的で真面目なアサシン連中と一線を画している酷く利己的な主人公だったので新鮮に楽しめそうでした。

なんだかんだで年末はアサクリ充に決めたよっ♪ (= ワ =*)v



公式サイト http://www.ubisoft.co.jp/acr/
posted by lain at 06:55北海道 ☔Comment(0)ゲーム

この狂気は娯楽にならない....「ゴーン・ガール」デヴィッド・フィンチャー(監督)

 結婚


 それは地獄への扉を開く合言葉だと言われて久しい。


 本当にそうなのかどうか、未婚の僕の経験ではなんとも言えないが、親や兄弟の辿った夫婦生活を長年見て来た結果言えるのは、地獄よりはマシだが、結婚しても良いことなんて増えないのは確かだということ。逆に肩の荷が増えたり、脛に傷が増えるだけとも言えるだろう。


 これだけ少子化が叫ばれるようになった日本でも、いまだ結婚する人はいる。1人の生活が経済的に不安?人肌恋しいだけなのか?罪深い恋愛創作物に憧れ、煽られ、恋愛しなきゃ!結婚しなきゃ!と、無駄に焦っているだけに僕からは見える。子供向けヒーローと恋愛物の素敵なカップルは、世の中を混沌に導く戦犯なのでは無いかとさえ思う。




 何故結婚しなければならないのか?


 結婚したらお互いの気持が永遠に保たれるとでも勘違いしているのか?美味しそうな物が他の誰かに食べられてしまわないように、法的拘束力を持つ唾を付けておきたいだけか?


 フィンチャー監督の「ゴーン・ガール」を観ていたら、否が応でも男女の絆の在り方に悩まずにいられない.....






 5年目の結婚記念日を迎える二人。だけど旦那の方がなんだか憂鬱そう。昼間から妹とやりくりするバーで一杯引っ掛けている彼の口から出る言葉は、夫婦仲が冷えきっていることを物語っていた。


 そんな夫が、近所からの連絡で猫が勝手に家から出ていることを知り帰宅すると、家の中ではなにやら争った後があり、居たはずの妻も消えていて彼は警察を呼ぶ。


 捜査が進めば進むほど自分の妻殺しの証拠が固まってゆく夫。彼は居なくなった妻が残した結婚記念日恒例の宝探しを続け、何故妻が居なくなり、こんな事態になったのかと奔走するのだが......





 あちこちで本作をミステリーだと書いているサイトを見かけましたが、まったくミステリーでは無くスリラーです。控えめなミスリードは序盤ありますが、妻の失踪の顛末も早いうちに見えて来るし、いっそネタバレしてしまっても問題無いくらいです。


 ネタバレせずにハッキリ言えることは、行き過ぎたフェミニズムと、大概の男に当てはまるだらしなさが辛く苦しい映画だと言うこと。男は2時間29分の苦行に堪えるつもりで観に行かねばならない。そして、もしもこの映画を心から爽快な作品だったと感じる女性が身近にいたら、早いうちに別れを告げた方が良いだろう.....






 悪趣味なほど辛辣で生々しい男女の結婚墓場に鎮座し、黙々と墓標に名を刻んでいるデヴィッド・フィンチャーの悟った背中が見えた気がした。


 そんな監督は勿論凄いわけだが、監督の構想を実行してみせたスタッフや役者も凄い。妻を演じた”ロザムンド・パイク”は、なにかしらの賞を獲るだろうし、”ベン・アフレック”は相変わらず見た目だけのクズ男がドハマりだった。原作者である”ギリアン・フリン”による脚本も良いし、聴き続けたら静かに心が侵されそうな音楽の煽りも地味に素晴らしい。



 しかし、重ね重ね言いますが面白い映画ではありません。少しは苦笑出来る程度の息抜きシーンはありますが、悪趣味で自虐的な美学に支配されたい人でも胃が痛くなるシーンの連続です。


 スタッフロールの最後、劇場に響く鼓動の意味を考え出すと、逃れようの無い恐怖に心が包まれることでしょう.....





 男女を破滅させるのは、女のIdentityか?


 はたまた男のShamelessか?.....







posted by lain at 09:46北海道 ☔Comment(0)映画