幻想に恋する男の名は『村田兼一』

 日常生活では禁欲的な態度で素知らぬフリをしたり、ブログでBLや男の娘の話に熱が入ったりしていても、僕はやっぱり女の子が大好きだ。

 子供を産める女性だからこその骨盤の形状から産まれる滑らかな曲線や、左右対称に実った膨らみの量感を前にしたら、ただただ感嘆をあげて降伏するしか僕に選択肢は残されていない。


 
 無論感嘆をあげるだけで済むわけでは無い。性的に興奮するわけだから、大きな声で言いたく無いこともしたくなる。正直、女性を「可愛い」「美しい」と感じた時、間違いなくこの女性と『セックス』がしたいという気持ちが僕の中にはある。大小はあっても、性欲を皆無だと言ってしまうような恥知らずにはなれません。

 裸が見たい。美人でも無く、とびきりの裸じゃなかったとしても、それはそれで味わい深い裸なら是が非でも見たい。ムラムラモヤモヤしたい。そして全てが夢想のままで終わって欲しい。

 やっぱり軽くマゾなのかもしれない。



 打海文三さんが『Rの家』で「我々は生身の人間に投影した自分の性幻想に欲情するんだ」と書いていたが、実に身に染みる言葉だった。まさに僕の性はそこにある。そして、それは僕だけの話では無い。

 例えばSNSに露な写真を投稿し続ける女性達であったり、アイドルなのかAV女優なのか曖昧な位置で笑顔と肉体を振り撒く素人集団。彼女達は自分のことを見ているであろう人々へ挑発行為を行い、自らを貶めることで得られる開放感に浸っているが、ひとたび熱が冷めたら自己嫌悪の固まりになってしまうことだろう。幻想こそが最高の調味料なのだ。

 
 書いていることが書いていることなので、脳に血が行っていないのか支離滅裂になって来たけれど、ようするに村田兼一という人の撮った写真は、まさに性幻想を掻き立てる作品であると言いたかった。

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 ただの全裸写真でもなく。よくあるグラビア写真集の構図でもなく。浮世絵やゴスロリな妖艶さの枠の中で、SMを用いて拘束と解放を表しているからエロティズムと同時に儚い美しさを感じて興味深い。見る者だけではなく、撮られる者さえ魅了する力がある。

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 「眠りの姫」と「パンドラの鍵」しか目を通していないので、漠然とした感想になってしまうけれど、ソフトフォーカスが効いている眠りの姫と、”七菜乃”さんという人形のようなスタイルのモデルが印象的だったパンドラの鍵の両方の良いところを縫い合わせたら更に良かったのではなかろうか?

 七菜乃さんはスタイルの面でも表情の面でもかなり素晴らしかったけれど、個人的にはもっと無機質な表情で感情が欠如している人形に徹して欲しかったし、撮影セットとモデルの溶け込みが今ひとつに感じてしまうところもパンドラの鍵は勿体無い気がしてしまった。単純に好みの問題かもしれないけれど、いっそもっとPCで加工して一体感を出した方が七菜乃さんの自然な美しさを感じられたに違いない。

 村田さんの作品世界は、山本タカトさんの世界観とも通ずるものがあるので、写真の加工やモデル次第でもっと凄い幻想を見せてくれるのでは無いかと、ついつい高いレベルを期待せずにはいられないです。

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 良い写真家には良いモデルが群がって来るものですが、村田さんのような一般的な「普通」の尺度で推し量れないような写真家さんの元へ、これだけの女性達が集まって来るのは、ある意味今の時代を映しているのかもしれませんね。アレも駄目、コレも駄目と息苦しい世の中に風穴を空ける美しい女性達にホイホイとこれからも付いて行こうと思います。



 追伸、心も身体も見えそうで見えないくらいの方がエロいです。




 村田兼一オフィシャルサイト http://murata.main.jp
posted by lain at 21:28北海道 ☔Comment(0)写真集

あの、世界一の雑食野郎が帰って来たっ!「EAT-MAN THE MAIN DISH」吉富昭仁/シリウスKC/講談社

 その昔、ボルト1本から何でも組み立ててしまう男が居たことを覚えているだろうか?

 当たり前に手を使って組み立てるわけではなく、ネジやその他の部品を口から食べ、体内でソレをやってのける男のことである...

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 小型の原始的な装置から、複雑なミクロの精密機械まで、何でもバラバラにしてペロリと食し、生き物以外は体内で元通りにして排出出来てしまう彼だが、一体何者なのかは未だにハッキリしてしない。色んな可能性を作者はほのめかして来たけれど、とにかく無愛想であること、依頼されたことは必ずやり遂げるということ、そして不死のようで不死でないこと以外謎である。


 ちなみに、何を考えているか分からないその男の名は”ボルト・クランク”

 実にそのまんまであるw

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 EAT-MANは主人公であるボルトが無口のため、その代わりにゲストキャラがよく喋ることが多い。基本はセリフ少なめのアメコミヒーローだから、セリフがほぼ皆無の回もあり、それはそれで吉富さんの陰影が効いた作画を渋く楽しめて良いが、彼が喋らず周りが話すことによっておしゃれなミスリードを味わえるのがまた面白い作品だと思う。

 だから水戸黄門のような浪花節がベースにある作品との親和性は強く、個人的には「超人ロック」を連想してしまう。最近”百合”物やらスクール水着を着た人魚やら、可愛いくてちょっぴり怖い女の子を描いていた吉富さんが、男臭いハードボイルドな退廃的SFにすんなり戻って来れたのも、EAT-MANが良い意味で予定調和が心地良い作品だった証拠かもしれません。



 連作終了から10年ほど経っているとは思えないほど、あの頃のままのボルトを味わえた第1巻。伝説の男らしいエピソードばかりで本当におかえりなさいという気持ちでいっぱいになった。

 犯人だと誤解されていても気にしないボルト

 昭和のアニメのガキ大将が草を咥えているような感じにボルトを咥えるボルト

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 人間以外の依頼もキッチリこなすボルト

 質量保存の法則が当てはまらないボルト


 どれもこれも僕の知っているボルト・クランクらしさでいっぱいだ。大抵10年も経てば作画のテイストが変わっていたり、作品の空気感が違うように感じて違和感が鼻についてしまうところだが、そうならなくて本当に嬉しかった。

 この先何処まで続くのか分かりませんが、出来ることなら死ぬまでライフワークとして連載を続けて欲しいものです。


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posted by lain at 21:26北海道 ☔Comment(0)漫画

ぼくが愛したあなたの嘘「ぼくが愛したゴウスト」打海文三/中央公論新社/2005年

こことは少し違う場所

僕らはそんな案外直ぐ馴染んでしまいそうな異世界へ逃避し続けて来た。

耳が無いくせにネコ型だと言い張るロボットが机から出て来る世界。一頻り暴れまわったらさっさと寝ぐらに帰ってゆく巨大生物が崇拝されている世界。どこからともなく現れ、非日常へと誘う美少女の甘い罠が張り巡らされた世界などは、最早常套句過ぎて欠伸が出るほどだ。

そんな異世界物を、打海さんが書いた。



『臆病で生真面目だけど、十一歳のごく普通の少年・田之上翔太。生まれてはじめて、ひとりで行った人気ロックバンドのコンサートの帰り、翔太は駅で人身事故発生の瞬間に居あわせてしまう。それを境に彼は、この世界に微かな違和感を抱きはじめるのだが―。残酷で理不尽な世界に立ち向かう少年の、愛と恐怖の旅立ちの物語。』
byBOOKデータベース




打海さんの綴って来た作品達は、ありえたかもしれない未来や過去の話が中心で、フィクションではあっても現実世界のルールに則って描かれて来ました。

ところが本作は完全に異世界に迷い込んだ男の子が主人公だったので、珍しくファンタジックな童話的ジュブナイルになるかと思ったのですが、やはり打海さんだなと思わされる論調になってゆき、自分を自分足らしめているものを科学するような哲学も濃厚でした。いつものように美しいものを美しいままに帰結するから後味も素晴らしかった。

異世界物と言っても、元の世界と異世界の違いは体臭・心・尻尾の3つだけのパラレルワールドでしたが、それらの違いが生み出す思春期の少年の繊細な心模様や、彼と同じように異世界に来てしまった男の浮き沈み。そして心が無いとされている世界の人々の感情の在り方についつい引き込まれました。自分の足元が揺らいでしまうくらい心という酷く曖昧で証明困難な存在について踏み込んでいるのです。心の無い世界で「心」の意味を辞書でひくとどんなことが書いてあるのか少年が調べるシーンは実に印象的でした。




こことは違う異世界に紛れ込んでしまった人間への政府対応の仕方。本物そっくりな家族と少年の複雑な心境。心無き者達の偽りな温もり。どれもこれも胸をえぐられました。本当の記憶や体験では無いのに、僕はどうしてこんなにも心を乱してしまうのか?偽りの世界を心底愛しく思えるなら、現実になんの意味があるというのか?


たとえそれが一時の勘違いや陶酔でしかないとしても、美しさに偽物も本物も無い。それで良いのかもしれません。



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posted by lain at 07:09北海道 ☔Comment(0)小説