赦し赦され生きて行こうじゃないか「天使の分け前」ケン・ローチ(監督)/2011年/欧州/映画/感想

 人間誰でも生きていれば大なり小なり罪を犯す。それと同時にその罪で何かを学ぶことも人間は出来る。

 


 この映画の主人公”ロビー”は、いわゆる人間のクズである。ドラッグを使用して暴力を振るい、若くして人間としての落第点を付けられた男なのだ。

 そんな彼に最後のチャンスが与えられる。投獄しない代わりに社会奉仕をしろと言うのだ。恋人との間に子供が産まれ、奉仕活動の面倒を見てくれる男”ハリー”にも助けられ、真面目に更正しようと考え始めるロビー。でもそれを許さない過去が彼の行く手に立ちはだかる。執拗に喧嘩を吹っ掛けて来る奴等。ロビーを嫌う彼女の親連中。自分の蒔いた種が今頃満開を迎えたかのように、彼と彼女とその子供の邪魔をする。

 もう地元には居られない、そう考え始めていた矢先、ウィスキー好きなハリーを通じて、ベラボーなオークション価格が付くであろうウィスキーの存在を知って、新生活の為に最後の悪事を働くことを決意するのだが.....






 
 ロビーが傷つけた被害者と面会するシーンまでは、その後の幸せな未来が予測出来ない内容だったので、もう少し重い結末が待っていそうな予感がしたけれど、最後は軽やかなハッピーエンドで胃にもたれない優しい作品でした。きっと、こう言う人間のクズに少しでもチャンスを与えたいと思えるかどうかで、映画自体の評価が割れるのだろうと思いました。ロビー自体は根が優しい青年なんですけど、彼と一緒にウィスキーを盗みに行く連中の阿呆さと言うか愚かさは死んでも治りそうも無かったし、生理的に嫌悪を憶える人も多いことでしょう。


 僕はどちらかというと反社会的な人間なので、どうしようもないクズ共が愛しくて仕方ない。少しでも変わりたいと考え行動しても、全てが裏目に出て信じて貰えないような不器用さは、誰かが愛して赦してやらなきゃならないと思っちゃうんですよね....

 「天使の分け前」は、その辺りの黒いドラマ性が若干弱い内容ではあるんですけど、自分なりのルールで一生懸命頑張り人への感謝を忘れないロビーの生き方が心地良く、たかがワインに何千、何億というお金を払う連中をあざ笑うような展開も一般庶民である僕には面白かった。


 物事の深刻さを決めるのは、個々人の判断より周囲の人々の「こうでなければ」と言う想い込みの重みが大きく影響していると思う。だから大勢の想いの前では『罪を憎んで人を憎まず』という言葉はいとも簡単にどこかに追い遣られる。

 この言葉が死につつある現代で、僕らは誰を赦し、誰に赦され生きてゆけるだろう?誰も赦さずにいたら、いつしか自分か周りかを世界から排除することになるかもれない...



 世のクズ共がロビーみたいに根が優しい奴ばかりじゃ無いのも確かですけど、早い段階からガッチリルールで囲んで行き場を無くすようなやり方ではなく、お酒の熟成の過程で少しずつ水分やアルコールが蒸発して失われる「天使の分け前」を受け入れるのと同じくらいの度量で見守る忍耐が世の中には必要だと感じました。

 人間でもお酒でも、熟成するには時間が掛かるものさ.....(´・ω・`)




 公式サイト http://tenshi-wakemae.jp/
posted by lain at 10:34北海道 ☔Comment(0)映画