華を摘み取る女の本性とは...「そこに薔薇があった」打海文三/集英社/1999年/小説/感想

 いつも打海さんの作品には、色っぽいシーンが付き物であります。言葉のひとつひとつから女性の生々しい裸体を想像させられてしまって毎度モヤモヤするんですよねw

 今回のはその色っぽさが凝縮されてまして、これぞ打海文三と感じる背徳感丸出しの男女がまぐわうシーンはエロスを通り越して芸術の域に達しているように感じました。熱い情事に到達するまでの詩的な流れがとても良いので、その後の濡れ場がひときわ輝いているのかもしれません。打海さんの作品は欧州辺りで出版したらウケが良さそうだ。


 お話の展開としては、主人公(♂)が美しい女性と出逢い良い仲になった途端、その女性に殺されてしまうという天国から地獄な各章ごとの短編スタイルなのですが、実は全ての章のお話に繋がりがあり、ラストまでゆくと「もしかして?.....ハッ!!」と、させられる感じで女性が怖くて怖くて仕方無い作品になってまして、様々なコンプレックスを抱えた主人公達が命を落としてゆく様を見ていると、打海さんが自分自身を罰しているかのような気分にもなりました。



 ミステリーとして読みたかった人、純愛物として読みたかった人、この両者は不完全燃焼なのかもしれません。でも、自分で積んだ積み木を自分の手で壊したくなる打海さんの渇いた衝動が僕は良いなと思うのです。

 何より女性が美しくも恐ろしく書かれているのが良い。このような女性の衝動と男女の関係を、女性自身がどう読み解くのか興味ありますが、やはり打海文三作品は美しい女性に犯されたい願望を心の何処かに秘めている駄目男の為の至宝だと思うので、女性にはオススメしませんねゞ(*ゝω・)ノ


安定の打海ワールド
posted by lain at 20:42北海道 ☔Comment(0)小説

ジブリ、それ自体がファンタジー「夢と狂気の王国」砂田麻美(監督)/2013年

本を読んだり映像作品を観ていると、自然に一体どんな人が作っているのか?と知りたくなるもので、作り手がどんな人間であるかを知ることにより、作品をより深く理解し愛するようになることもしばしば。無論、逆に作り手の生々しい精神に触れて作品ごと嫌いになるなんてこともあります。



だから昔から大好きであるスタジオジブリと宮崎駿という人のことも当然のごとく気になるようになり、完全なるオリジナルでは無いと公言していても、あれだけ作り手の意思を感じさせる魅力的な映画を作り続けることが何故出来るのか知りたくて、何度となくジブリのドキュメントを観るようになっていました。

そんな今まで目にして来た数あるドキュメントのなかでも、今回観た『夢と狂気の王国』ほど彼等の懐に飛び込み、ジブリの生々しさと幻想とを共存させた物は無かったかもしれません。





とにかく何が凄いって、アニメーターとしての宮崎駿に留まらず、宮崎駿と言う個人が何に突き動かされて生きて来たかを、本人やスタッフ達の素の言葉で浮かび上がらせようとしているため、宮崎駿と言う幻想を支える為にどれだけの人々が己を殺し生きているかが伝わって来て凄いんです。ジブリの映画だけをワイワイと観ているだけでは分らない暗部は、宮崎さんに気を使ってしまってなかなか映像にし難い部分ですし、とても緊張感を感じるんですよね。

しかもドキュメントと言いながら、非常に監督の主観が明解に出ている作品でもあり、膨大な素材を活かした編集で監督の感じたままを上手くまとめているのが面白かった。 呑気なラジオ体操の風景と、ジブリのグッズに関する現実的な会議の風景を交互に見せるところなどもジブリの理想と現実を見せ付けられているようで刺激的。 ただただジブリの面々の作業風景や、宮崎さんの自分語りをまとめるのではなく、それらを間接照明のようにワンクッションおいて伝えるやり方が絶妙なんです。



若き日のジブリの3巨頭の映像(へたっぴな歌を披露する宮崎さんも見れるw)や、ラストシーンのアフレコに立ち会い涙する宮崎さん。そしてジブリに居座る猫を目撃者に仕立てたオマケ映像(BD・DVDの映像特典)など、盛り沢山で実に良いドキュメンタリーでした。

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高畑さんは諸事情(いつものようにごねたそうだ...)でラスト近くでちょっぴり登場するだけでしたが、時代の流れに逆らい死んでゆく職人の切ない背中を見せられた気にもなりましたね。


宮崎駿さんが引退を決め、抱えていた仕事(マーニー)が片付いたタイミングでスタジオを一旦解体することを決めたジブリ。一から出直す彼等に、この先何が待ち受けているのか?

公私混同の最後の砦として"夢と狂気の王国ジブリ"を、これからも見守ってゆきたいものですね。





posted by lain at 08:50北海道 ☔Comment(0)映画