10年、100年、1000年後まで残る寓話なのかも「崖の上のポニョ」/宮崎駿/2008年/スタジオジブリ/感想

 さんざんテレビやDVDでジブリを見守り続け、ジブリ以前の宮崎さんが監督として参加した長編作品もほぼ全て鑑賞し、最近じゃちゃんと劇場へも脚を運ぶようになった僕ですが、唯一観ていない作品が「崖の上のポニョ」でした。




 アニメ製作の現場で作画をPC上で修正したり3DCGでキャラを動かしたりするのが当たり前になった今の時代に、全て手作業でPCをほぼ使わず(現場を良く知る鈴木敏夫さんいわく、スタッフは宮崎さんに秘密でちょっぴりPC使ったらしいw)手描きアニメの凄さをポニョが見せ付けているのを、予告編やTVで流れていたジブリのドキュメントで知ってはいたのですが、どうも当時の僕の精神状態だと、人間の男の子と魚の女の子の心温まるストーリーは合わない気がして(押井さんの「スカイ・クロラ」の方が僕にピッタリでしたw)いつか観よういつか観ようと、今日までやって来てしまいました。


 じゃあ何故今観る気になったのか?

 DVDやBDが発売されても買ったりレンタルもせず、二度もあったTV放送での鑑賞チャンスも棒に振り、気付けば6年も経った今何故?


 実は最近Podcastで「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」というラジオ番組を2007年10月の放送開始の回から順番に聴いてまして、その番組の中でポニョの話を聞いていたら居ても立っても居られない気分にさせられた結果、これは観ないと駄目だなと、まんまと初ポニョに到ってしまいました。

 でも鈴木敏夫さんの喋りにウッカリ乗せられてポニョ観て本当に良かった。冒頭の海の中の様子や音楽に映画「アビス」の幻想的な表現を思い出したり、ただ手描きでやっているのが凄いんじゃなくて、とにかく動かしている場所が半端じゃ無く多いうえに、それがすこぶる躍動し洗練されているのにビックリしました。今時の口元ばかり動くアニメのかちっとした面白味の無い絵ではなく、何処へ変化するか予測もつかない手描きのラフさに、日頃使わない脳の一部が激しく刺激されて楽しかった。

 宗介ママのとんでもないドライビングテクニックや、宗介パパとのモールスなやり取りのコミカルさ、ポニョが少しずつ人間らしい姿になりつつ海面へ飛び出すまでの勢いだとか、宗介のオモチャの船を大きくして動かすところであったり、いつも食事のシーンで食べている途中ウトウトしだすポニョの愛しい表情などなど、挙げればキリが無いほど これこそ新・旧 宮崎ファンが待ち望んでいた作品だと感じる場面が凝縮されていました。作家性としては「風立ちぬ」だけど、アニメーターとしての宮崎駿はこれで引退でも良かったかもしれないw



 ほんとにほんとに良いアニメでした。ポニョも宗介も可愛いし、その半面津波の恐ろしさがとても出ている作品でもありました。甘ーい中にもちゃんと毒を入れる辺りが宮崎さんらしくて良いんですよね。素直に鑑賞すると、ポニョの宗介への想いが世界の破滅にまで繋がりそうになるけど、結局みんな幸せハッピーな感じで大団円な話に見えるし、穿った見方をすると津波で全ての人が死んでしまい、後はあの世で宗介が見た夢であると言う寂しい話にも見える。

 僕は後者(鈴木敏夫)の見方に興味が湧いて鑑賞したわけですが、結局前者の目線で最後は終わった気がします。その代わりと言っちゃあなんですが、ポニョやポニョの父である”フジモト”が宮崎駿その人であるように感じました。一度世界はやり直した方が良いと考えつつ、映画を作りはじめると周りの迷惑を顧みないで無我夢中で前に進む宮崎さんと、世の中に愛想を尽かしているフジモトや自分がどんな大変な事態を引き起こしているのか全く理解せず宗介に突入してゆくポニョとが、凄く符合する気がするんです。まあキャラクターには大なり小なり作者の内面が反影されるものですよね。宮崎さん相当楽しくポニョを描いていたに違い無いw




 自然を穢す人間に怒りを燃やしながらも、人間への想いを捨て切れない宮崎駿さん。彼の描く破壊と再生には心底敬服します。長編作品から宮崎さんが引退し、その余波がジブリの再編に波及してネットは大騒ぎだったわけですが、「思い出のマーニー」で少女の繊細な心模様を見事に描いた”米林宏昌”監督の成長っぷりには目を見張る物がありましたし、現実世界での宮崎さんによる破壊と再生も無事進んでゆきそう。


 ただ、米林さんに刺激されて、宮崎さんがもう一度コンテを切り出したりしないか、ポニョを観た今はついつい期待してしまうところもありますね (= ワ =*)



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posted by lain at 08:34北海道 ☔Comment(0)アニメ