とりあえずの安住と、ほころび。そして....「天冥の標 Ⅶ 新世界ハーブC」/小川一水/早川書房/2013年/小説/SF/感想

 読み終わるたびに思うけれど、これほど広いファン層に愛されそうなSF昨今において稀かもしれない。

 骨太なSFが好きな人

 ライトなキャラ萌えが好きな人

 まったくSFを読まない人

 それぞれがハマれる要素がギッシリ詰まっていると僕は思う。


 もしも平和に暮らして来た街が虚構の歴史を元に築かれたものであったなら?もしも致死率95%のウィルスが蔓延したら?もしも測り擦れない規模の異星人の宇宙船を発見したら?もしも羊が話しだしたら? 

 そんな様々な仮定に、小川さんが緻密な情報量と人々の思考の流れ等でしっかり肉付けし、生半可な未来ではおよそ体験出来そうに無いないシチュエーションをこれでもかと封入。とある一族の将来や、人類の存亡まで、大なり小なり世界の中心の物語が展開されるので、好奇心とヒロイズムを非常にくすぐって来ます。そしてなにより、何世代にも渡り、主要人物達の繋がりを追い掛ける壮大さと来たら、一度読み始めると病み付きになります。



 今回の『もしも』は、子供達ばかりが何万人も生き残り、大人達や救助を当てに出来ない状況で地下に住むことになったなら?というサバイバル。衣・食・住を確保するため主人公達は奔走し、一から生きるための環境を整えているうちに、彼等は築くことの難しさや喜びをその身に深く刻むことになります。

 彼等の薄氷を踏むような楽園作りから、ほとんどの物が誰かの手によって整えられている現代社会の危うい窮屈さを表しているように感じるのも、天冥の標の魅力の一つと言えるでしょう。SF作品て、夢のような技術満載の未来を描いていても、それに対するアンチテーゼを忘れないから面白い。



 こうしてまた一冊「天冥の標」を読み終わり、巻末に書かれた年表を眺めていたら、本当に沢山の出来事が起きて来たものだと感慨深い気持ちになります。あんなこともこんなこともあったなぁと....

 今回の新世界ハーブCで、天冥の標 第一弾”メニー・メニー・シープ”との繋がりがより明確に描かれることとなりましたが、まだ良く分らないところもありますし、時系列的にもっとも未来の話であるメニー・メニー・シープ後の話があるのかどうかが気になるところ。そろそろ完結前に最初から読み直してみるのも良いかもしれませんな。

 とりあえず、優しい欺瞞で固められた楽園の行く末と、おそらくそれを蹂躙しに来るであろう奴等の哀しい宿命を楽しみに待つ事としますか (= ワ =*).。oO次巻は夏発売予定....



 いずれ訪れる最終巻の帯に「アニメ化決定!」の文字なんかがあると、めちゃくちゃ興奮しちゃうと思うので、ハヤカワさん、小川さん、そこのところよろしくお願いしますo┐ペコリ

ぞくぞくしたw






関連過去記事

『ライト過ぎず、SF過ぎず。「天冥の標 メニー・メニー・シープ 上巻/小川一水/ハヤカワ文庫JA/早川書房/2009年/小説/感想」』
http://lainblog.seesaa.net/article/241988731.html
posted by lain at 21:08北海道 ☔Comment(0)小説